コクヨのサステナビリティ トップメッセージ

CEO Message 中期経営計画の着実な実行を通じて、
事業ポートフォリオの変革を積極的に進め、
事業領域の拡大を加速させていきます。

代表執行役社長 黒田 英邦

「モノからコト」への転換と海外展開を促進

当社では、2021年に「長期ビジョン CCC2030(以下、CCC2030)」を発表し、新たに定めた「森林経営モデル」への転換を図っています。この中では、企業理念を刷新するとともに、企業グループとしての強みを再認識した上で、2030年に売上高5,000億円を目標として掲げました。さらに、同年に「第3次中期経営計画Field Expansion 2024(以下、FE2024)」を発表し、2030年の売上高目標を踏まえつつ、2024年の売上高3,600億円、営業利益率7.6%に向けて、年7%の売上成長率による事業領域の拡大に取り組んでいるところです。
「FE2024」の進捗状況については、おおむね順調と認識しています。コロナ禍が続いた中で市場の動向が不透明のまま推移したことから、2022年度の売上高については対前年新収益認識基準を適用した数値と比較して増収となり、営業利益は減益、経常利益は増益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益については過去最高となりました。また、2022年度は、「CCC2030」で掲げた「森林経営モデル」や「be Unique.」を理念とする、社会的に多様性を重んじる企業集団への転換については、順調に進んでいると考えており、事業ポートフォリオの変革に向けた体制にシフトするための準備を整えることができました。
2023年度は、「FE2024」のゴール達成に向けて、「モノからコト」への事業モデルの変革と海外展開を促進していくことを最重要テーマと位置付けて取り組みます。
セグメント別でみると、ワークスタイル領域における日本ファニチャー事業では、新たなサービス事業への参画を進めるとともに、オフィスBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業への取り組みを加速させます。コロナ禍をきっかけに社会でハイブリッドワークが浸透する中で、オフィスのリニューアル需要やオフィス構築後の需要を獲得することができると考えます。また、海外市場では、2022年に買収した香港のオフィス家具メーカー「HNI Hong Kong Limited(現社名 Kokuyo Hong Kong Limited)(以下、Kokuyo Hong Kong)」の連結子会社化を通じて、中国市場を中心とした事業拡大を図っていきます。従来、海外事業は販売拠点のみの展開であったのに対して、Kokuyo Hong Kongの製造・調達能力を加えたことで、中国をはじめ、さらにはASEANおよび豪州を視野に入れた事業展開が可能になったと考えています。また、ワークスタイル領域におけるビジネスサプライ流通事業については、コクヨの通販「カウネット」におけるデジタルマーケティングを強化することで、コクヨグループのメーカーとしての能力を活かしながらEC需要を取り込んでいく考えです。
一方、ライフタイル領域におけるステーショナリー事業においては「世界一のステーショナリーブランド」になることを掲げ、海外展開を促進していきます。その最初のステップとして中国で成長著しい「女子文具」をアジアで展開していくことで、まずは「アジアナンバー1のステーショナリーブランド」を目指していきます。

CCC2030達成に向けた事業創出と戦略投資

「CCC2030」の進捗状況につきましては、前述の通り、コロナ禍などの影響が生じているものの、最終年度の2030年における売上高5,000億円の達成に向けて、「持続的に成長していける事業ポートフォリオへのシフト」を重点課題として、計画を着実に進めていきます。
「FE2024」に象徴される「モノからコト」への事業モデルの変革を推進することをはじめ、海外事業の拡大とともに、社会課題解決をシーズとして捉えた事業ポートフォリオへ進化していくことが課題です。社会においてワーク・ライフスタイルが大きく変化している中で、コクヨとして新たな事業開発テーマをいくつ創出できるかがビジョン達成の成功の鍵として認識し、経営者として注力していきます。
戦略投資については、M&Aに加え、スタートアップ連携も加速していきたいと考えています。具体的には、社会課題の解決につながるスタートアップ等とのパートナーシップ、コラボレーションを通じて、社会課題解決につながる事業創出が重要と考え、CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)をコクヨ自身が運営していくことを検討しています。
また、事業ポートフォリオ再構築に向けては事業を支えるための人材や組織を開発・運営していくことが不可欠です。この点、既存事業に対する組織変革の挑戦は順調に進められている一方、新規事業や海外展開に対応した人材育成や組織づくりはまだ緒に就いたばかりだと認識しています。「FE2024」では、事業領域の拡張と、事業の具体化と併せ、新たな事業ポートフォリオを支える人材や組織の開発、パートナーの探索を通じてコクヨグループの新しい風土を作っていきます。

