コクヨデザインアワード2023 ヨコク賞

20回目の開催を記念して表彰する特別賞「ヨコク賞」は、
コクヨデザインアワード2023の全応募作品の中から
学生の応募作品を対象とし、
商品化を前提とせず、
アイデアや着眼点に魅力がある作品を選定し、
次世代を担う若い世代の次なる挑戦を
後押しする目的で設定されました。

ヨコク賞

Stories by Paper
作品名
Stories by Paper
作者
Yashika Munjal

作者コメント

「Stories by Paper」は、素材としての紙の可能性を追求し、単なる表現手段を超越したインスピレーションを与えることができます。正確なカットで作られたカードは、繋げたり回転させたりすることができ、さまざまなパターンを作れます。陰と陽のように、カード両側の反対色でパターンを認識でき、それを解釈して全体像を作れるようにします。そのようにして、紙との間に調和のとれた関係(パワーバランス)を生み出します。

評価コメント

2つのものの組み合わせ次第で、見え方が変わったり、想像力が膨らんだりした子どもの頃の経験を思い出させてくれました。既定の概念から視点をずらすこと自体が難しくなっている大人に、かつてのプリミティブな体験の大切さを伝えてくれる作品だと感じました。

Uniclip
作品名
Uniclip
作者
Ma Kwan Lam

作者コメント

この3年間で、新型コロナウイルス感染症により生活が変わり、まだ多くの問題が存在します。伝統的な紙ばさみにインスピレーションを得たマグネットクリップ「Uniclip」。このキャラクター達は、社会的な問題や人を象徴しています。「Uniclip」は「unite」と「clip」からできています。2つの手を一緒にしっかりつかむことで、全ての人に思いやりや愛情の表現を想起させます。私たちを取り巻く相違点、変化、課題を受け入れてほしいと思いました。

評価コメント

クリップという生活に身近なプロダクトでコロナ禍で引き起こされた分断に対するメッセージを投げかけていて、考えるきっかけとなる作品でした。クリップで表現した異なる形が社会のマイノリティも含めた様々な人を表現しているようにも見えます。

FLOWERS
作品名
FLOWERS
作者
安齋 瑞穂

作者コメント

「FLOWERS」は、花束のように贈る、「飾る手紙」の提案です。便箋を丸めることでお花になります。普段は大切に思うあまり見えない所にしまっておくことが多い手紙ですが、飾ることで贈り手の想いをより身近に感じることができるようになると思います。この作品は手紙を花に見立てることで、思わず飾りたくなるビジュアルを目指しました。

評価コメント

手紙を送る相手に対する「いつでも見守っている」という気持ちを、言葉だけで伝えるのではなく、部屋に飾るという行為を通じて表現している点に魅力を感じました。花になった時のデザインも魅力的で、送ってみたい、もらってみたいプロダクトだと思いました。

感覚メジャー
作品名
感覚メジャー
作者
平井 大心

作者コメント

この感覚メジャーは目盛りがなく、テープに自分で大きさを刻んで記録するメジャーです。従来のメジャーは長さを計る測定器ですが、本当に数字は必要なのでしょうか。例えば、これは〇〇cmと説明をされるのと〇〇くらいの大きさと説明されるのだと、どちらの方がイメージが湧きやすいでしょうか。おそらく後者だと思います。数値化された情報ではなく、大体の長さが認識できれば、他の似た大きさのモノと比較ができます。

評価コメント

自分なりの単位をつくることができる点に楽しさと新しさを感じました。もっと人間本来の感覚を信じていいのだと思わせてくれる作品です。またメジャーそのものが思い出にもなるという点もおもしろいです。

Color of food
作品名
Color of food
作者
Huimin Zhou

作者コメント

なぜ私たちは純粋な色で描くのでしょうか。生活におけるさまざまな色は常に絡み合っているので、食材の色で直接描くとしたら、独特な経験をするかもしれません。このクレヨンは、本物のような食材の色と質感を持っています。食材をよく知っていても、絵を描いている間に色が変わることに驚かされるでしょう。絡み合った色をembraceします。

評価コメント

食材のリアリティを追求した見た目にインパクトを感じました。食育などのシーンで使うことで、フードロスについて子どもたちと共に考えるなど、さまざまな使い方ができそうです。視覚的な見た目のみならず、質感のリアリティを出すなど、さらなる発展への期待感を感じました。

もようのぬりえ
作品名
もようのぬりえ
作者
木下 快

作者コメント

日本では男性の20人に1人、女性の500人に1人は色覚特性を持つと言われています。色覚特性を持たない人にとっては明確な色の違いも、色覚特性を持つ人には見分けが難しいこともあります。「もようのぬりえ」は色を塗るのではなく、模様を描くことで彩る塗り絵です。色覚特性を持つ人も持たない人も、この塗り絵を使って同じ楽しみを共有することができます。

評価コメント

色が使えないことをマイナスに捉えるのではなく、その制限があるからこそいろいろと考えることで、創造性を広げる可能性を感じました。色ではなく模様にフォーカスすることで、色覚の多様性を受容し、一緒にワクワクすることを提案している点を評価しました。

mosatto
作品名
mosatto
作者
cパン(山口 颯太、竹重 風美、立石 和希)

