KOKUYO DESIGN AWARD 2021

KOKUYO DESIGN AWARD2021

2021テーマ:「POST-NORMAL」
1,401点(国内795点、海外606点)の作品の中から一次審査を通過した10点を対象とし、
2021年3月13日に最終審査を開催。
グランプリ1点と優秀賞3点が決定しました。

グランプリ

RAE

Milla & Erlend(Milla Eveliina Niskakoski、Erlend Storsul Opdahl)
作品名
RAE
作者
Milla & Erlend(Milla Eveliina Niskakoski、Erlend Storsul Opdahl)

作者コメント

2020年は多くの人が先の見えない状況に直面し、仕事の環境が新しくなったり、変化したりしました。これは新たな仕事環境にも自然になじみ、ツール、空間、心を新たな状況でもきちんとひとところに落ち着かせることができるデスクトップオーガナイザーの提案です。

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審査員講評

アイデアも、デザインも、テーマに対する答えも完壁だった。設計の細部へのこだわりやプレゼン動画に関してもきちんとしていて感心させられた。折り紙の発想はよくあるが、底面を箱状にするという独特な構造は新鮮だし、ロゴデザインにもこの作品らしい空気感がある。プリントしたりサイズを変えたらどうなるだろうかと想像が膨らみ、さまざまな展開の可能性も感じる。机上に留まらず、美容室やネイルサロンなどにたくさん置かれていると楽しそうだ。

植原亮輔

アイデアの新規性、デザインの美しさ、実現性商品としての強さを評価する中で、この作品はすべてを満たしていた。テーマにも合致しており、素材や流通の面でもサスティナブルだ。折り紙というアイデアは昔からあるが、ただ折るだけではなく、できあがりのフォルムがとても美しい。折り方のシステムも素晴らしいので、このままサイズを拡張して椅子や家具にも展開できるのではないか。

川村真司

1,401点の中で、最初から特別な輝きを放っていた。アイデア、拡張や展開の可能性、クオリティがとても高く、審査員全員が「評価したい」と思う作品だった。最終プレゼンで、形の美しさもさることながら、「引越し」という生活の変化から着想を得たことを知り驚いた。デザインは国境を超えて、これからの生活を考える提案として期待したい。

田根剛

紙という素材は、イメージよりも実物のクオリティが 低くなりがちだ。ところがこの作品については、想像のはるか上をいくクオリティと造形の美しさがあった。造形、質感、色彩に対するセンスの高さだけでなく、製品化を目指してトライアンドエラーを繰り返しながら辿り着いた完成度の高さに、デザイナーとしての技量を窺い知ることができた。紙は他の素材よりも安価で、より多くの人に製品を届けることができる。決して特別ではない素材に、新たな価値を創出する手法も新しいと感じた。

柳原照弘

世の中には紙を折って作るプロダクトはすでにあるので、1次審査でこの作品を見た時は少し軽い気持ちでとらえていた。ところが実際にこれを組み立ててみると、よくこの形を考えられたなと、作品のすごさがよく分かった。強度もあってソリッドなシェイプ、裏側もきれいで、あらゆる面で“しっかり感”があり、色々なものに展開していける可能性を感じた。

渡邉良重

実際に組み立ててみて、とてもよく考えられていることが分かった。ぜひ商品化したいし、デスクトップオーガナイザー以外の広がりも一緒に考えていきたい。

黒田英邦

優秀賞

質感認識する鉛筆
Soh YunPing

作品名

質感認識する鉛筆

作者

Soh YunPing

作者コメント

色の濃淡などの特徴により人間が本能的に物の性質を捉えることを利用した鉛筆。 芯の硬度や濃度を、光沢や黒の濃淡で軸の色や形状に反映することで、感覚的に鉛筆を使う事を楽しめます。手で感じ、目で観察することで誰でもその物の個性を把握できるという提案です。

審査員講評

コンセプチュアルな提案が個人的に好み。テーマにも合致しており、1次審査から注目していた。使っていくうちにフィットしてくる感覚が持てる鉛筆なのかもしれない。手書きする人にとっては楽しいプロダクトだと思う。

