KOKUYO DESIGN AWARD 2018

KOKUYO DESIGN AWARD2018

2018テーマ:「BEYOND BOUNDARIES」
世界46カ国から集まった1,289点(国内766点、海外523点)の作品の中から
一次審査を通過した10点を対象とし、2019年1月18日に最終審査を開催。
グランプリ1点と優秀賞3点が決定しました。

グランプリ

グランプリ

作者
作品名
音色鉛筆で描く世界
作者
山崎 タクマ

作者コメント

本提案は、紙と鉛筆の微小な摩擦音を増幅することで、文具を介して生まれる新たなコミュニケーションのかたちをあらわしたプロジェクトです。「描く」ことの意味を再考し、視覚情報を残すことを目的としない「楽器としての文具」の在り方を探求しました。文具を音色をえがく為のクリエイティブツールとして再定義することで、目の見えない人と見える人にとって、新鮮な創造的体験の可能性をあらわしました。

作者
審査員講評

全盲の方とのワークショップを通じて、文具を音色を感じ、楽しむためのツールとしての可能性を追求していく様子に、文房具の新しい扉を開け放つような印象を受けた。プロダクトの形も、通常の楽器が独特の形をしているように、使う前からいったいどんな音が出るのか想像をかきたてる魅力がある。これからの文房具のあり方について、夢を描かせてくれる提案だ。

植原亮輔

本来はビジュアル表現のために使う鉛筆をベースに、別の五感で楽しむ装置を発明するとは、とんでもなく斜め上のアイデア。その発想を、プロダクトとしても美しくてシンプルなかたちに落とし込めている。また、コンセプトの芯をぶらすことなく、定規や鉛筆削りを含めた製品群として提案できていることにも、今後の展開の可能性を大いに感じさせてくれる。

川村真司

テーマ設定のシャープさ、ワークショップのプロセス、プロトタイプの完成度とそこから生み出される体験。すべてにおいてクオリティが高く、アイディアを思いつきで終わらせずに、最終的にはモノとしてきちんと昇華させるという、このアワードが求めている理想形が体現されている。例えばマットブラックで統一されたカラーリング一つ取っても、元々のコンセプトである『視覚情報に頼らない』という強い意志を感じた。

佐藤オオキ

現代的な電子メディアの技術ではなく、子供の頃から親しんでいる鉛筆にシンプルな道具を付けるアナログな方法で、新しい身体感覚を生み出し、人の潜在的な欲求に応えられていることに大きな衝撃を受けた。実際に書きながら、自分の耳から聴こえているのか、鉛筆を通して身体全体が聞いているのか、体験したことのないような、身体が拡張する感じを覚えた。

鈴木康広

筆の音がとても心地いい。この音を聞きたくて、プレゼンのあいだ中、描き続けていた。誰も考えたことがないような、摩擦音で文字を知覚するという発想が新しくて、今後どのように発展していくのか、期待させてくれる。

渡邉良重

優秀賞

優秀賞
作者

作品名

Palletballet

作者

Soch (Athul Dinesh / Ghufran Ahmed / Pranav Kishore Bidwe)

作者コメント

今日の社会では皆、評価されること、否定されることを恐れ、自分の創造力や思考を芸術という形で表現することに消極的になっています。この作品は、子供たちが従来のお絵かきの境界を越え、絵を描いて色を塗るという過程を思う存分没頭して楽しめる画材です。子供たちの自由な創造を促し、探究心を高めてくれます。子供でも簡単に直感的に色を混ぜ合わせて新しい色を作り出すことができるデザインです。遊び心いっぱいのこの回転する画材を使うと、子供たちは毎回違った楽しい経験を味わうことができ、ユニークな作品を作り出すことができます。

審査員講評

理屈でなく感じるものがあった。大人も童心に帰って心のままに絵を描ける道具だと思う。スピナーを使うと絵の具が激しく飛び散り、四角い紙というしばりを楽しく越えている。色々な意味での「BEYOND BOUNDARIES」を感じた。作品の組み立てが巧みでありながら、プロダクトそのものも実にチャーミング。左脳と右脳の両方に問いかけているところがおもしろい。