作者コメント

『ペンで描くよりも優しく、紙に書くよりも深く』「mosatto」それは大事な一言を優しく伝える伝言板です。細かい字、綺麗な字を書くことはできません。しかし、指で直接書くからこそ表現できる思いがあります。絨毯が作り出す柔らかな質感がメッセージに温もりを与え、指で書くことで文字に深みがでます。「mosatto」はあなたたちの関係を柔らかく包み込みます。

評価コメント

カーペットに文字を書くという行為を上手にプロダクトに落とし込んでいます。ホワイトボードのような機能性、触ってみたくなるシズル感、インテリアにも馴染むデザイン性に加えて、ユーモアを感じさせる表現力が高評価でした。

motan
作品名
motan
作者
cパン(山口 颯太、竹重 風美、立石 和希)

作者コメント

字や絵を書くときに何を使って書くでしょうか?ペン?鉛筆?筆?様々な選択肢がありますが、その新たな選択肢がこの「motan」です。「motan」は必ずしも手に持つ必要がなく、体の一部やほかの何かに張り付けて使います。これによって、誰でも体感的に字や絵を書くことができます。

評価コメント

シンプルに「遊んでみたい!」と思わされた作品でした。鉛筆がまだ持てない子供や、犯人に捕まってしまい、手を縛られている状況など、様々な使用シーンを想定できます。どのように身体に装着するのかは議論になりましたが、体験してみたくなる魅力がありました。

Tactile—brush
作品名
Tactile—brush
作者
Liu Yutong

作者コメント

これは触覚感と感情に関するデザインが取り入れられている。視覚障害者の触覚感度を考慮し、点字の通俗性を念頭におき、視覚障害者が点字を読んでいるときの対象箇所を強調するのに役立つ点字マーキングリングを作成しようと試みたデザイン。視覚障害者が指のリングを着用して、フィルムを軽く押し広げ、点字の上に置くことができる。修正テープに似たフィルムのようなもので、薄くて軽い素材は、視覚障害者が点字を読む時の邪魔にならず、同時に重要なポイントを見つけやすくする。

評価コメント

点字の上にマーカーを引く感覚で、薄く軽いフィルムを点字上に貼るという発想自体に驚かされました。目の見える人と見えない人で感覚を共有できることにワクワクします。視覚だけではなく、他の身体的特性へ視野を広げるきっかけを与える力がある作品でした。

だいたいの定規
作品名
だいたいの定規
作者
TAsta(紫川 詩織、大西 真央)

作者コメント

だいたいを測る定規です。定規は常にミリ単位で正確さを求められる文房具ですが、細かいメモリは正確に測らなければいけないという気持ちを助長させるものであると思います。私たちが生きている中で、正確さというものは常に求められているものではありますが、少し視野を広げ、ときにはだいたいこれくらいと正確さを忘れることにより、心にゆとりを持つことができるのではないでしょうか。

評価コメント

定規というプロダクトの定義自体を疑っているおもしろさがあります。オブジェクトとしての淡さもコンセプトに合っています。何事もきっちりと数値化することが求められる現代で、ものを測る目的そのものを改めて考える機会となりそうです。

へたくそになるペン
作品名
へたくそになるペン
作者
引宇根 沙弥

作者コメント

「うまくなりたい」「上手な方がいい」あの子の方が上手だと、ちょっと自信を無くしてしまう。それは上手に書けないことをマイナスに捉えてしまうからです。でも本当は下手なことも魅力的でいいことだと思うのです。このペンを使えば誰でも下手になれます。文字や絵も下手になれます。必然的に下手になれた時、うまく書かないといけないという緊張やプレッシャーから解放されます。また、不便利さから予期せぬ形になり新しいものが生まれるかもしれません。

評価コメント

文字や絵を上手に書かなければならないという既成概念を捨ててみようという提案にワクワクします。うまく書かないという新たな選択肢がうまれることで、「書く」という行為自体を見つめ直すきっかけになりそうです。

付戦
作品名
付戦
作者
SPT(松本 さや、幾本 聖申)

作者コメント

近年、人の関わり方は大きく変わってきた。直接顔を合わせることが減り、パーテーション越しのコミュニケーションが日常と化している。そんな現在の状況に反発するのではなく、受け入れてみてはどうだろうか?パーテーションで別々にされ、対立しているかのような状態である。それはまるでボードゲームで遊んでいる関係のようだ。ゲームをすることで心と心がぶつかり合い、共鳴しあい、近づくだろう。そんなオフィス空間を作りたいと考え、日常的にオフィスにある付箋を用いて提案する。

評価コメント

人と人を隔てるためのパーティションに、逆に、互いの交わりを生むポジティブな要素を加える発想がよかったです。また、簡易に取り替えられる衛生性も現代にフィットしています。なによりタイトルの潔さに心を掴まれました。

Where Is It Hiding?
作品名
Where Is It Hiding?
作者
MZ Design (Zou Hu, Miao Jingyi)

