KOKUYO DESIGN AWARD 2020

KOKUYO DESIGN AWARD2020

2020テーマ:「♡」
1,377点(国内771点、海外606点)の作品の中から
一次審査を通過した10点を対象とし、2020年3月14日に最終審査を開催。
グランプリ1点と優秀賞3点が決定しました。

グランプリ

いつか、どこかで

オバケ(友田菜月、三浦麻衣)
作品名
いつか、どこかで
作者
オバケ(友田菜月、三浦麻衣

作者コメント

これは、前世を持つ鉛筆。この世から消えてしまうはずだった、廃材によって作られます。側面に書かれた住所と部材名は、この木が使われていたかつての建物や家具の場所。凹凸のある質感や硬さ、ほのかな香り、キズ、日焼けの跡、塗料の色、木目…
手にした途端、1本1本ちがった豊かな表情に出会えるはずです。この木だけが知る記憶が、鉛筆に移植され残り続けていく。今じゃないいつか、ここじゃないどこかを、心に描いてみてください。

オバケ(友田菜月、三浦麻衣)
審査員講評

テーマが少し難しかったかもしれない。とらえどころがなかったり、逆に、ストレートにとらえすぎたりと、応募者の皆さんの迷いが感じられた。審査員も悩んだのではないか。この作品は、コミュニケーションを形にするという提案。だからこそ伝え方や見せ方、パッケージのあり方などがとても重要。僕としては、その部分の踏み込み方や展開をもっと見たかった。しかし、コンセプトはファイナリストのなかで最もテーマに合っているということで、グランプリに値すると判断した。

植原亮輔

コクヨデザインアワードにおけるグランプリの評価のポイントは、テーマに則していること、アイデアのジャンプ、デザインクラフトの質、商品の実現性といった項目が高いレベルにあること。例年、それらが飛び抜けて高い作品がグランプリに選ばれているが、正直にいうと、今年はそう思えるものはなかった。一番バランスがとれていたのが、この作品。デザインそのものの新規性というよりは、コンセプトの文脈や背景がポイントで、「この取り組みを通じて、多くの人やコミュニティを巻き込むポテンシャルがある」という観点から評価した。

川村真司

テーマをよくとらえ、それに対する応答力があった。この作品が投げかけているのは、記憶を共有するというノスタルジックなメッセージ以上に、「大量に生産して消費するあり方のままでよいのか」という消費社会のプロセスに対する提言である。そして何よりも鉛筆を手にした時の上質な触感と質感がそれを物語っている。デジタルの時代だからこそ、モノの量よりも質が未来を作る時代。建材として使われてきた重みが「質」となり、既存の産業の仕組みである「量産」を超えるかもしれないところに感銘を受けた。これが製品化される際には、そのクオリティが損なわれないように慎重に開発していってほしい。

田根剛

実は、一次審査ではノーマークの作品だった。ごく普通の鉛筆で、書類だけではそこまでストーリー性を感じなかったからだ。ところが最終審査でモデルを持った時、圧倒的な質の高さに驚き、その質量を通して様々なストーリーが頭に浮かんできた。「これはグランプリだ」と確信するのにそう時間はかからなかった。建築や家具で使われた木材が役目を終え、鉛筆として生まれ変わる。これだけ聞くと単なるリサイクル製品でしかないが、彼女達が提案したのは、小さな鉛筆の中に無限の可能性を内包した物語のデザインであった。ワークショップなどをプロジェクトとして進めていけばより多くの人に賛同してもらえる社会的なプロジェクトになるだろう。コクヨと共に、これから社会に向けて広げていけそうなたくさんの可能性を想像しながら票を入れた。

柳原照弘

例年よりも人の気持ちに訴える作品が多いなかで、特に印象深かった。この鉛筆の側面には、この木がもともとどんな建物に使われていたかが記されている。自分が通っていた小学校が廃校になったり、誰も住まなくなった実家を手放す、といった人たちにとって、このような形で記憶が残せたらきっと嬉しいだろう。また、そうした気持ちをシェアできるような仕組みが作れたらいいなと思う。鉛筆の質感が本当に良いので、わずかにズレたりゆがんでいるような手作りの風合いをぜひ残しながら商品化していってほしい。

渡邉良重

優秀賞

オルゴールテープカッター
鳥山翔太、柳澤駿

作品名

オルゴールテープカッター

作者

鳥山翔太、柳澤駿

作者コメント

マスキングテープカッターにオルゴールの要素を加え、テープを引き出す動作に連動して綺麗な音色が流れるようにしました。テープを引き出す際に鳴る音は、感覚的にテープの長さを測る事も出来るので、使ううちに丁度いい長さでカット出来たり、いい事があった日、お気に入りのテープをセットした時は、いつもより長く音を楽しんだり。目と耳で感覚的にテープを使う事を楽しむ事が出来る提案です。