植原亮輔

つい新しいテクノロジーが注目を集めてしまう時代に、アナログならではの良さを持った作品。こういった伝統や古いものを蘇らせるアプローチは、多くの審査員が魅了されたように、ある種ユニバーサルに共感できる物語を持っているのかもしれない。新しいデザインのコンペで、こうした伝統的・民芸的なデザインもきちんと評価されることはとても大切だと思う。

川村真司

これからのコクヨデザインアワードを変えてしまう「黒船」のような作品かもしれない。これまでの海外作品はアイデアが最終的なカタチに洗練されにくい印象があったが、この作品は骨太さはありながら、ここまでのクオリティに仕上げられてきた。アワードテーマへの答えという観点でも、絵を描くことを幼児期に諦めてしまう人が多いという問題に対して、この作品が提案する体験は、その境界を軽く突破できてしまうように感じさせるところも素晴らしかった。

佐藤オオキ

ろくろで造形し、ろくろで着色する。職人の作業性を考慮し、最小限でできることを追求した結果、この形が抽出された。デザイナーの意思によって磨きあげていくのでなく、無理をしない素直な「洗練」のありように心が動いた。従来の絵の具の若干無機質なチューブやパレットではなく、このような不思議な形のなかから絵の具が飛び出し、意図的ではなく自然のなりゆきで絵が描ける体験は、絵を描くこととの最初の出会いとして未知数の可能性を秘めている。

鈴木康広

作品の写真を見ただけで、どう使われるかも二の次で、純粋に「いいな」と思った。プレゼンで紹介された、インドでつくられる過程や、子どもたちが遊んでいる姿も印象的だったが、なんといっても実際のモノの完成度の高さ。色、かたち、すべてが素敵で、そのまま買いたい。子どもに限らず、大人にとっても魅力的なプロダクトだと思う。

渡邉良重

優秀賞
作者

作品名

スマートなダブルクリップ

作者

豊福 昭宏

作者コメント

たくさんの紙を手軽に固定できるダブルクリップは、資料を作成するのにとても便利です。しかしその一方で、閲覧する際にはめくる動作の邪魔をしてしまいます。「スマートなダブルクリップ」は、紙をめくる時に角に生まれる三角形の余白と形状を揃える事で、邪魔にならずガイドとして機能します。消費者のその先で使用する人のことを考えた、新しいダブルクリップの提案です。

審査員講評

コクヨらしさを感じる作品。シンプルなアイディアでありながら、100年前に発明され、以後変わらず守られてきたデザインを鮮やかに越えてきた。そういった意味での「BEYOND BOUNDARIES」を見出すことができる。

植原亮輔

日常での使用シーンが見えて、商品化も見えて、かつユーザーと書類の新しいインタラクションの提案になっている。これが売られていたら、僕は迷わず買う。一方で、直角三角形になったがゆえに、今までのクリップにはなかった「正しい向き」という条件が生まれた。ユーザーが向きを間違えないように一瞬考える時間が生まれるのは、少し気になるポイントではある。アワードのテーマとのブリッジは少し弱かったが、それを飛び越えるだけの力を持った作品でもある。

川村真司

商品化したら「カドケシの再来」のヒットになるかもしれない作品だと感じた。プレゼン力も素晴らしかった。商品化がイメージしやすい作品だが、売り方やマーケティング視点まで提案を拡げることなく、プレゼンを一定の領域に留め、このアイデアがもっているスイートスポット(強み)だけに磨きをかけて、パーフェクトに見せきっていた。

佐藤オオキ

100年前の偉大な発明であるダブルクリップのリデザインであるが、思った以上にわくわくしたのは、僕もずっと「留めると読みにくいな」と感じていたから。一次審査では「クリップを開く時にアンバランスになるのでは」と心配したが、試作はきちんと留まる方向に力が働き、とてもよくできている。

