コクヨのマテリアリティ
-重点課題5-
自然共生社会への貢献
コクヨのマテリアリティ 自然共生社会への貢献
基本方針
主要製品のノートや家具をはじめとし、多くの木質材料を活用して事業を行っている企業として、持続可能な森林資源の保全は重大な使命です。コクヨではこれまでも、環境影響最⼩化のために生物多様性に配慮して事業を行い、有害化学物質削減を推進してきました。
2022年度からはさらに、自然資本と事業活動のバランスをとり健全な地球を守る為、自社の自然環境負荷の把握と、その改善に向けた計画を推進していきます。
アウトカム | 2030年チャレンジ目標 | |
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KPI | ||
自然資本とバランスがとれた事業活動を行い健全な地球を守る | 自然環境負荷とその改善に向けた活動を開示し、環境を損なわない意識を市場に形成している | 事業活動における自然環境負荷の可視化を実現し±0達成 |
森林保全(毎年150ha程度の間伐) | ||
ヨシ原保全(毎年1.5ha程度のヨシ刈り) |
2022年の実績 | 2023年の計画 |
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自然環境負荷把握のための活動
森林由来の資源を活用し事業を行う企業の責任として、「自然との共生とは何か」をテーマに生物多様性の理解、事業と生物多様性の関係性、原料リスクの検討、事業所及び周辺リスクの把握などに着手しました。併せて、近々情報開示が求められるTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の動向並びに内容の理解にも努めました。
コクヨグループの自然保全活動
結の森プロジェクト
2006年、コクヨは高知県四万十町大正地区の民有林を「結の森」と名付け、「人工林の再生」と「自然環境と地域社会の再生」をテーマに、間伐材の有効活用を中心とした森林保全を開始し、2007年よりFSC®(Forest Stewardship Council® 森林管理協議会)の森林管理認証を取得しています。結の森は現在、対象面積は5,430ha、累計間伐面積が1,989haまで拡大しています。また、2007年より、高知県から「CO2吸収証書」が授与されており、2021年度単年では4,698t-CO2、累計では72,089t-CO2になりました。(期間:2006年4月~2022年3月)
2022年1月に「日本自然保護大賞2022 保護実践部門 大賞」、5月に林野庁「森林×脱炭素チャレンジ2022 優秀賞(林野庁長官賞)」を受賞しました。2017年には「ウッドデザイン賞2017」、2018年には「生物多様性アクション大賞 特別賞 グリーンウェイブ賞」、2019年には「低炭素杯2019 優秀賞」、「第7回環境省グッドライフアワード環境大臣賞 企業部門」、2020年には「持続可能な社会づくり活動表彰【機構会長賞】」、「第18回企業フィランソロピー大賞【森林の守り人賞】」を受賞しており、9回目の受賞となりました。
※関連情報:結の森
高知県から「CO2吸収証書」が授与されました
2022年7月15日、高知県庁にて、高知県林業振興・環境部 武藤副部長よりコクヨ分:4,120t-CO2、カウネット分:578t-CO2、計4,698t-CO2分の「CO2吸収証書」が授与されました。武藤副部長より「長年にわたり、環境保全・森林整備・産業振興・高知県のPRなど、さまざまな面で大変貢献していただいている」と感謝の言葉をいただきました。
尚、4,698t-CO2は、コクヨグループの2022年のCO2排出量38,792t-CO2の約12%に相当する量となります。森林保全のみならず地球温暖化防止の観点でも重要な取り組みとなっています。
FSC®認証を取得しています
結の森は2007年よりFSC(Forest Stewardship Council®森林管理協議会)の森林管理認証を取得しています。
2022年9月14日~15日に定期審査が実施され、引き続きFSC®認証を継続しています。
間伐の効果を定期的に監視しています
森林保全活動を行う上で必要不可欠なのは、間伐効果を「見える化」することです。活動の効果を長期的に監視していくため、四万十町森林組合、四万十高校、高知県・四万十町の職員の皆さんと共同で、モニタリング調査を実施しています。2022年は7月17日に四万十川清流基準調査を、11月19日に植生調査を実施しました。植生調査では、特定の2地点において調査を継続しています。
※関連情報:「四万十高校生によるレポート」
間伐材の有効活用
間伐材の有効活用のために、コクヨでは2000年より地元の四万十町森林組合と協働で間伐材家具を製造・販売してきましたが、通販会社のカウネットも2007年から「結の森」ブランドの商品として文具を中心に販売を開始し、2022年現在で11品番になっています。カウネットでは活動への理解と賛同者を増やすため、お客様のポイントを結の森の間伐に寄付する仕組みを2008年から実施しており、2022年は167件のお申し込みがありました。加えて、2011年2月より「結の森1%寄付プロジェクト」をスタートさせ、現在も継続しています。これは「結の森」商品の売上の一部を公益社団法人国土緑化推進機構の「緑の募金」に寄付するというものです。