審査員講評

オルゴールらしさを追求したとのことだが、直接楽器を連想させる金属調の最終プロトタイプよりも、プラスチックの軽い感じや、どこから音が出るのかわからない不思議さのある初期プロトタイプの方向性を詰めていくほうがおもしろくなるだろう。

植原亮輔

最終プロトタイプの金色は再考してほしいが、それよりも、これがもしマスキングテープ用ではなくガムテープ用の大きさだったらどんな音になるか、メロディが作れるのか、梱包作業が楽しくなるのか、といった面でまだ掘り下げる可能性がありそう。現状の形にこだわらず、アイデアを広げてほしい。

田根剛

最終審査で実際にこれを使ってみた瞬間に、想像していた以上に楽しいと思った。マスキングテープはプライベートな目的で使われることが多く、家で何かを作る時に、こういうものが音を奏でてくれたら楽しい気分になると思う。

渡邉良重

オヤコゴコロ
山川洋平

作品名

オヤコゴコロ

作者

山川洋平

作者コメント

本体を強く押した瞬間から電池が切れるまで、現在地とSOSメッセージを一定間隔で送信し続けるブローチ型IoTデバイスです。何かあった時のために、子供の居場所を把握しておきたい「オヤゴコロ」と、常に居場所を把握されていることに抵抗を持ってしまう「コドモゴコロ」。でも、本当に何かあった時には、こっそり助けを求めたい。求めてほしい。そんな「オヤコゴコロ」に応えたいと考えました。

審査員講評

システム的な要素が強いプロダクトで、コクヨの商品化としてどうかとは思ったが、♡のテーマから、人の命を守るものを作りたいという発想が生まれたこと、このプロダクトによって、たったひとつでも命を救うことができたならという思いに感動した。ぜひ実現してほしい。

田根剛

社会的な問題や、応募者自身の子どもに対する愛情を背景にしたテーマのとらえ方もアイデアもいい。「これを形にしたい」という応募者の使命感や熱意は、審査にも影響を与えたと思う。商品化するためには、子どもが使うための安全性やインタラクションのあり方など、検討すべきことは多い。

柳原照弘

応募者のプレゼンで、日本でたくさんの子どもたちが行方不明になっている話を聞いてショックだった。実用化するには多くのハードルがあるが、それ以上に、この、どこにでもありそうな可愛らしいブローチが子どもを救うことに貢献できるかもしれない、というストーリー性を評価したい。

渡邉良重

FROM TREE TO FOREST
Tuncay Ince

作品名

FROM TREE TO FOREST

作者

Tuncay Ince

作者コメント

木と人間、森と社会の関係を意識したデザインで、見た目も楽しく機能的な文房具です。鉛筆部分は木の幹を付箋部分は木の枝を表し、鉛筆を立てて並べると付箋同士が支えあい、森のように見えます。付箋を使い鉛筆を削る行為を、木の伐採や森林破壊に見立てています。近年、世界中で行われる森林破壊に対策しなければ、自分たちを破滅に導くかもしれません。この作品は、この現状を感じてもらい、自然を尊重し大切にするよう促します。

審査員講評

ファイナリストのなかでも特にパッと見た時のインパクト、可愛らしさ、存在感が一番ある。製造プロセスが複雑になるためコストが高くなるという課題はあるにしても、このたたずまいは優秀賞にふさわしい。

植原亮輔

これを作るために環境を破壊しなければならないとしたら、アイデアと現実の不一致は否めない。文房具にこだわらず、積層した紙が噛み合って自立するおもしろさ、クラフトの美しさに立ち返ってみては。

川村真司

プレゼンを聞いた時に、森林破壊を実感させられるプロダクトで、「使いたくない」という思いに駆られた。今回の『♡』のように、意外性や大胆さを内包するテーマのもとでは、「使いたくない」プロダクトというのは逆に新しく、可能性があると感じた。

コクヨ

審査員総評
(※審査員の肩書は審査当時のものを掲載しております)

植原 亮輔
植原 亮輔

植原 亮輔

KIGI代表/アートディレクター・クリエイティブディレクター

審査を務めるのは5回目だが、毎回テーマのレベルがあがり、応募者のレベルも高くなっている。価値観がモノからコトへと転換し、デザインの意味が広がるなかで、テーマの出し方や審査の仕方が難しくなっていることも確か。今回はその難しさをやわらげ、多様な提案が集まることを期待して、あえて抽象的なテーマで問いかけてみた。応募者にとってはかえって難しく感じられたかもしれない。しかし、デザインコンペでは、わかりやすいお題もいいが、奥深さや複雑さに向き合うことも大事。各審査員もそれぞれ悩み、いい議論ができたと思う。

