KOKUYO DESIGN AWARD 2016

2016テーマ:「HOW TO LIVE」
世界44カ国から集まった1,307点(国内:929点、海外:378点)の作品の中から
一次審査を通過した10点を対象とし、11月30日に最終審査を開催。
グランプリ1点と優秀賞3点が決定しました。

グランプリ

グランプリ
作品名 素材としての文房具
作者  AATISMO(中森大樹/海老塚啓太)  

作者コメント

鉛筆、定規、消しゴムを長い棒状にして、ホームセンターにある木材や金属の部材のようにしました。好きな長さに切って使ったり、新しい道具の素材にもなります。
現在、私たちのまわりには様々な文房具が溢れていますが、元々は枝で地面に模様を刻むような素朴なものだったはずです。その後素材に手が加えられ道具が作られてきましたが、その道具自体をもう一度素材としてみることで、新しい物と人の関係が作れるのではないでしょうか。
あなたは素材としての文房具をどう使いますか?

AATISMO(中森大樹/海老塚啓太)
審査員講評

コンセプトや道具に対する考察が鋭く、かっこいい。素材をとらえ直す風潮があると思うが、それがうまくプロダクトに落とし込まれ、モノがあふれる社会に対する回答にもなっている。審査中には製造方法に関する疑問があったが、それを凌ぐほど内容がよかった。

佐藤 可士和

完成品ではなく、加工して使う文房具という飛び抜けたメッセージが斬新だった。丸三角四角、鉛筆消しゴム定規、といった基本を押さえながら、その先に何があるか。その問いかけ自体が作品として成立している。

鈴木 康広

「HOW TO LIVE」というテーマを考えやすく鮮明化し、ユーザーに対して「どう使いますか」と投げかけている。使う人の数だけ1,000通り、1万通りにも答えが拡張していく。ある意味メディア的な、波及能力のある作品。

田川 欣哉

世の中なんでも便利になっていく反面、こうした一見不便なものは想像力が湧く。文房具としては成立し辛いかもしれないが、現代のモノづくりとは真逆な提案が、モノを生み出そうとしている人々に何か“気づき”を与えてくれる結果になればと思う。

植原 亮輔

こうきたか!という驚きが最初にあった。すごく売れる、というものではないかもしれないが、発想と視点の持って行き方が群を抜いている。どうやって切る?どうやって製造する?といった疑問を超えて、とにかく考え方の新しさがグランプリにふさわしい。

渡邉 良重

大変難しいテーマの問いかけに対して、もっともシャープな回答を示してこられた。これからこの作品の商品化に取り組む中で、私たち自身にとっても学びになりそうなので期待している。

KOKUYO

優秀賞

優秀賞
阿部 泰成作品名
どうぐのきねんび


作者
阿部 泰成

作者コメント

モノは人に使われることで、
生活のための「どうぐ」となる。
「どうぐのきねんび」は、モノが「どうぐ」となった日を
記念日としてスタンプで記録します。
それはただの日付けではなく、
なんのためにそれを手に取り、使ったのかという物語の記録です。
「どうぐ」に対し今までなかった感情や所有感を生み出す
その人だけが与えられる価値でもあります。
モノとの関わり方を考えるきっかけを作り出す
新しい習慣の提案です。

審査員講評

行為をデザインできている。昔の写真は日付が入っていて後になって見るといいものだ。使い始めた日やそれを気に入った日など、「道具にも記念日があっていい」というメッセージに共感はできる。

佐藤 可士和

写真には昔の事物そのものが写っているので、日付がなくとも容易に過去の記憶とつながる。モノは見た目に変化がない場合、過去を現在につなぐことが難しい。しかし、物体として存在しているものにスタンプを押すことで写真以上の効果を発揮するかもしれない。実際に時が経ったとき、どんな感情が生まれるか、将来にならなければわからない未知数な作品でもある。

鈴木 康広

「どうぐのきねんび」というブランドを押す行為がどうも焼印のように主張しすぎる可能性がある。スタンプを記憶のトリガーにしたいという発想なら、シンプルに日付の数字だけでいいかもしれない。最初のアイデアからの引き算を、もう少し考えられるとよかった。

田川 欣哉

自分のスマホケースに押してみたら、なんだか愛着が湧いてきた。ちょっとオリジナリティがあって、“所有している感”が出てくるのだと思う。印字のデザインに、もっと色々なバリエーションがあってもいい。

植原 亮輔

私自身、好きな服は20年、30年と着ているので、日付が押してあると後々うれしいかなと思う。時を経て威力を発揮する作品。今の印字デザインだと、人によって押していいものと押せないものがある気がする。押したほうが素敵になる印字デザインを考えてほしい。