ReEDENプロジェクト
琵琶湖の水環境、生態系、そしてCO2の回収に重要な役目を果たしているヨシ(葦)原。「ヨシ葺き屋根」「すだれ」等の伝統産業の衰退により、手入れが行き届かなくなったことで、かつて260haあったヨシ原は半減してしまいました。滋賀県では、1992年にヨシ群落保全条例を定め、「守る」「育てる」「活用する」の3本柱で保全に努めています。これらの条例を実践することで豊かな琵琶湖環境を守り、気候変動の軽減にも貢献できると考えたコクヨ工業滋賀は2007年、ヨシを通した「活動」と「活用」の両輪で、琵琶湖環境の保全・維持に貢献する事業をスタートさせました。
琵琶湖のヨシ原を守る ~ ヨシでびわ湖を守るネットワーク ~
ヨシを育てるには、冬の刈り取り作業が最も重要です。2009年、ボランティア活動組織「ヨシでびわ湖を守るネットワーク」を設立するにあたり、単なる一企業の活動に留まらない組織を作るため、滋賀県内事業所を歩き、琵琶湖をキーに「地域共通の環境課題に一緒に関わっていく」ことを訴え、多様な主体がつながる共同体を目指しました。当初、数社の賛同を得てスタートしたこの組織は、徐々に賛同の輪が広がり始め、現在132社が参加する規模となり、産学官民が協働するヨシ刈り活動(年3回/12月~3月実施)を、これまで10年以上にわたり実施しています。近年では、多数の事業体とその家族に加え、地元住民、行政、県立博物館、学校も参加する規模となり、約300名が参加する滋賀県内最大級のヨシ刈り活動に成長しました。しかし、2021年よりコロナ感染症の影響を受け、ネットワークでの開催を自粛し、規模を縮小したコクヨ単独での保全活動を継続させています。
ヨシ原保全を通した低炭素社会づくりへの挑戦 ~ 保全活動の成果を見える化する ~
これまで保全による成果は、滋賀県が唯一公表する保全面積でしか評価されておらず、他の科学的評価が期待されていました。一方、間伐等の森林保全は、炭素吸収・固定量を指標として全国的に推進されています。私達は、ヨシ材においても炭素を植物内に回収する効果があり、森林と同様に炭素回収量として評価できると考え、2017年より研究者と共に冬のヨシ原のバイオマス調査に取り組み、ヨシの「高さ」「密度」「重さ」「太さ」「炭素量」を3年間にわたり測定し、蓄積したデータからヨシの炭素回収量を数値で示す手法を構築しました。
この手法により、ヨシ刈り活動の効果を保全面積による評価以外の、全く新しい角度から数値評価が可能となったのです。この取り組みは、学識者で構成する滋賀県ヨシ群落保全審議会で高い評価をいただき、2019年末には、産学官で「刈り取り面積」×「ヨシ高さによる換算値」でCO2回収量を算出するツールを開発し、「ヨシ刈り活動によるCO2回収量の算定ツール」として、滋賀県ホームページで公開されています。この算定ツールにより、ヨシ刈り活動の低炭素社会づくりへの貢献が可視化されました。ヨシ刈り活動は琵琶湖の水の浄化や生物多様性の保全効果に加え、CO2を回収することで気候変動の軽減と緩和にも貢献していることを証明することができるようになり、活動のモチベーションアップと広がりにつながる大きなプラス要因となりました。
今後、このツールを広めることで地域全体の活性化を図り、すでに全国で行われている森林カーボン回収制度に続き、他に類のない水辺バージョンのカーボン回収量認定制度の構築を目指しています。
関連情報
コクヨグループ木材調達基本方針
コクヨグループは、2011年に「木材調達基本方針」を制定し、持続可能な森林資源を原料とすることを明確にしました。また、創業時より紙をはじめとした森林由来資源を活用して事業を展開・発展してきました。私達は、地球温暖化の抑制や生物多様性など森林の果たしてきた役割を認識し、資材の調達に関して合法性・透明性・持続可能性に配慮しながら、今後も森林資源との調和ある発展を目指します。
コクヨグループ木材調達基本方針
当社グループは、以下の方針に基づく森林由来資源の調達を推進するとともに、その継続的改善に努めます。
- 木材貿易における違法伐採・違法取引問題を認識した、より透明性の高い資材の調達
- 森林資源の持続的利用のための、より適切なサプライチェーンからの資材の調達
- 地域における森林の社会的な価値・役割の認識に基づく、その維持・保全に配慮した資材の調達
「木材合法性証明デューデリジェンスシステムマニュアル(家具版)」の運用結果
2022年は、会議テーブル「エアトリーブ(突板仕様)」「オーガス(突板仕様)」「WT-150」におきまして、合法性の確認が十分でない木材使用の可能性があることが判明いたしました。当該商品に対し、同マニュアルに定めるリスク緩和措置として、2023年総合カタログ掲載より「グリーン購入法(国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律)」の適合品から除外することにいたしました。今後も同マニュアルの有効性をより高めていくとともに、厳格な確認を実施していきます。
