コクヨのマテリアリティ
-重点課題3-
気候危機への対応

コクヨのマテリアリティ 気候危機への対応

基本方針

コクヨグループで排出しているCO2の9割以上はScope3(サプライチェーン上の排出)で、自社の排出量を削減するだけでは社会の脱炭素化には貢献できません。
コクヨは生産、流通において、多くのパートナー様に支えられ成り立っている企業です。気候危機というテーマにおいても、原材料の見直しや配送方法の工夫など、サプライチェーン全体を通じて、生産・流通パートナー様と連携し社会の脱炭素化に貢献します。

重点テーマ 1 Well-Being
アウトカム 2030年チャレンジ目標 2024年コミット目標
KPI
多くのパートナーと共に、サプライチェーン全体の活動を通じて社会の脱炭素化に貢献する SBTに準拠した削減目標をパートナーと共に達成し、CO2排出量の削減に貢献 SBTに準拠した削減目標
目標設定と達成(今後設定)
CO2排出量の削減:2013年比
日本国内50%削減
CO2吸収:6,000t-CO2以上/年の吸収量に貢献する
2022年の実績 2023年の計画
  • CO2排出量:2013年比21.4%削減
    日本国内連結会社+コクヨKハート・ハートランド
  • CO2吸収量:4,698t-CO2
    2022年7月の結の森CO2吸収証書より
CO2排出量の推移
  • 2024年コミット目標である日本国内50%削減達成に向け、Scope1, 2において多くの割合をしめる、自社の電力利用によって発生するCO2の削減に取り組みます。2022年に実質CO2フリーの電力に切り替えた三重工場に続き、日本国内の工場・オフィスの電力由来のCO2削減を進めます。

2024年削減目標に向けた手段の検討

サプライチェーンを通じた脱炭素化への貢献の第一歩として、自社が排出しているCO2の削減に向けた検討を開始。自社が排出しているCO2(Scope1-2)の多くは電力の利用を由来とするため、CO2排出量の多い生産拠点の設備担当者、電力やファシリティを管理する総務、事業部門の企画担当者による組織横断のタスクフォースを組成し、電力由来のCO2削減の手段を検討しました。
検討を通じて、コクヨが掲げる2024年目標達成に向けては、短期間で大規模な削減が必要なため、現在電力会社を通じて調達している電力の実質CO2フリー化を方針として決めました。
2022年にコクヨ三重工場を実質CO2フリー電力としたことに続き、日本国内の主要拠点の電力を実質CO2フリーとすることで、2024年コミット目標である日本国内のCO2排出量50%削減(2013年比)の達成を目指します。

三重工場の電力を実質CO2フリー化

2024年のCO2排出量50%削減目標達成に向けた取り組みの第一歩として、2022年11月にコクヨ三重工場の電力を実質CO2フリーの電力に切り替えました。コクヨ三重工場は、オフィス家具を製造しているファニチャー事業における基幹工場です。この取り組みによって、オフィス家具を製造する三重工場で利用される電力のCO2排出係数はゼロとなりました。

コクヨ三重工場(名張市の八幡工業団地内)

コクヨ三重工場(名張市の八幡工業団地内)

1993年の操業開始時から環境活動に取り組み、2022年度「全国みどりの工場大賞」におきまして、「日本緑化センター会長賞」を受賞しました。緑地率増加、花や樹木の種類、開花時期、葉の色を考慮した植栽、さらにはCO2削減やリサイクル等の環境問題、周辺地域への社会貢献活動にも積極的に関わっていることが評価されました。

Scope1, 2(自社の排出量)

コクヨグループ31社(海外含む)のCO2排出量実績

2018年から石見紙工業のデータ収集も開始し、海外を含むコクヨグループ31社(※1)全体での2022年のCO2排出量は38,792トン(※2)となり、2021年と比較し2,542トンの増加となりました。内訳として、電力会社の排出係数の変更により約763トンの増加、インドにおける学校再開に伴う学生向け文具販売の需要回復による揺り戻し等により約1,779トンの増加となりました。

ESGデータ集(温暖化防止対策)参照 日本の電力のCO2排出係数は地球温暖化対策の推進に関する法律に基づく係数(電気事業者ごとの令和2年度実績及び令和3年度実績による調整後排出係数)、海外の電力のCO2排出係数は国際エネルギー機関(IEA)のEmission factors 2022に掲載の各国ごとの係数を採用。
係数変更による差異は2000年の全電源平均(0.378kg-CO2/kWh)で計算した排出量との差です。