鈴木康広

100年もの間、これまでのダブルクリップに代わるものがなかったところを、使いやすく、きれいにつくりかえてくれた。身近にたくさんあるために慣れてしまっていたが、「もしかしたら使いにくいかも」という潜在的な意識に着目した点がよかった。商品化されたらヒットしそうな予感がする。

渡邉良重

優秀賞
作者

作品名

白と黒で書くノート

作者

中田 邦彦

作者コメント

灰色の紙に黒と白の文字を書く、ノートとその書き方の提案です。紙の色に対して暗い色の文字と明るい色の文字は同時に読みにくいという視覚の性質を利用します。黒い文字を読みながら白い文字へ目を移す時、視覚のスイッチを切り替える必要があり、それぞれの色の文字を個別に集中して読むことができます。大切な部分を際立たせたり、周辺情報を十分に記せたり、光と影を描けたり、視覚が持つ境界を利用することでノートの新しい使い心地が生まれます。

審査員講評

プレゼンのあいだ中、ずっとこのノートに絵を描いていた。普通のスケッチブックと違って、このノートは白いペンで光を描けるところが新鮮だ。罫線のないスケッチ用のノートがあってもよいのでは。作者の意図とは少し違うかもしれないが、そういった広がりも感じられる作品。

ひとつだけ気になったのは表紙。あまり考えすぎず、シンプルにコクヨのキャンパスノートの表紙にした方が、本来提案したい中身の書き方の部分に集中させられたかもしれない。

植原亮輔

僕自身、白いペンで書きたいがために自分で黒いノートを製本していたくらいだから、この良さがすごくよくわかる。視覚がとらえる明度の差を利用して、読みやすさを高めるという理屈はわかるが、なぜ白い紙にカラーペンではダメなのか、という誰もが感じる疑問に対する答えを、使用シーンも含め、もうすこし説得力のある方法で説明してくれたらよかった。

川村真司

アイディアが良かった分、もう少しプレゼンの組み立てに工夫が欲しかった。色相よりも明度のコントラストの方が認識しやすいというデータや、定規や分度器などの周辺ツールへの展開など、面白いネタは用意されていたが、出す順番や説明の丁寧さに、もう少しブラッシュアップできる余地を感じてしまった。

佐藤オオキ

実は15年以上前に、視覚の境界をテーマにした鉛筆をつくったが、ノートの色を変える発想はなかったので衝撃だった。インターネット時代のデジタル経験を経て、黒が背景に白い文字が手前というディスプレイで多く使われる表示方法を、アナログのノートに展開するという、いいところを突いた提案。手で書くことが好きな人にとっても、そうでない人にとっても、わくわくするようなノートだと思う。

鈴木康広

プレゼンのあいだ中、このノートに色々と描いていた。白い紙の上に色ペンで描くよりも、灰色の上に黒と白のペンで描くと、絵のなかに新しい発見が生まれるような気がする。本当に楽しいので、もしも商品化されたら、ぜひ使ってみてほしい。

渡邉良重

審査員総評
(※審査員の肩書は審査当時のものを掲載しております)

審査員
審査員

植原亮輔

KIGI代表/アートディレクター・クリエイティブディレクター

今、さまざまなクリエイティブが融合し、デザインがより自由な方向にむかうなかで、「BEYOND BOUNDARIES」というテーマは時代に合っていると思った。最終審査では、今までにないレベルの高さに驚かされたが、既存のジャンルの枠を取り払ったり、新しい方法で人と人がつながるなど、いろいろな境界の越え方が提示され、これからのデザインに可能性を感じられる機会となった。とにかく参加する人が楽しそうなのが印象的で、世界の中でも類を見ないアワードに成長していると思うので、より多くの人に知ってもらいたい活動だ。

