受賞者インタビュー

木村 寿樹
「リップルズノート(ノート)」

2002年度 優秀賞

優秀賞、そして商品化で感動。

2002年、コクヨデザインアワードの第一回目が催されました。テーマは「ユニバーサルデザイン」。年齢に関わらず誰もが使いやすい、そんな画期的なデザインが多く寄せられました。この年、「リップルズノート」という作品で優秀賞に輝いたのが木村寿樹さん。「パラクルノ」という名前で商品化もされた画期的な作品。作者である木村さんに、受賞にまつわるお話をおうかがいしました。

——  2002年といえば10年ほど前になりますが、その頃は社会人でしたか。

はい。ある企業で家具のデザインをしていたのですが、その頃は会社を辞めてフリーランスになろうかなぁ、と考えていました。


——  そんな頃にコンペに応募されて、優秀賞に選ばれたのが"リップルズノート"。
この、ページの端に角度をつけるというアイデアは、どこから生まれましたか。

家具のデザインをやってた頃、強度試験というのがあったんですね。そのとき、ボルトやラチェットレンチでネジを締めたりしながら、データをノートに書き込む。すると、手が油で汚れているから、ノートが汚れる。


——  ノートを汚したくなかったのが、発想の原点?

そうです。ページをめくるときに軽く触れるぐらいにしておけば、油がついた手で扱っても、ノートは汚れないだろうと思ったんです。

——  なるほど。で、そこから試行錯誤が始まったのですね。

いや、試行錯誤ってほどではないですが、簡単にページをめくるいい方法はないかなと考えて、裁断面を斜めにカットすることを思いついた。お札を数えるときに紙幣をずらす、あの要領です。

——  思いついたとき、これはうまくいく、と思いましたか。

カタチにはできるだろうとは思いました。アイデアを平面図に起こしながら、断面を確認して、大丈夫だ、と。


——  モデルは造らなかったのですか。

当時はパネルの応募だけで良かったので、造りませんでした。後から商品化することになったときに、裁断面を自分で削ってみてモデルを造りましたけどね。

——  この年のアワードで商品化された作品は、"リップルズノート"の他に"カドケシ"と"たまほっち"がありましたね。

自分の作品が優秀賞になるなんて思ってもいませんでしたし、まして商品化されるなんて。店頭に並んだときは、すっごく嬉しかったです。

——  商品化されて名前が"パラクルノ"になりましたね。

はい、聞いたところによると、"リップルズノート"は商標的に使えなかったらしいです。"パラクルノ"の完成度には満足しています。完璧です。僕のアイデアがちゃんと商品になるなんて、感動的でしたね。

——  優秀賞を受賞して商品化された。そのことで、生活に変化は生まれましたか。

いえ、あまり(笑)。ただ、自分をPRするときのネタにはなりましたね。あと、"パラクルノ"はグッドデザイン賞のベスト15に選ばれました。そのノートをデザインしたということは、仕事をしていくうえでの励みになりました。


——  デザイン関係の人に、"パラクルノ"はよく使われているそうですね。

いまでもたまに、買いましたよとか、使っていますよとかと言ってもらうことがあります。そのたびに、ありがとうございます、と(笑)。


——  では最後に、これからコクヨデザインアワードに応募しようとしている人たちにアドバイスを。

そうですねぇ、シンプルを心がけることですかねぇ。例えばパネルをつくるにしても、文字を少なくして、どんなアイデアかがひと目で理解できるようにする。それはモノをデザインするときも同じ。ムダな線は徹底的に省くことが大切です。


——  シンプルだと、コミュニケーションもスピーディになりますもんね。

そうです。あとは、コクヨデザインアワードの場合は商品化という目的もあるので、リサイクルとかシステム的なことまでを含めた提案は合わないかもしれませんね。あまり複雑にしすぎない。とにかくシンプルで、わかりやすく。単純明快なものがいいと思いますよ。