KOKUYO DESIGN AWARD 2025

KOKUYO DESIGN AWARD2025

2025テーマ:「prototype」
1,448点(国内716点、海外732点)の作品の中から2次審査を通過した9点を対象とし、
2025年3月15日に最終審査を開催。
グランプリ1点と優秀賞3点が決定しました。

グランプリ

NEWRON

川田 敏之
作品名
NEWRON
作者
川田 敏之

作者コメント

人間の指先には多くの神経が集中しており、指先を刺激することで脳の働きは活性化されます。『NEWRON』は、グリップ部分に様々な形状の突起が施されたペンで、「かく」という作業と同時に指先から脳の働きを促し、創作活動をサポートする「アイデアを生み出すためのペン」です。

川田 敏之
審査員講評

触覚でつくっていくようなデザインだからか、これまでのプロダクトデザインとは異なるものに見えた。そのビジュアルのインパクトに反して、握ってみるとコンセプト通りにスラスラと描きたくなるのは、やはり触覚で考えられているからなのだとわかる。僕の想像の範囲にはない作品だったが、未来を感じさせるすばらしい作品だったと思う。

優秀賞

スピニング
一條 遥貴

作品名

スピニング

作者

一條 遥貴

作者コメント

本についている紐、スピン。
本を読んでいる間もなんとなくクルクルと弄ったり、
気づいたら先がほつれていたりする細い小さな紐。
スピンに芯材を入れることで、少しだけ自由な"何か"になる可能性を広げます。
それは、ページを跨ぐ付箋かもしれない。
次に読む人への贈り物かもしれない。
読んだときの心のかたちかもしれない。
本から独立した造作かもしれない。
まだ名前のないものかもしれない。
そんな小さな可能性の在り方。

審査員講評

今回のテーマは思考のプロセスであり、その思考の実験がかなり数多くなされた、厚みがある作品が出てきた。その中で、「スピニング」は僕の想像の範囲外にあり、途中までどう評価すればよいか頭を悩ませた。審査するのが難しいと感じる作品を出そうというマインドだったと聞く。商品化するためのものではなく方向性の提案であり、これもすばらしい「prototype」であると評価した。

KAKONET
松村 佳宙

作品名

KAKONET

作者

松村 佳宙

作者コメント

「」は言葉を強調し、私達の心に強く印象を残している。

本や映画の「」で囲まれた言葉やセリフは時に私達を感動させ、涙を流す、笑顔を生む、幸せや勇気を与える、など感情を強く揺さぶります。

私達はマグネットで何かを留める時に、同時に忘れたくないことや意識している事、想いを、心の内側にも留めているのかもしれません。

KAKONETは、そんなあなたの内側にある、想いや、意識、記憶を「」を通して、より可視化し、強く印象づけ、留めるためのマグネットです。

審査員講評

ただのマグネットが、情報に感情をのせる、感情に語りかけるアイテムになっている。かぎかっこで囲うことで特別なものになるという考え方は、他のものにも応用できるすてきなアイデアだと思う。反面、デザインしすぎると雑貨のようになってしまうのが難しい。かぎかっこ(感情をのせる装置)とマグネット(道具+機能)では大きな隔たりがあり、それをデザインの力でまとめることが重要。ディテールを深掘りしていけば今後、発展していくと感じる可能性のあるアイテムだと思う。

秘密
weiweichen(Gaowei Liu、Cheng Chen)

作品名

秘密

作者

weiweichen(Gaowei Liu、Cheng Chen)

作者コメント

日記帳とは何か。最良の答えは、私たちの心に隠されている「秘密の言葉」だと思います。
日記帳の横線を中心に向かって収縮させることで、「秘密の言葉」が、まるで奥深くに隠れているかのように感じられます。

審査員講評

なるべく少ない手数でアイデアに近づけたときに、僕はよいデザインだと感じることが多い。この作品「秘密」は、簡単に言えば書く部分を内側に寄せたシンプルなアイデアで、自分の感情を閉じ込めた様子を表現している。たったそれだけのことなのになぜかそう見えてしまう。アイデアの出しつくされた日記というもののおもしろく、新しいフォーマットができたと感じた。大きさや線の違いなど、かなりの数を検証されていて、みんなが見て何の違和感もないレベルの高い作品になっている。