日本国内のCO2削減

2022年の日本国内の連結対象会社11社(※1)、コクヨKハート、ハートランドのCO2排出量は、24,101トンでした。前年から2トン減少(前年比0.0%)となりました。増減量のうち、21トンの減少は排出係数(※2)の変動によるものでした。試算ではありますが、運用改善で405トン削減、設備改善で63トン削減しましたが、生産・統廃合で487トン増加したため、19トンの増加となりました。部門別の状況は以下の通りです。

コクヨ、コクヨ工業滋賀、コクヨMVP、コクヨロジテム、コクヨサプライロジスティクス、コクヨマーケティング、カウネット、アクタス、コクヨファイナンス、コクヨアンドパートナーズ、LmDインターナショナル 電力のCO2排出係数は地球温暖化対策の推進に関する法律に基づく係数(電気事業者ごとの令和2年度実績及び令和3年度実績による調整後排出係数)を採用

オフィスの取り組み(日本国内)

前年比23トンの増加(排出係数の影響を除く増加量は20トン)。内訳として、東京品川オフィスの改装中フロアのオープンや営業活動の活発化により前年に比べて95トンの増加、リモートワークなどにより54トン削減、空調機の更新やLED照明化などで21トン削減。

大阪オフィス新館に設置されている太陽光パネル

大阪オフィス新館に設置されている太陽光パネル

工場の取り組み(日本国内)

前年比26トンの増加(排出係数の影響を除く増加量は4トン)。内訳として、生産増ならびに生産の一部内製化により前年に比べ302トンの増加、製品型替え時間の短縮や生産設備の運用ルールの徹底などの運用改善で256トン削減、コンプレッサー室のエアー配管の効率化や照明のLED化など省エネ設備の導入により42トン削減。

三重工場の電力実質CO2フリー化は除く

滋賀工場に設置されている太陽光パネル

滋賀工場に設置されている太陽光パネル

物流部門(保管・出荷)の取り組み(日本国内)

前年比51トンの削減(排出係数の影響を除く削減量は5トン)。内訳として、荷扱い物量の増加や物流拠点の統合により90トン増加、省エネ活動推進による運用改善や配送センターの照明の適正照度の見直しで95トン削減。

首都圏IDCに設置されているハイブリッド街灯

首都圏IDCに設置されているハイブリッド街灯

Scope3の算定対象を拡大

企業が間接的に排出するサプライチェーンでの温室効果ガス排出量としてScope3(製造、輸送、製品の使用・廃棄など)を管理し、対外的に開示する動きが強まっていることを受け、コクヨグループでも取り組みを行っています。
サプライチェーンを通じた脱炭素化に向け、2022年からはScope3の算定範囲を見直しました。従来の自社ブランド製品に加え、連結対象の活動の全てを新たに算定対象とすることで、サプライチェーンを通じた事業活動の影響を把握することに取り組みました。
それにより、2022年のサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量は2021年の約2.5倍となる1,245,425トンでした。そのうちScope3が全体の約97%を占め、うち「カテゴリ1:購入した製品・サービス」が80.6%を占めています。
今後、コクヨは事業活動においてサプライチェーン上で発生するCO2排出の削減に取り組みます。

開示情報の信頼性確保のため、ビューローベリタスジャパンによる第三者検証(独立保証報告書)を受けました。

独立保証証明書

Scope3 CO2排出量のカテゴリ別の表はこちら

TCFDへの賛同と情報開示

TCFD

ガバナンス

コクヨは、2022年にTCFDへ賛同し気候変動を重要な経営課題の一つとして認識し、取締役による監督のもと、「サステナブル経営会議」によって、気候変動に関する課題の特定、経営判断、業務執行を行う体制を構築しています。年2回取締役がサステナブル委員会より報告を受けることで、気候変動を含むサステナビリティに関する経営課題への取り組みについて、取締役の監督が適切に図られるよう体制を整えています。さらに、経営上重要な事項については取締役会にて意思決定を行っています。
サステナブル経営会議はCSV本部長が会議長を務め、全執行役員で構成される会議体であり、外部環境に関するモニタリングを踏まえ、サステナビリティに関する経営課題の特定および実行計画や予算への反映を行うための審議を行っています。気候変動に関する課題については、サステナブル経営会議を構成する部会の一つである環境部会にて、全事業部の責任者の参画の下、リスクの特定、戦略への反映を行い、全社体制にて課題の解決に向けた事業の推進を行っています。