事業領域の再構築と「WORK & LIFE STYLE Company」への移行

事業領域の再構築に至った背景をお話しします。「CCC2030」の策定にあたっては、社会の変化が加速し、コクヨを取り巻く事業環境に大きな変化が生じている中で、人々の生活や価値観も急速に変わっていると考えました。当然ながら、コクヨの従業員のモチベーションや働き方も変わってきています。ところが、企業としてのコクヨはどうかというと、その変化を先取りするどころか、追随すらできていないのではないか、という危機意識があり、この危機意識こそが「CCC2030」策定の出発点となりました。
従来の事業領域はB to Bの流通基盤に立つ、いわば「一本杉モデル」でした。しかし、ワークスタイルやライフスタイルが多様になる中、お客様のニーズも多様化しており、それらに紐づく社会課題の解決を同時に達成していくには「一本杉モデル」では太刀打ちできず、お客様へ価値が届けられないと考え、ワークとライフの領域における複数の課題を解決できる事業構造として「森林経営モデル」へシフトすべきと考えました。そのため、コクヨは事業領域の拡大と再構築に挑戦する必要があり、挑戦の先には持続的で豊かな社会へより貢献できると考えました。
また、挑戦の先にある持続的で豊かな社会を自分事で捉えるために、コクヨが実現したい持続的な社会を、誰もが活き活きと働き、暮らし、つながりあう「自律協働社会」としました。この社会を実現していくことがコクヨの使命や役割であると再認識し、パーパスを「ワクワクする未来のワークとライフをヨコクする。」と定め、「WORK & LIFE STYLE Company」を目指すことを決めました。「働く」「学ぶ・暮らす」の領域で、文具や家具だけにとらわれない、豊かな生き方を創造する企業へと進むことが、社会価値と経済価値の両立につながると考えます。
こうした発想のもと、事業領域をワークスタイル領域とライフスタイル領域の2つに分け、「森林経営モデル」への転換に注力するに至りました。
事業領域の変革による効果は出始めています。目に見える変化の1つとして、従業員の視野が広くなり、事業成長の見え方や捉え方が変わりました。ワークスタイル領域についていえば、コロナ禍で変化したワークスタイルだけでなく長期的な変化を捉えた事業戦略の策定が進みました。また、プロダクトアウトではなくマーケットインの視点で市場を捉えなおすことで、日本ファニチャー事業では、オフィス家具の提供にとどまらず、空間構築、ひいては効率的な企業運営を実現するサービスへと、事業領域を拡大して捉えることができました。そして、海外ファニチャー事業においては、ビジネスシーンがハイブリッドワークへと変化する中で、次の時代におけるオフィスの価値とは何かをイチから提案するという、コクヨらしさのあるグローバル戦略の検証が進んでいます。Kokuyo Hong Kongの買収はそれら戦略が実行された1つの証左といえます。
他方、ステーショナリーについても変化が見え始めています。ステーショナリー事業では従来、「どうやって製品を売るか」が発想の中心であったのが、ライフスタイル領域と捉えなおし、日本だけでなく海外市場を視野に入れることで、「ジャパニーズ・ステーショナリーとしての価値をグローバルに広げていこう」という戦略方針が現場から立ち上がりました。その結果、2023年1月に羽田国際空港第3ターミナル駅直結の新商業施設「羽田エアポートガーデン」にて、コクヨの直営店「KOKUYODOORS(コクヨドアーズ)」をオープンしました。店名には、日本を訪れた旅行客に対して、「コクヨの文具、ひいては日本の文具の世界への入り口、興味を持つきっかけとなる場所でありたい」という願いを込めています。
また、ステーショナリー事業においては2023年の組織体制変革にて、私自身が主導する立場となりました。日本の文具を世界へ展開し、「世界一のステーショナリーブランド」を確立していくにあたり、自分自身が営業マンとなり、世界に日本文具の良さを広めていくことが重要と考えたためです。
また、グローバルステーショナリー(GST)事業本部という名称に変更し、より海外を意識する組織にしました。GSTトップの立場としては、日本市場は縮小している状況にある一方で、グローバルで見ると付加価値の高い商品が受け入れられるという兆しが出ている点に着目しています。これを事業機会と捉え、日本と海外のリソースを総合して当事業を拡大していくことが私の責務だと認識しています。

パーパスの具現化の兆し

2022年のパーパス「ワクワクする未来のワークとライフをヨコクする。」の制定に伴い、マテリアリティも刷新することで、サステナブル経営の実現に向けて新たに歩み始めました。
事業領域をワークとライフの再構築し、「CCC2030」並びに「FE2024」の達成に向けた戦略課題の特定と組織変更が行えたことが2022年度の成果の1つと考えますが、サステナブル経営の文脈で言えば、パーパスを具現化するための事業テーマや組織が明確になってきたと捉えることができます。コクヨは数多くの商品やサービスを提供する会社でありますが、ワークやライフというスタイルの変化に着目し、新しい生活様式を提案していくことがコクヨの得意領域であり、裏を返せばコクヨの社会的な存在価値であると考えます。
前述の実験店舗「KOKUYODOORS」では、海外から来られたお客様が、日本のステーショナリーを手に取って、「新しい勉強の仕方や生活の様式があるのか」と感動してもらえたり、驚いていただいたり、といった体験を生み出している点を実感しました。まさに「ワクワクする未来のワークとライフをヨコクする。」の先のコトが起こりつつあることを感じます。