川村 真司
川村 真司

川村真司

Whatever/クリエイティブディレクター・チーフクリエイティブオフィサー

テーマ設定はデザインアワードの内容を左右する重要な要素で、今回のテーマは特に実験的だった。それを試してみようという雰囲気があるのがコクヨデザインアワードの良いところで、おかげでまた一歩進化できたと思う。一方で今後の課題もやはりテーマ設定にある。『♡』の形をそのまま使った応募作が多かったが、本当はそれ以上の深みのある読み解きをしてほしかった。僕らのガイダンスが不足していたのであればしっかり検証し、次回もおもしろいスパークを起こして、多様な可能性を引きだせるようなテーマを考えたい。

田根 剛
田根 剛

田根 剛

Atelier Tsuyoshi Tane Architects 代表/建築家

コクヨデザインアワードのようなコンペには夢がある。世界中から1300を超える人が今の時代と社会に向けて何かを発信する機会。仕事でも義務でもなく、純粋にデザインでチャレンジしようという応募者の思いと、それを見極めようとする審査員の見識がぶつかってグランプリが決まる。応募者と審査員がひとつのストーリーを生み出し、それが製品という形になった時に何かが広く伝わっていく。そうしたことは、もっと現実的で厳しい議論がなされる建築のコンペでは起こりにくいものだ。今回初めてプロダクトデザインの審査に参加してみて、みんなで一緒に未来を作ろうという考え方が原動力になっており、とても新鮮で魅力的だった。

柳原 照弘
柳原 照弘

柳原 照弘

デザイナー

デザイナーとして商品開発だけに留まらない領域に関わっているので、普段のコクヨとは違う目線で評価ができたらと思って審査に参加した。単なるモノの良さや売り上げ重視の商品開発ではなく、「なぜ、それを作るのか」という社会的な意味や背景がかなり重要になっている。そのため、審査員がテーマや応募作品をどう解釈するかによって、グランプリにも佳作にもなり得るという、審査する側の力量も問われるコンペであった。多様な考え方で評価できるのはよいが、一方で本当にいいものが一次審査で見落とされてしまったかもしれない。審査員として、応募作品ひとつひとつの本質をしっかり読み取れるように努めたい。

渡邉 良重
渡邉 良重

渡邉 良重

KIGI/アートディレクター・デザイナー

ここ数年、一つの流れの中でテーマを設定してきたので、今回今までの流れとは異なる記号でテーマを提示するというチャレンジは新鮮だった。一次審査では、テーマの『♡』を直接的な形としてとらえ、♡型のモノの提案がかなり多かった。もちろんそれでもおもしろくなる可能性はあるが、もう少しテーマの意図を深く読んでほしいという気持ちはあった。一方でファイナリストに残った作品は、機能があるモノというよりは、人の気持ちに訴えかけるような提案が多く、デザインとしては課題がありながらも、作品の持つ背景やストーリーに心を揺さぶられた。テーマによって残る作品が変わるおもしろさを改めて実感した。

黒田 英邦
黒田 英邦

黒田 英邦

コクヨ株式会社 代表取締役 社長

テーマを記号『♡』とすることで、応募者の皆さんそれぞれの解釈で受け取ってもらおうという新しい取り組みに挑戦した。実際に、応募者の構成や作品が例年とは違ったり、審査員の解釈によって評価が変わるなど、これまでにはない難しいアワードでもあった。一方で、新しい審査員を迎えて、審議でも新たな化学反応が起きるのを実感できた。特殊な状況のなか、最終プレゼンや審査の様子をインターネットで配信することになったが、応募者の熱意や、審査員による示唆に富んだ発言をより多くの方にお伝えすることができ、意味があったと思う。これからも、このアワードの活動を通して、世の中のクリエイターの方々にチャレンジする機会を提供しながら、いただいた提案や刺激をコクヨ自身のチャレンジにも変換させていきたい。

最終審査/受賞作品発表/トークショー

最終審査

10組のファイナリスト達は、今回のテーマ『♡』に向き合い、熱い想いを込めたプレゼンテーションを行いました。
審査員はそれに真剣に向き合い、テーマの解釈、デザイン・アイデアの完成度、商品化の可能性を視野に入れた慎重な審議を行いました。

受賞作品発表/トークショー

見事、コクヨデザインアワード2020のグランプリに輝いたのは『いつか、どこかで』。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、最終審査・審査員トークショーは無観客で行い、インターネットでライブ配信されました。
例年以上に「なぜ、それを作るのか」という社会的な背景に真摯に向き合う提案が増えたことが、時代性を感じさせる結果となりました。