戦略

コクヨグループでは、シナリオ分析の手法を用い、気候変動に関連するリスク・機会の特定、財務への影響分析、およびリスク・機会への対応策の検討を行っています。分析の時間軸については、長期ビジョンを踏まえ、2030年における社会やステークホルダーの変化を想定しています。2021年度に行った、ワークスタイル領域のファニチャー事業およびビジネスサプライ流通事業の分析に続き、2022年度はライフスタイル領域に属するステーショナリー事業とインテリアリテール事業の分析を行いました。ステーショナリー事業とインテリアリテール事業におけるリスクと機会を特定し、今後は財務影響の把握など分析を深めていきます。

シナリオ 概要 主な参照シナリオ
1.5℃未満
シナリオ
2050年にCO2排出ネットゼロを目指す等、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて1.5℃未満に抑制するため、4℃シナリオ以上に各国における政策・規制が強化されるとともに、社会における環境や気候変動への意識も現状に比べて大きく高まる
  • IEO World Energy Outlook 2021.
    Sustainable Development Scenario/Net Zero Emissions by 2050 Scenario
  • IPCC SSP1-1.9
4℃シナリオ 既に実施済みの政策に加え、公表済みの政策が実現されることを想定したシナリオであり、政策・規制は1.5℃シナリオよりも弱い想定。CO2の排出量も当面は増加する可能性があり、社会的にも環境や気候変動への意識は現状の延長線上で推移する
  • IEO World Energy Outlook 2021.
    Stated policies Scenario
  • IPCC SSP5-8.5
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リスクと機会分析

< ワークスタイル領域 >

シナリオ ファニチャー事業
1.5℃
シナリオ
脱炭素に向けた政策は日本国内外において強化され、顧客やサプライヤー、社会一般における脱炭素や廃棄物削減に対する取り組みが進展します。財務影響として、リスクの面ではCO2排出コスト増、設備投資等によるコスト増、原材料コストの増加、顧客ニーズの変化による売上高の減少といった影響が想定される一方で、顧客のニーズや行動の変化に対応した新製品・サービスの開発や、低排出型の事業開発によるドメイン拡張の機会も生じます。かかる状況下、新製品・サービスや新事業開発といった機会を活用する取り組みも実施していくことで、顧客や社会の変化に対応した価値創造を実現していきます。
4℃
シナリオ
世界的な消費活動の拡大や気候変動の影響により、木材調達価格の高騰や、災害等による製造活動・輸送への影響への懸念があり、財務影響としては調達価格の大幅の高騰、木製家具製品の価格上昇に伴う需要の減退、物理的リスクの顕在化による機会損失、事業停止、対応コストの発生が想定されます。かかる状況下、自社のレジリエンス向上に取り組む他、顧客オフィスにおける災害対策や、働き方の変化等、市場のトレンド変化を機会ととらえ、新たなソリューションの展開を行うことで価値創造を実現していきます。
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シナリオ ビジネスサプライ流通事業
1.5℃
シナリオ
脱炭素社会への移行が進んでいく中で、顧客や輸送業者、社会一般においても脱炭素や廃棄物削減に対する取り組みが進展します。財務影響として、リスクの面では炭素税によるコスト増、輸送コストの増加、顧客ニーズの変化による売上高の減少といった影響が想定される一方で、顧客のニーズの変化に対応した製品ラインナップの変更等により売上高を増加させる機会も生じます。かかる状況下、商品ラインナップ変更やデジタル施策の拡大など、機会を活用するための活動を行っていくことで気候変動に対するレジリエンスの向上、および顧客や社会の変化に対応した価値創造を実現します。
4℃
シナリオ
世界的な消費活動の拡大や気候変動の影響により、製品調達価格の高騰や、物理的リスクの顕在化により、輸送を始めとするサプライチェーンの途絶が起こり、ビジネスモデル上重大な問題が発生する可能性があり、財務影響としては調達価格の上昇、輸送コストの上昇、物理的リスクによる機会損失、対策コストの発生等が想定されます。かかる状況下、製品調達の見直しや、デジタル施策の拡大などにより、事業のレジリエンスを高めていきます。
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< ライフスタイル領域 >