作者コメント

折り紙には楽しさと芸術的な概念の両方があります。折り紙の表面にはいくつかの種類の小さな昆虫が印刷されています。紙を折ると小さな虫がいなくなり、また現れる、まるでかくれんぼをしているかのように繰り返され、紙が折り紙によって生き生きとしたものになります。小さな虫が見えても見えなくても、あなたの折り紙作業をしている間、どこかに隠れているに違いありません。

評価コメント

折り紙を折って楽しむだけではなく、その中に隠れた虫を探すというもう一つの楽しみが加わる点がおもしろい。一方で、敢えて虫が表に出ないように折り紙を折る行為が、あらゆる情報がオープン化する現代社会で大事なことは隠しておくという行為を象徴するようです。シンプルな中にも奥深さがある作品だと感じました。

iroiro
作品名
iroiro
作者
osu(道脇 一真、鈴木 颯太、塚本 朱梨)

作者コメント

「iroiro」は蓋を開けるまで何色が出てくるか分からないえのぐです。一般的に“りんごは赤”というように色には共通認識が存在します。ところが、このモノはこの色でなければならないという決まりは存在しません。絵を描いたり、色を塗る際にも正解の色はないという考えから、共通認識の色に縛られないようなえのぐを考えました。色を塗る時に偶然出てきた色のえのぐを使うことで意識外の色を使用することができ、新しい発見に繋がります。

評価コメント

色を能動的に選ばないという前提がユニーク。人は誰しも、色に対する固定概念やイメージを持っていますが、色を選べないという制約を加えることで、偶然の出会いから生まれる、再発見や創造性の拡大につながると感じました。

見え方の色鉛筆
作品名
見え方の色鉛筆
作者
大原 衣吹

作者コメント

色覚多様性は日本人男性の約5%、女性で約0.2%いると言われています。また、人による色覚の違いはグラデーションのように連続しており、自分の見え方と誰かの見え方が全く同じであるとは言い切れないのです。どこからが「正常」な見え方でどこからが「異常」な見え方なのか区切るのではなく、さまざまな見え方を認め合っていける社会になればいいなと思います。その第一歩として「見え方の色鉛筆」が色覚多様性を知ることのきっかけとなれば幸いです。

評価コメント

色の見え方が異なる他者へ思いを馳せながら描くことができる、やさしさを感じるプロダクトです。見え方の違いを敢えてあいまいにすることで、心もゆるやかにつながりそうです。多様性が大事といわれる現代で、おしつけがましくない、自然な表現も魅力的です。

新しい芳名長
作品名
新しい芳名長
作者
キム ミンジュ

作者コメント

「新しい芳名長」はポストコロナ時代の人々に新しい芳名長の形を提案します。 あなたは「私はこんな人だ」と自分を表現したかったことがありますか?芳名長は単純に名前と連絡先を記入することで終わりますが、自分の「今日」の様子を描いてみてはいかがでしょうか。芳名長の一つのページに集まっている人たちの姿を見ると、なかなか面白いかもしれません。「新しい芳名長」は日常で人々にささやかな楽しみを与えるために作られました。

評価コメント

大勢の人が集まる場で訪問者の情報を残すという芳名帳の習慣を残しつつ、形を新しくデザインしなおした作品。単なる文字情報として名前を残すだけではなく、本人の印象を振り返れる点がおもしろい。デジタル化が進む中、敢えてアナログの魅力を引き出しています。

丸いノート
作品名
丸いノート
作者
北島 壮智

作者コメント

どの方向からでも文字を記入することができる、丸いかたちのノートです。このノートを机の中心に置けば、横にいる人も、対面にいる人も、斜め前にいる人も、スムーズに書き込めます。「丸い」というかたちには「共鳴する」という意味合いを込めました。見開き2ページに異なる筆跡、バックグラウンドを持つ人たちの個性が共存し、アイデアが波紋のように干渉し合えば、新たなクリエイティビティが育まれるのではないかと考えます。

評価コメント

通常四角形のノートを円形にするというシンプルなアイデアですが、これまでのノートの使い方の概念を覆し、書く方向、書き方によって様々な用途の可能性が広がります。書くことで思考する際にも新たな思考プロセスを体験できそうです。

mado
作品名
mado
作者
星野 秀斗

作者コメント

「mado」は“人間らしい”思考をサポートする下敷きである。人は何かを考える時、何かを作る時、大きなゴールを見据えた広いキャンバスを前に思考を止めてしまう。そこで、まず“制限”のかけられた狭いキャンバスに向かって筆を走らせる。同時に自分の思考を広げる“余白”がキャンバスに残っている。こんな相反する条件を満たすために作ったのがこの「mado」である。独自性と効率が求められる今の時代だからこそ、このような文房具が受け入れられるのではないだろうか。

評価コメント

一つのプロダクトで「制限」と「余白」という相反する2つの機能を併せ持つ点がポイントです。制約をつけられた紙上に書いたあとに、その紙に余白が登場することで「思考がリノベーションされる」という考え方がおもしろいと感じました。