コクヨには、できるだけ多くの人にとって使いやすい製品を目指して開発された、
たくさんのユニバーサルデザイン製品があります。
人差し指と親指、中指で触れる先端部の「コンタクト・ポイント1」、そして人差し指と親指の間の付け根で本体を支える「コンタクト・ポイント2」。この「コンタクト・ポイント1」を「グリップ」といい、この形状や径が、書き心地を大きく左右するんですね。
それにもうひとつ。
全体の約4割の人が、書く文字の大きさによって筆記具を持つ位置を変えています。握り方も人によって大きく異なりますから、当然、そのひとの握りやすい場所も変わってきます。だから、グリップ部分はどの辺りを握っても同じホールド感が得られないといけない。さらに、グリップ径は10〜12mmの間が好まれているということも分かりました。
次に「コンタクト・ポイント2」、これは「軸」ですね。筆記するときの動作というのは、繊細な動きを繰り返すものです。そのとき大切なのがバランスの良さや、動きに無理なく付いていける密着感なんですね。
バランス感覚には、軸径や重心位置が密接に関係してきます。また、ペンでものを書くとき、手は筆記具の中央部を軸にして上下左右に回転を繰り返すわけなんですが、その際、常に手に触れている軸部分は、細身で密着性の高い形状が好まれる傾向があるんですね。
そんなに単純なものじゃないですよ(笑)。それにね、実際の軸径と「体感軸径」は違うんですね。体感軸径というのは、筆記動作をしているときに感じる軸径のことで、その値は筆記具を傾ければ傾けるほど大きくなるんです。
例えば、軸径が10mmの筆記具を30°傾けたとしますね。そうすると体感的には1.15倍、すなわち10×1.15=11.5mmとなるんです。
これは疲労感に影響しますからね。常に安定したバランスを保っていて、ふらつきを少なくすることが重要です。
もし仮に先端や末端に重心があるとすると、指にかかる負担が大きくなるし、疲労感は相当なものになるでしょう。結局、重心位置は筆記具の中心、つまりミッドウェイトが最も安定し、良い書き心地を生み出すことが分かりました。
2003年3月、「第47回応用物理学会」で発表しました。学会発表は研究の新規性を公に認めてもらうのに非常に有効なんです。だから大学の研究者だけじゃなく、メーカーの研究機関も多数参加しています。
とはいえ発表者には厳しい質問が飛んでくるのが常なので、内心ドキドキだったのですが、とても興味を持ってもらえたようで「次はこんなことを調べて欲しい」という要望までいただきました。
さらに、千葉工業大学工業デザイン学科教授・上野義雪さんに、出来上がった「フィットカーブ」の科学的分析を依頼したのですが、「手に与える負担が少なく、疲れにくい構造である」と高い評価をいただき、おかげで自信を持って世に出すことが出来たんです。