シナリオ ステーショナリー事業
1.5℃
シナリオ
日本・海外ともに脱炭素社会への移行が進む中で、文具をはじめとする消耗品の消費に関する考え方や、働き方・学び方の変化が生じ、消費行動や市場が変化することが想定され、財務影響としてリスクの面ではCO2排出コスト増、原材料コスト増加、追加的な投資の発生、およびデジタル化の進展による文具市場の縮小等が想定される一方、新たなトレンドに応じた価値提案や商品・サービス展開を日本国内・海外市場に対して行うことで、価値創造機会を実現していきます。
4℃
シナリオ
世界的な消費活動の拡大によるコスト圧力や、気候変動からの物理的なインパクトが懸念され、財務影響としてリスクの面では資源・エネルギー価格の高騰、物理的リスクの顕在化による機会損失、対策コストの発生が想定される一方、海外市場においては文具へのニーズが拡大することが想定され、レジリエンスを高める取り組みを促進し、グローバルなサプライチェーンの実現、市場展開を進めることで機会をとらえていきます。
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シナリオ インテリアリテール事業
1.5℃
シナリオ
脱炭素社会への移行が進んでいく中で、生産から廃棄までの家具のライフサイクルを通じてのCO2排出削減、環境配慮の実現が求められると想定され、財務影響としては、CO2排出コスト増、原材料コスト増加、追加的な投資の発生、および環境への配慮からの家具購入頻度の低下、レンタル・サブスクとの競合などが想定される一方、環境の変化を機会ととらえ、カーボンフットプリント表示への対応や、修理のような家具の廃棄を減らすサービスの展開等、環境への配慮とビジネスの両立できる取り組みを推進していきます。
4℃
シナリオ
世界的な消費活動の拡大や気候変動の影響により、木製品をはじめとする製品調達価格へのリスクや、災害等によるサプライチェーンや店舗活動への影響への懸念があり、財務影響としては調達価格の大幅の高騰、木製家具製品の価格上昇に伴う需要の減退、物理的リスクの顕在化による機会損失、対応コストの発生が想定されますが、製品調達の見直しやECサービスの展開等により、レジリエンスを高め、安定的な価値提供を行っていきます。
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リスク管理

コクヨが留意すべき気候関連のリスクに関しては、定期的に行う社内外調査結果を基に、「サステナブル経営会議」の環境部会において、全ての事業部の責任者が参画の下、特定・評価しています。特定・評価されたリスクに関しては、事業部に共有するとともに、戦略に関しては「サステナブル経営会議」の環境部会を通じて反映、個別事業に関しては各事業部で管理しています。組織全体のリスク管理については、リスク委員会を組織し、コクヨグループ全体でのリスクマネジメントを行っています。
コクヨでは、サステナブル委員会の環境部会と、リスク委員会との連携体制を構築することで、全社におけるリスクマネジメント体制に気候変動に関するリスクマネジメント体制を統合しています。環境部会はリスク委員会に対して、リスク管理上重要な事項や環境関連の法規制遵守状況について報告を行います。

指標と目標

コクヨグループでは低炭素社会実現に向け、地球温暖化に対する緩和活動としてCO2排出量削減を強化していきます。2024年までの目標として、CO2排出の削減量目標を設定し、達成に向けた取り組みを行っています。

項目 2024年目標 2022年実績
CO2排出量 日本国内連結対象会社(※)、コクヨKハート、ハートランドにおけるCO2排出量(Scope1, 2)を2013年比で50%削減する 2013年比▲21.4%
(24,101t-CO2)(※)
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対象範囲 コクヨ、コクヨ工業滋賀、コクヨMVP、コクヨロジテム、コクヨサプライロジスティクス、コクヨマーケティング、カウネット、アクタス、コクヨファイナンス、コクヨアンドパートナーズ、LmDインターナショナル

加えて、森林によるCO2の吸収へ貢献するため、間伐活用に取り組んでいきます。2021年度は88.55haの面積で間伐を行い、4,698t-CO2のCO2吸収に貢献しています。

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