商品化された作品

Stoop

〈2013 優秀賞〉

発想は座布団から。
屋内外で使える携帯性に優れた樹脂製の家具です。

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作品から商品へ


子どもからお年寄りまで、屋内から野外まで、気軽に持ち運べて、どんな場所でも座って、集うことを実現する「Stoop」。そんな、人々の遊び方や働き方を自由にする新しい公共家具のかたちは、「HAPPY×DESIGN」がテーマだった2013年の優秀賞を受賞しました。


最終審査でプレゼンテーションを行うYukaさん。

日本の座布団から受けたインスピレーションは、樹脂製のシーティングへと発展し、「Stoop(ストゥープ)」という、アメリカの一軒家でよく見かける玄関口の階段を意味する言葉が名付けられました。ちょこんと階段に座ってリラックスするイメージと結びついたのです。


受賞時のデザインは、丸みを帯びていて、弾力性のある樹脂とリブ構造により、座ると中央が柔らかく沈むことを想定していました。しかし、商品化にあたり試験を繰り返す中で、安全性や品質に問題があることが判明。座る人の体重を想定した耐久性や、指が入りにくい穴の大きさ、はたまたフリスビーのように飛ばせないようにすることなど、ユーザーの使用シーンを想定したさまざまな検証を行いました。



Stoop

3D-CADを使用した机上の計算と、実際にモデルを制作しての検証を何度も繰り返して、最適な形状、強度、重さなどを検討。座り心地や持ち運びやすさなどの機能性も含めて、総合的に判断していきました。

Yukaさんにも2015年9月まで商品化プロジェクトに参加していただき、検証結果を受けて都度デザインを変更していきました。品質面の制約がある中、Yukaさんは当初のインスピレーションでもある“日本らしさ”を表現することにこだわりました。幾何学模様を連想する中で、日本古来の「七宝文様」に辿り着いたのです。

「円満や調和を意味する七宝は、『Stoop』のコンセプトにぴったりだと思いました。イスラムや中国の寺院などで使われる幾何学模様とも共通項があり、世界の人が手にして親しみを覚えてくれることも期待しています」。(Yukaさん)


Stoopのデザインの変遷(受賞時のデザイン→検討中のデザイン→最終デザイン)

最終的には、当初とは逆に、中央に向かってゆるやかに凹みがある形状に。ペットボトル一本分ほどの持ち運びに負担のない重量を実現している。


デザインと合わせて検討を重ねたのが、売り方です。
当初は、公共空間だけでなくオフィスでの使用も視野に入れてアイディアを広げていきましたが、デザインアワードの審査員の皆さんにご報告したところ、「当初評価した作品と別物になっている」というご指摘をいただきました。新しいジャンルの商品だったため、どうすれば“売れるか”という視点に捉われすぎていました。


金属の脚を取り付けたスツールのタイプや、サイドテーブルが付随したデザイン。

売り方を再検討する中で、当初のコンセプトに立ち戻りました。 「Stoop」は何をもたらす商品なのか。人々のコミュニケーションであり、ハッピーな空間であり、ちょっとした心地よさであり・・・。それらが生み出せるのであれば、決して公共家具というかたちにこだわる必要もないという結論に至り、ターゲットをコンシューマーにまで広げて柔軟に考えています。



花火大会、音楽フェスのように大勢が集い、感動を共有する野外イベントとのコラボレーション案も浮上。2017年12月20日、鹿児島県肝付町で行われたイプシロンロケット打ち上げ見学会場で、JAXA商品化許諾品の「Stoop<イプシロン・バージョン>」の限定販売を行いました。
〈詳しくはこちら〉http://www.kokuyo.co.jp/com/press/2016/11/1893.html (プレスリリース)

応募時のプレゼンテーションシート
より。

最後にYukaさんに、Stoopの今後への期待をお聞きしました。「決して特別なシーンでなくても、近所の公園で遊ぶとき、お庭でガーデニングするときなんかに、何気なく使われているところを見られたらうれしく思います」。

「HAPPY×DESIGN」という純粋な思いのもと、作者とコクヨのメンバーが、柔軟にデザインや売り方をブラッシュアップしてきました。


日常のちょっとしたHAPPYも、大勢で共有する感動も、「Stoop」が皆さんのそばでサポートできれば幸いです。