植原亮輔

グランプリの次に評価した作品。コンセプチュアルで、これまでの鉛筆に対する認識を変えてくれる。プロダクト自体がメッセージを語っているところにも共感した。伸びしろがあるので、コクヨとの開発を通して発展していきそうだ。

田根剛

本当に繊細な変化だし、商品化のハードルも高そうなので、最初は難しいと思っていた。でも審査するうちに使ってみたいとじわじわ思い始めた。芯の硬さや濃淡に対する意識が変わっていく感じを体験してみたい。

渡邉良重

鉛筆の提案はよくあるが、芯の硬さ、濃さ、握り方の3つを掛け合わせているところが良い。16種類を作るのはかなり大変だが、もしも実現できたら感覚に訴えかけてくるような体験を提供できるのではないか。

黒田英邦

コドモノギス
山浦晃司

作品名

コドモノギス

作者

山浦晃司

作者コメント

工作したり測ったりする上で欠かせないノギス。 既存のノギスは工具としての印象が強く、子供は元より専門的な領域の人以外は触れる機会がほとんどありません。 コドモノギスはノギスに備わる4つの機能を分解しそれぞれを単機能にした子供向けの“文具”です。 円や球を学ぶ延長線でノギスを使用することで、身の回りのモノだけでなく道具自体に興味を持ち、“測る”という行為をより楽しく学ぶことが出来ます。

審査員講評

測るという行為が学ぶ意欲をかき立てるというコンセプトにリアリティがあった。さらにデザインのディテールやカラーリングも含めてかわいらしさの完成度が高く、使わなくてもそばに置いておきたいような表現になっている。

渡邉良重

この状況だからこそ生まれた新しい視点であり、測るという行為そのものにフォーカスすることで新しいものを作ることができた。機能を追求するのとは異なるベクトルでプロダクトを完成させた点を評価した。

柳原照弘

1次審査ではピンとこなかったが、円周など図形を学ぶ学年を対象にしていることを知って腑に落ちた。デジタル世代の子どもたちが世界を数値化する段階の時に、手で触れたり試したりする機会を提供する意味やおもしろさが見えた。

田根剛

造形は美しいが、ぱっと見てどう使うのか分からない。もっと対象年齢を低くして、測るという概念を知らなくても遊べるような方向性もあり得たかもしれない。ノギスの要素を分解してうまく設計しているが、逆にノギスにこだわらない発想も加わればなおよかった。

川村真司

学びに寄り添うマイボトル
松浦泰明

作品名

学びに寄り添うマイボトル

作者

松浦泰明

作者コメント

マイボトルを使う人が増えています。環境への配慮に加え、昨今は感染予防の観点でこまめな水分補給が推奨されており、勉強や仕事の最中も机の上にマイボトルを置くことが普通になりました。本提案では、マイボトルを文具の一部として捉え、最適なかたちを追求しました。倒れず転がらず使いやすい、これからの学びのお供にぴったりな新しいスタンダードです。

審査員講評

いい意味でつまらないというか、透明な存在になり得るところを評価した。一見すると非常にミニマルなデザインの変化だが、それによって暮らしに寄り添いやすくなるという提案が完成度高く実現できている。

川村真司

一次審査の時には普通でつまらないと思った。ところが最終審査のプレゼンを聞いて、普通なんだけれど、普段気づかないところまで細かくデザインしていることが分かり、そのリアリティを評価した。

植原亮輔

水筒を文房具として捉えた視点が新鮮だった。プレゼンやプロトタイプの完成度が高かったからこそ、文房具メーカーのコクヨならではのオリジナリティを引き出すことにもう少し挑戦してほしかった。

田根剛

コンセプトが分かりやすく、マーケティングの観点からも評価した。実際にコクヨが商品開発する場合、特にボトルの内側をどうやって作るか、既にある製品との差別化を含めて検討する必要がありそうだ。

黒田英邦

審査員総評
(※審査員の肩書は審査当時のものを掲載しております)

植原 亮輔
植原 亮輔

植原 亮輔

KIGI代表/アートディレクター・クリエイティブディレクター

毎年コクヨデザインアワードのレベルが上がり、ここ数年は評価の対象がモノからコトへと変化していた。2020年の世界的な変化を受けて、今一度、原点に戻ってプロダクトの価値を見つめなおしてみてはどうかという話から今回のテーマ「POST-NORMAL」が決まり、その結果、リアリティのあるおもしろいプロダクトのアイデアがたくさん集まった。審査をしながら手応えを感じたし、納得のいく審査ができた。