渡邉 良重

一次審査の時からメッセージ性を発揮していた作品。インクと各素材との相性など商品化のハードルは高いが、人とモノの関係性を見つめる視点はまさに「HOW TO LIVE」のテーマとして求めていたもの。

KOKUYO


優秀賞
南 和宏作品名
マンガムテープ


作者
南 和宏

作者コメント

おくりものの背景には必ず、おくり手の気持ちや、ストーリーが存在します。
一人暮らしの息子に、実家で栽培した野菜をおくる時。
遠く離れて暮らす彼女に、プレゼントをおくる時。
これは、そんなおくり手の気持ちや、ストーリーも一緒におくることができるガムテープです。
マンガのコマや吹き出し、効果線が印刷されており、絵や文字で伝えたい気持ちを描くことができます。
そんな、あなただけの特別なおくりものを、大切な人に届けてみませんか。

審査員講評

気持ちを送ることをデザインしている。この作品を含めて今回の受賞作はモノのデザインより、その先にあるメッセージが評価されている。余計なことをしなくていい。視点さえきちんとあれば商品として成立する。今はそういう時代なのだと思う。

佐藤 可士和

送る(贈る)という行為の隙間に、絵と言葉を使って人々に気持ちを表現させる、想像力を発揮させる余白や楽しみをつくった作品。絵が苦手な人にも描いてみたいと思わせるようなコマ割りや吹き出しの配置など、この提案の真価はディテールにも関わってくると思う。

鈴木 康広

ユーザーを選ぶプロダクト。普通に商品化して販売するだけでなく、例えば物流会社と組んでノベルティのように展開するとおもしろいことが起きる気がする。大量輸送社会において、ビジネスとしての可能性も感じさせる作品。

田川 欣哉

一次審査で票を入れなかったが、最終審査で試作が出てきた時、使われるシーンが想像できて少しワクワクするような嬉しい気持ちになった。個人的にはマンガを描くより、一言言葉を添えるくらいでいいので人によるところはあるが、気持ちが伝わるいい作品。

植原 亮輔

純粋にほしいなと思った。吹き出しに一言何を書こうかと送る相手のことを考える時間がコミュニケーションにつながる素敵なアイデア。実際にこの作品を使ってご両親に贈り物をした具体例などを用いた提案は、使用時のイメージがし易く、良いプレゼンだった。

渡邉 良重

普通はダンボールで荷物を送るので、これまであまり包装にこだわれないことが多かった。ガムテープも頑丈で安ければいい、というところに「気持ちを伝える」という新しい切り口を見出してくれた。特に子どもたちは喜んでマンガを描くだろう。

KOKUYO

優秀賞
Kujira(石川菜々絵/前田耕平)作品名
ぴったりカット


作者
Kujira(石川菜々絵/前田耕平)

作者コメント

親指にぴったりはめて、自分の手元で感覚的にテープを切れるテープカッターです。
親指とテープカッターとが一体化することで、爪の延長にある刃先の切り心地を感じたり、使う場所を選ばず様々な種類のテープを切ることができます。
机上に置く従来のものと違い、テープを切る楽しさやテープを持ち替える手軽さが、人の動きに寄り添い、自由な暮らしを作り出します。
身につけて使うことで人と道具がぐっと身近になる新しいテープカッターです。

審査員講評

ファイナリストの中で唯一人の身体に装着する作品。ロボティクスやIoTなど、今後は人間と道具の関係において色々なことが起きてくる。これはシンプルでアナログなアイデアだが、人間が装着するプロダクトとして新しい可能性を示唆している。

佐藤 可士和

夢中になって切り心地を試し、知らずに間違えて逆向きで使っていたが、手で微調整することで十分カットできた。人が装着して初めて機能する、自立していない道具の醍醐味だと思った。そこに人間の身体と切り離せない道具としての根源を思い出す。進化するテクノロジーに明確な機能を預けていく時代に、本作は道具のあり方そのものを新鮮に問いかけている。

鈴木 康広

プロトタイプを使った瞬間「これは買いたい!」と思った。テープが心地よく切れる感触が親指に直接伝わってきて、まるで自分の指先が進化したかのような感動があった。ただネーミングやスタイリングが作品の良さを伝えきれておらず、ブラッシュアップが必要。

田川 欣哉

道具を身につけるという部分に特徴があるので、そのコンセプトでもう数点別のプロダクトと組み合わせて「身につける道具3点セット」のようなかたちで提案していたら、より面白く、インパクトある作品になったと思う。

植原 亮輔

カッターを身につけて切る、という新しい発想。セロテープの端を探すのが難しく、剥がしづらいという問題を解決するアイデアがセットになっていたらさらに素晴らしい提案だっただろう。