「ヨコク人材」の育成を通じて、「未来をヨコクする会社」を目指す

コクヨのパーパスに基づき、今後、新たな価値を創出していく上で人的資本経営の追求、組織基盤の強化が重要なのは言うまでもありません。パーパスを具現化していく「ヨコク人材」の育成が経営トップの重要な使命と認識しています。
近年、企業経営の場では多様性を受け入れる事業運営や組織運営が注目されており、コクヨとしてもこれに向けて推進しているところです。それとともに、コクヨらしさの追求という点でいえば、組織内の風通しをよりよくして、部門ごとのサイロ化を解消していくことが重要と考えます。これにより、従業員自身が率先して社会課題を解決していく、顧客ニーズに応えていく、というモチベーションとリーダーシップの醸成につながっていきます。こうした変化をいかに事業成長につなげていくかが、経営者としての重要なテーマであり、コクヨにおける組織運営の方針と捉えています。
コクヨは数多くの商品を取り扱ってきたことを背景に、元々、権限移譲は進んできており、組織の風通しが良いことが強みとなっています。こうした企業風土を活かして、従業員自らが当事者意識を持って、自律的リーダーシップを発揮することにより、結果的にお客様ニーズへの対応や課題の解決、商品付加価値の向上につながっていくと考えます。今後は、単なる売上や利益の追求にとどまらず、顧客課題への対応と社会課題を解決するという視点で、経営と従業員が一緒になってチャレンジしていくという組織運営が、これからのコクヨを築いていくと考えています。
以上の点を一言でまとめると、コクヨは「未来をヨコクする会社になる」ということです。中でも若い世代の従業員は、自らが社会課題解決にどのように関わるべきかを重視しています。コクヨがどのような社会課題に取り組むか、その社会課題に従業員がどう向き合うことができるか、その結果、未来をヨコクする事業や商品の開発ができるかが、組織運営の要諦であります。
今後、社長を含めて経営陣は中長期的な視点を持つとともに、顧客の目の前にある課題だけでなく、それをさかのぼって発生原因である社会課題まで目を向けることが求められています。また、価値創造ストーリーにある通り、アウトカムやソーシャルインパクトも意識した未来をヨコクする事業展開をしなければなりません。そのためにも、未来をヨコクする人材を育成していくことが重要であり、如何にヨコク人材を創出できるかが人的資本面でのKGI(重要目標達成指標)と考えています。

ソーシャルインパクトを意識した資本分配の実現

最後に、成長に向けた資本分配(キャピタル・アロケーション)について申し上げます。財務資本については、短期と長期のバランスを重視した配分が重要であるという前提のもと、CCC2030に向けた積極的な成長投資を行っていきます。前述したように、M&Aやスタートアップ投資を継続的に検討していくとともに、従業員および株主の皆様に対する還元も当然のごとく重視して、ステークホルダーの中に一人でも多くのファンを増やしていくことが経営トップの願いです。
一方、非財務資本については、パーパスを具現化していく人的資本である「ヨコク人材」の充実が最も重要です。ダイバーシティやインクルーシブネスのある組織を創っていくために、人材の多様性をさらに広げ、新たな事業ポートフォリオを支える組織を強化していきます。この中ではDXを通じた働き方改革も重要です。
加えて、我々が働く社内も世の中の一部であり、イノベーティブな働き方、活性化した組織を世の中に先駆けて創ることも重要と考えています。そのため、社内のダイバーシティ、新たなワーク・ライフスタイルを自分たちで取り組むことこそが、コクヨらしいマーケティングになると思っています。そして、そこで培ったノウハウを基に、お客様にワークとライフを提案していくことにより、一人でも多くのコクヨファンを生み出すことが、社会関係資本の増幅につながると考えます。
知的資本については、クリエイティブ、中でもデザイン力を強化していきます。ワークやライフスタイルを提案していく上では、感性的な訴求が重要になるためです。お客様の生活や働き方を変えていくための、直接的な能力を伸ばしていきたいと考えます。
以上、事業ポートフォリオの変革と持続的な成長に向けた課題や取り組みについて述べさせていただきました。今後、ステークホルダーの皆様との対話を通じて、「森林経営モデル」の進化に注力していきます。その中では、文房具および家具の事業で培った信頼を踏まえて、未来のワークとライフをヨコクするコクヨに対する信頼の醸成に努めていきます。今後とも皆様のご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

CEO 黒田英邦
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