ファイナリスト

Universal sticker
山田 泰之

作品名

Universal sticker

作者

山田 泰之

作者コメント

ちょっとした突起を簡単に取り付けられるステッカー。「これ使いにくいな、こうしたら使いやすいかな?」と身近な既製品に微かな違和感や不満を抱いた瞬間、改良を加えた瞬間がアイデアのスタートかもしれない。ユニバーサルステッカーは指かがかかりやすい、押しやすい、滑りにくいをサポートする様々な形状の突起のステッカー。誰でも簡単に,目の前にある機器や道具に張り付けたり、位置を変えたりして試すことで、使いやすさを生み出す試行錯誤を行える。

付染-FUSEN-
8000000studio(馬鳥 智貴、陳 宇澤)

作品名

付染-FUSEN-

作者

8000000studio(馬鳥 智貴、陳 宇澤)

作者コメント

私は本を読むのが大好きで、どこへでも本を持ち歩きます。
美しいフレーズや、為になる言葉に出会うと、付箋を
貼りますが、
カバンの中でボロボロになってしまうのが残念でした。
「付染-FUSEN-」は大切な本を美しいままに保つための新たなプロダクトです。
スリムな本体にはクリップが付いているので本の背表紙に挟んで持ち歩くことができ、気になるページの端に滑らすことで、インクが紙の小口を染めて色を付けます。
インクが無くなればカートリッジを取り変えるだけで繰り返し使うことが出来ます。

6°note
岩佐 真吾、田中 敦

作品名

6°note

作者

岩佐 真吾、田中 敦

作者コメント

無意識に、あなたの文字は美しくなる。

文字には、その人特有の「癖」があります。 それが個性として捉えられる一方で、自分の字に自信を持てないと悩む人も多い。

このノートは一般的に知られている、美しい文字は「右上がり6°」という法則を正方形のグリッドに取り入れました。
6°傾けられたグリッドは、無意識に右上がりの文字を促し、統一感のある美しい文字を生み出します。

この提案は、画一的な「方眼」を見直すきっかけとなり、
新たな原型を“Prototype”する可能性を秘めています。

Campus Cardboardpad
HASNICCA(小久保 駿也、中平 勁士郎、武富 龍之介)

作品名

Campus Cardboardpad

作者

HASNICCA(小久保 駿也、中平 勁士郎、武富 龍之介)

作者コメント

こどもの頃、段ボールは工作の素材としてあらゆる発想をタフに受け止めてくれた。
切って貼ってを繰り返したこの経験が、プロトタイプの原体験ではないか。

Campus Cardboardpad は、そんな“段ボール”をものづくりの素材としてまとめた一冊。

こどもたちの自由自在に広がるインスピレーション。
デザイナーの試行錯誤を重ねるインスピレーション。
あらゆるインスピレーションをCampus Cardboardpadはタフに受け止める。

マテリアルタグパンチ
岩﨑 由紀子 松岡 諒

作品名

マテリアルタグパンチ

作者

岩﨑 由紀子 松岡 諒

作者コメント

マテリアルタグパンチは、日常の中で見つけたマテリアルをタグにして保管しておくためのプロダクトです。
公園で拾った葉、心惹かれた包装紙、着れなくなったお気に入りの洋服など。
様々なものをパンチすることで、新しいアイディアへのヒントをストックできます。

審査員総評(※審査員の肩書は審査当時のものを掲載しております)

木住野 彰悟
木住野 彰悟

木住野 彰悟

6D-K代表 / アートディレクター・ グラフィックデザイナー

一つのプロトタイプができるまでにはさまざまな可能性があり、その状況を矢印としてキービジュアルに描いた。実際に「prototype」の解釈もさまざま見られたが、応募者が真剣でかなりの熱意を持った、クオリティの高い作品が多かった。思考を重ねた、思考の連鎖が見られ、すばらしい作品群だった。

