商品化された作品

泡の定規

〈2015 優秀賞〉

目盛りが泡で表現された定規です。
人工的な直線で構成される生活の道具に、有機的な泡を取り入れることで、
日々の暮らしの中に、自然の持つ美しさを手に入れることができます。

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作品から商品へ


「美しい暮らし」をテーマに作品を募集したコクヨデザインアワード2015。優秀賞を受賞した「Bubble Ruler」は、人工的な直線で構成される定規に、泡という自然の有機物を閉じ込めた作品です。使い手が日々の暮らしの中に自然の持つ美しさを手に入れられる、というコンセプト、そして作品そのものの美しさが高い評価を受けました。


定規に泡を注入することなどできるのだろうか・・作品模型を目にした誰もが最初に思う疑問です。作者の塚田圭さんからは、「これは泡ではありませんよ」との答えが。アクリルの板を切削して泡のように見せている、ということでした。


樹脂を削って繊細なデザインを実現している商品ということで、我々が思い起こしたのはテンプレートでした。製図用のテンプレートには実にさまざまな図形のバリエーションがあります。こうした多様なデザインを実現できているのであれば、泡の表現も可能ではないかと考えました。


予想通り実現は可能だったのですが、ハードルが二点ありました。一点は、先端が球状のルーターで削っていくのですが、デザインのデータをそのまま正確に再現できるものではない、ということ。データを参照しながら、ルーターの動き(左右方向および上下方向)に落とし込み、一つひとつ異なる泡の形状を調整していきました。


泡の定規

左)一つひとつ泡の形を確認しながら、ルーターの動きを入力。 右)ルーターでの切削の様子。

もう一点は、アクリルの貼り合わせ方法です。切削した泡にホコリなどが溜まって汚れてしまわないよう、二枚のアクリルを貼り合わせることで泡を内部に閉じ込めています。作品模型は貼り合わせではなく嵌合させていますが、外れてしまうリスクがあったため、商品化にあたっては貼り合わせる方法を検討しました。透明のアクリルのため、通常の接着剤ではどうしても接着剤が見えてしまったり、貼り合わせの際に気泡が入ってしまうトラブルがあったのですが、最終的には液晶パネルなどにも使用される非常に透明度が高いテープを使って貼り合わせ、テープの存在も全く感じさせない仕上がりを実現しています。


泡の定規

左)貼り合わせに使用したテープの存在は完全に消えている。 右)作者の塚田さんも一緒に工場へ出向いた。

泡の定規

側面のメモリ。

今回の商品化にあたり、仕様を追加した点があります。側面に1mm単位の目盛りを入れました。受賞当時の作品には、1cm単位で入れられた泡しかなく、定規としての機能がきちんと担保されていない曖昧さも含めて楽しんでほしい、という思いがありました。ただ、今回せっかくならたくさんの人に手にしていただきたく、少し実用性を付加するかたちで、ささやかに、世界観を壊さない程度にグレーの目盛りを入れています。


日々忙しさに追われる生活を送られている方も多いと思います。そんな毎日の中で、この「泡の定規」をささやかな癒しを与えてくれる存在として、皆さんのお近くに置いていただければ幸いです。