渡邉 良重

最終審査の模型には、「力を入れなくても切れる」とご好評をいただいているコクヨのテープカッター「カルカット」の刃を活用いただいた。従来のディスペンサータイプだと一つのテープしか使えないのに対し、この作品はさまざまなテープを使ってみたくなるような提案だ。

KOKUYO


審査員総評(※審査員の肩書は審査当時のものを掲載しております)

佐藤 可士和

SAMURAI代表/アートディレクター・クリエイティブディレクター


受賞作品は、モノの先をデザインしている。メーカーがモノだけつくっていればよい時代はとっくに終わっていて、本当の意味で生き方、暮らし方に真剣に向き合ったものでないと、消費者から評価されない。人とモノの関係性は大きく変化していて、モノはモノだけで完結せず、いかに人が関与する余白をデザインするか、エクスペリエンスを提供できるかが鍵となる。そういった時代を象徴するような作品が受賞を果たした。

鈴木 康広

アーティスト


受賞作品はある意味、デザインしていない作品ばかり。文房具としてのデザインに取り掛かる一歩手前に隠れた盲点を突く提案になっている。真面目にデザインを学んでいる人ほど難しかったかもしれない。視野を広く持ち、生活やものづくりの過程に起こる些細な出来事に「遊び」を見つけられた人ほどうまくいったように思う。ものの見方や生き方を変えるのは体験でしかない。「『HOW TO LIVE』について考えることが『HOW TO LIVE』そのものになった」という受賞者の言葉が印象に残った。

田川 欣哉

takram design engineering 代表/デザインエンジニア


「HOW TO LIVE」というテーマは、あなたは誰ですかと問いかけているようなもの。禅問答のようなテーマで、応募者は苦労するだろうと思ったが、上位に残る作品の醸し出す雰囲気は例年と異なり、取り組んだ意味があったように思う。テーマが深い分、プレゼンシートだけでは伝わりにくかった。プロトタイプと肉声でのプレゼンが揃って初めて作品の意図がきちんと伝わり、結果最終審査の満足度は例年よりも高いものとなった。

植原 亮輔

KIGI代表/アートディレクター・ クリエイティブディレクター


デザインは本来カテゴリーありきではなく、こうしたいという思いがあって生まれるもの。そういった意味で『HOW TO LIVE』は、ものづくりをする人たちにとって常に問いかけていなければならないテーマで、人々の生活を支えるコクヨが掲げたことには大きな意義がある。応募者へのアドバイスとして、プレゼンシートでの審査では、アイデアやメッセージが一目でわかるように簡潔に伝える広告的な視点を持つことも大事なのかもしれません。

渡邉 良重

KIGI/アートディレクター・ デザイナー


「HOW TO LIVE」という今回のテーマならではの作品が受賞作品になったと思う。今の時代、モノや情報があふれているが、私たちの時間はかぎられている。その中で何を自分で選択するか。流されるのではなく、自分にとって大事なもの、好きなものを見つけていきたい。受賞作品はそういった思いに寄り添うもの。これで終わることなく、これからも考えていきたいテーマだ。

黒田 章裕

コクヨ株式会社 代表取締役会長


昨今、働き方や学び方がダイナミックに変化しており、それらと生き方は今後いっそう強く結びついていくでしょう。こうした中、2015年のテーマ「美しい暮らし」をさらに広げ、日々の生活や生き方まで含めたデザインのアイデアを求めました。「HOW TO LIVE」という壮大な問いかけに対し、たくさんの新しい生き方や暮らし方を見据えた意欲的な作品を応募いただき、ありがとうございました。今後もコクヨデザインアワードは、皆さんと一緒に未来のために新しいことを考え、アウトプットできる機会として尽力してまいります。

最終審査/受賞作品発表/トークショー

レポートムービー



最終審査

10組のファイナリスト達は、今年のテーマ『HOW TO LIVE』に向き合い、熱い想いを込めたプレゼンテーションを行いました。
審査員はそれに真剣に向き合い、コンセプトメイキング、デザインの完成度、商品化の可能性を視野に入れた慎重な審議を行いました。




最終審査のようす

受賞作品発表

見事、2016年のグランプリに輝いたのは『素材としての文房具』。
ファイナリストの作品の模型は、会場に展示され、多くの来場者が熱心に見ていました。
会場では、過去の受賞作品も販売されました。

受賞作品発表のようす

トークショー

今年のテーマ『HOW TO LIVE』についての審査員の想いや、受賞作品の評価のポイントなどについて語っていただきました。
多方面でご活躍されている審査員ならではのトークに、会場は大いに盛り上がりました。

トークショーのようす