川村 真司
川村 真司

川村真司

Whatever/チーフクリエイティブオフィサー

「POST-NORMAL」に対して、コロナ対策やソーシャルディスタンスにまつわる提案に偏るのではないかと心配したが、多くの方がちゃんと今ある日常の先を見据えた企画を考えてくれた。「プロダクトにこだわってほしい」と訴えてきたのでデザインの強さを持った作品が集まり、特にファイナリストは1次審査から最終審査へのジャンプが大きく、審査をしていて非常に驚かされた。海外のデザイナーがグランプリを受賞し、日本とは異なる文脈から生まれた提案がアワードに新鮮な風をもたらした。

田根 剛
田根 剛

田根 剛

Atelier Tsuyoshi Tane Architects 代表/建築家

コクヨデザインアワードは、応募者、審査員、コクヨという3者のコラボレーションによるクリエイティブなコンペだ。今回のテーマは、パンデミックを踏まえて次なる日常をどう考えて生きていくか、デザイナーとしてそれをどう表現してくれるかを期待した。ポストノーマルという「コト」の問いに対して「モノ」で回答してくれたデザインコンペらしいコンペだった。多くの人に広がるプロダクトを生み出すデザイナーとしての多様な資質に触れることができ、とても意義深く楽しかった。

柳原 照弘
柳原 照弘

柳原 照弘

デザイナー

「POST-NORMAL」は難しいテーマだったと思うが、「普通とは何か」という根源的なものを見直し、未来の日常にとって本当に必要なものとは何かを考えるいい機会になった。応募者それぞれがテーマの内容を汲み取ってオリジナリティのある発想とデザインを提供してくれたので、とても発展的なコンペになったのではないか。グランプリも優秀賞もコクヨデザインアワードが掲げる未来を想起させる作品だ。受賞しなかった作品もプロダクトデザインの提案として優れた点が多くあり、総じてレベルの高い内容だった。

渡邉 良重
渡邉 良重

渡邉 良重

KIGI/アートディレクター・デザイナー

これまで6回審査してきた中で、今回が最も強く「プロダクトを作ってください」とお願いした。ファイナリストは粒ぞろいで、ハッとするような新しい視点を与えてくれた。作品を見て「自分でも考えられる」と思った人がいるかもしれないが、実際にはなかなか気づけない。そういうものが世の中にはたくさんある。審査をしながら、改めてコクヨデザインアワードは色々な人が参加できる可能性があり、多くの人が色々なことに注意深く目を向ける機会になっていると感じた。

黒田 英邦
黒田 英邦

黒田 英邦

コクヨ株式会社 代表取締役社長

「POST-NORMAL」に対する応募作品を通じて、先行きが不透明で困難な時期であってもチャレンジし続けることが重要だと改めて気づかされ、勇気づけられた。真剣に課題に向き合い新しいことを考える機会を作ることが、主催者のミッションだと考えている。海外作品がグランプリを受賞したことや、すばらしい作品が多くあった点にも喜びを感じている。今年、コクヨは長期ビジョン「be Unique.」を掲げ、創造性を刺激し続ける会社になることを宣言した。このアワードでもより多くの人に参加してもらえるよう盛り上げていきたい。

最終審査/受賞作品発表/トークショー

レポートムービー

最終審査

10組のファイナリスト達は、今回のテーマ『POST-NORMAL』に向き合い、熱い想いを込めたプレゼンテーションを行いました。
審査員はそれに真剣に向き合い、テーマの解釈、プロダクトデザインの完成度、商品化の可能性を視野に入れた慎重な審議を行いました。

受賞作品発表/トークショー

見事、コクヨデザインアワード2021のグランプリに輝いたのは『RAE』。
今年も新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、最終審査・審査員トークショーは無観客で行い、インターネットでライブ配信されました。
近年、コクヨデザインアワードのレベルが高まるにつれて、モノよりもコトのデザインをした作品が数多く寄せられるようになり、アイデアやコンセプトだけではなく、形や素材を含めたプロダクトデザインのコンペティションとしての原点に立ち返ることになりました。