審査員
審査員

川村真司

Whatever/クリエイティブディレクター・チーフクリエイティブオフィサー

今の時代、インターネットを介して世界中がつながれるからこそ、今まで見えてこなかった境界があらわになる。海外作品が増えたこともあり、今まで以上にバラエティに富んだ作品が集まり、異なる国や文化背景から生まれた提案も新鮮だった。その果てにあるものがはっきり分からなくとも、自分の殻を恐れず破り、一緒に見に行こうよと進んでいくアワードである。テーマは大事にしながらも、広く社会にとって提案性のあるものを受け入れられる、フレキシブルなアワードとしてますます進化していってほしい。

審査員
審査員

佐藤オオキ

nendo代表/デザイナー

今回は、一般的なデザインコンペの範囲を大幅に逸脱したレベルの高さで、正直戸惑いさえ覚えた。また、過去粗削りなところが目立った海外勢だが、ファイナリストはいずれもクオリティが高く、初めてコクヨデザインアワードが国際的な舞台に立った印象を受けた。グランプリは、コンセプトだけでなく、プロトタイプを通じた体験が素晴らしかった。デザインの概念がどんどん広がり、コトや体験のデザインが独り歩きしている危惧もあるが、デザイナーは形をつくることから逃げてはいけない、と改めて感じさせて頂けたことを感謝したい。

審査員
審査員

鈴木康広

アーティスト

「身近な人が共感してくれていたデザインの面白さをやっと証明することができた」という受賞者の言葉があった。グローバル化が進む中で、誰もがほしいと思う普遍的な価値を見出だすことに意識がいきがちだが、身近な環境から飛躍し、一気にパブリックに広がっていくその“越え方”が印象に残った。また、グランプリ作者の「ものづくりではなく、もっと伝えたいことがその周りにある」という言葉には、プロダクトとして定着させることでは収まらない、今後のデザインへのヒントがあるように感じた。

審査員
審査員

渡邉良重

KIGI/アートディレクター・デザイナー

ただものを作ることだけでなく、ものづくりの先にあることを求めて設定したテーマ。難しいテーマだったが、ファイナリスト作品の素晴らしさにはとにかく驚いた。どの作品も、一次審査から最終審査にかけて一気にレベルが高くなった印象を受けたので、ファイナリストに残れなかった中にも、プレゼンの機会があれば高く評価される作品がもっと隠れていたのではないだろうか。何度も応募している受賞者も多く、一度チャレンジしてダメでも、またチャレンジして成長していく、今後もそういった機会であってほしい。

審査員
審査員

黒田英邦

コクヨ株式会社 代表取締役 社長

ファイナリストのプレゼンテーションはすべて素晴らしかったが、グランプリ作品を中心に、誰の立場に立ってこだわるか、その価値をつくり、検証するプロセスが感動的だった。これだけ世の中にモノが溢れ、デジタル化も進んでいくなかで、コクヨがこれからどういう意義の元にものづくりをしていくべきなのか。背中を押されるような気持ちになった。今後このアワードを、コクヨにとってだけでなく、クリエイターの皆さんのキャリアにとって良いチャンスになれるように、より進化させていきたいと改めて感じている。

最終審査

10組のファイナリスト達は、今年のテーマ『BEYOND BOUNDARIES』に向き合い、熱い想いを込めたプレゼンテーションを行いました。
審査員はそれに真剣に向き合い、コンセプトメイキング、デザインの完成度、商品化の可能性を視野に入れた慎重な審議を行いました。

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受賞作品発表

見事、2018年のグランプリに輝いたのは『音色鉛筆で描く世界』。
ファイナリストの作品の模型は、会場に展示され、多くの来場者が熱心に見ていました。
会場では、過去の受賞作品も販売されました。

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トークショー

今年のテーマ『BEYOND BOUNDARIES』についての審査員の想いや、受賞作品の評価のポイントなどについて語っていただきました。
多方面でご活躍されている審査員ならではのトークに、会場は大いに盛り上がりました。

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