田根 剛
田根 剛

田根 剛

Atelier Tsuyoshi Tane Architects 代表 / 建築家

「prototype」のテーマに真摯に向き合った提案が、今回のコンペの質の高さに繋がったと思う。また参加者のモックアップ(サンプル)の精度が非常に高かった。前回はこれが十分ではないと苦言を呈したのに対し、真摯に受け止め、向き合ってくれた。見応えが高かったと感じる。ものの検証や素材の検証だけでなく、感情の検証など、さまざまな検証がなされ、思考の段階が高いレベルまで到達していた。今回、審査員でも本質的なデザインの議論が生まれ、多くを学ぶ機会となり、際立っていいコンペだった。

田村 奈穂
田村 奈穂

田村 奈穂

デザイナー

テーマを「試作」と捉えることで完成度が低くなるのではと懸念していたが、実際にはどの作品も完成度が高かった。抽象的なテーマを、それぞれの視点で解釈し、しっかりとプレゼンテーションしていた。デザイナーにとってプロトタイプをつくる段階は、制約がなく、純粋にアイデアを形にできるわくわくする瞬間。応募者たちも理屈ではなく、楽しみながら柔軟な発想を見せてくれた。ピュアなアイデアを形にできる、そんなテーマだったと思う。

柳原 照弘
柳原 照弘

柳原 照弘

TERUHIRO YANAGIHARA STUDIO / クリエイティブディレクター・デザイナー

例年にない議論が生まれた。デザイナーにとってプロトタイプは開発やアイデアに不可欠なもので、あえてテーマにして意味を問い直したのは新鮮でもあり、デザイナーとしての本質を考える意味でも、いいテーマだと期待していた。それに応えた作品が集まった。審査員の考え方や議論の重ね方次第で、受賞結果は変わるぐらい、紙一重だった。審査では有意義な議論が生まれた。

吉泉 聡
吉泉 聡

吉泉 聡

TAKT PROJECT 代表 / デザイナー

どれもすばらしい作品だった。われわれがテーマをどう解釈しているか、評価基準は何なのかをかなり議論した。その中でテーマ説明で使用された「呼び水」という言葉を一つの指針として審査した。社会が変わっていく中で、プロダクトデザインとは何かと問われている。意図した使い方を与えるだけではなく、受け手の発想や感情を「呼び水」のように引き出していくこと。そんなプロダクトデザインが持ちうる「prototype」するあり方を考え、開く機会になったと感じる。

黒田 英邦
黒田 英邦

黒田 英邦

コクヨ株式会社 代表執行役社長

審査員でも評価の視点や基準がさまざまあり、活発な意見が交わされた審査となった。難しいテーマだったが、感動的なプレゼンテーションが続いた。これこそデザインだという体験を共有できた、レベルの高いコンペとなった。将来が不透明で正解が見えない時代ではアイデアを形にすることが重要。デザインの創造的アプローチに多くの方々が参加し、すばらしい作品が集まったことは、大きな手がかり。海外からの応募者も増えている。より広く若い人にもチャレンジしてもらえるコンペに育てていきたいと考えている。

トロフィー

トロフィーと表彰状は、審査員の木住野彰悟氏にキービジュアルとともにアートディレクションを手掛けていただき、コクヨ代表デザイナーとして、墨田 知世、後藤 由芽が参加しました。

左:トロフィー 右:表彰状

最終審査/受賞作品発表/トークショー

最終審査

9組のファイナリスト達は、今回のテーマ『prototype』に向き合い、熱い想いを込めたプレゼンテー ションを行いました。
審査員はそれに真剣に向き合い、アイデアが明快であること、社会の課題を浮き彫りにしていること、製品化の可能性を視野に入れた慎重な審議を行いました。

NEW GENERATION 賞

NEW GENERATION 賞 は、コクヨデザインアワード2025の全応募作品の中から学生の応募作品を対象とし、商品化を前提とせず、アイデアや着眼点に魅力がある作品を選定し、次世代を担う若い世代の次なる挑戦を後押しする目的で設定されました。