尚、本マニュアル(Ver1.3)はホームページにて公開しています。
「合法性・持続可能性に係る事業者認定」を取得
「グリーン購入法」改訂に伴うJOIFA(日本オフィス家具協会)の「合法性・持続可能性に係る事業者認定」を取得しています。この実施規定に基づき、帳票管理や責任者選任、使用実績報告など合法性・持続可能性が証明された木材、木材商品の使用・販売推進に努めています。
森林認証商品
コクヨは2003年よりFSC®・COC認証を取得しています。FSC(Forest Stewardship Council®森林管理協議会)とは、国際的な森林認証制度を行う第三者機関の一つで、森林環境を適切に保全し、地域の社会的な利益にかない、経済的にも継続可能な森林管理を推進することを目的としています。また、COC認証とは、Chain-of-Custodyの略で、加工・流通過程の管理の認証です。コクヨグループではコクヨ・カウネット・コクヨ工業滋賀がFSC®・COC認証を取得し、コピー用紙・ノートなどのFSC®認証商品を販売しています。2016年にはPEFC・COC認証も取得しました。PEFC(Programme for the Endorsement of Forest Certification Schemes)とは、各国・地域で作成された森林認証基準を相互承認する団体です。
コクヨグループでは持続可能な森林資源利用のため認証商品の拡大に努めていきます。(FSC® C004748)
木材利用状況
2022年のファニチャー商品に利用する木質材料は約7,012トンでした。これは全原材料(梱包材除く)の15%に相当します。この木質材料の内、20%が無垢材や合板など「原木を材料とする木質材料」で、80%が間伐材、廃木材、未利用材及びその二次加工品である木質ボード(MDFやパーティクルボード)など「原木を材料としない木質材料」となっています。これらの情報はJOIFA(日本オフィス家具協会)へ「グリーン購入法」の合法木材事業者認定の年別取扱実績として毎年報告しています。また、JOIFA木質表記ガイドラインに沿って「原木を材料とする木質材料」の樹種を把握するよう努めています。
木材利用実績調査
コクヨではファニチャー商品に利用する木質材料の樹種、取扱量、原産国・地域を毎年、調査しています。
ただ、市販部品等に関しては、原産国の特定は困難を極めておりますが、持続可能な資源利用のため、引き続き把握に努めていきます。
樹種名 | 材形状 | 取扱量(m³換算) | 原産国・地域等 |
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アッシュ | 単材、突板 | 2 | アメリカ |
カプール | 合板 | 1 | マレーシア、インドネシア |
スギ | 集成材 | 4 | 日本 |
ビーチ | 無垢材、合板 | 159 | ドイツ、クロアチア |
ポプラ | - | 129 | アメリカ、カナダ |
ラワン | 合板 | 282 | インドネシア、マレーシア、中国、日本 |
ラバーウッド | 集成材、無垢材 | 28 | ベトナム、タイ、マレーシア |
ラジアタパイン | 集成材 | 3 | ニュージーランド |
ユーカリ | 合板 | 55 | 中国 |
合計 | 663 |
サプライヤーから伝達された情報を集計。MDFなど原木を材料としない木質材料は除く。
原産国・地域などが特定されている樹種のみ開示しています。
外部からの表彰・評価
表彰
「結の森プロジェクト」が「日本自然保護大賞2022 保護実践部門【大賞】」を受賞
「日本自然保護大賞」とは、公益財団法人日本自然保護協会が主催する表彰事業で、地域性、継続性、専門性、先進性、協働の観点から、生物・生態系の研究、自然保護の実践、環境教育の推進などに大きく貢献する取り組みに対し、その成果と尽力を表彰するものであり、2014年度に創設されました。
結の森プロジェクトについては、「森林保全と地域経済の振興を両立させたこと」が高く評価され、101件の応募があった中から保護実践部門にて大賞を受賞しました。なお、本賞はプロジェクトのパートナーである四万十町森林組合との共同での受賞となります。
「結の森プロジェクト」が、林野庁「森林×脱炭素チャレンジ2022 優秀賞(林野庁長官賞)」を受賞
2022年に新たに創設された「森林×脱炭素チャレンジ2022」は、民間企業や団体等が支援をして行った森林整備について募集し、当該森林整備に係るCO2吸収量と取り組み内容を総合的に判断して、優れた取り組みを顕彰するものです。
結の森プロジェクトについては、下記の点が評価されました。
- 整備した森林から生産された間伐材をできる限り無駄なく活用。
- 四万十町森林組合と協業して間伐材家具を開発し、全国販売。
三重工場が経済産業省主催の全国みどりの工場大賞で「日本緑化センター会長賞」を受賞
「全国みどりの工場大賞」は、工場緑化の推進を図るため、工場内外の環境の向上に顕著な功績があった団体及び個人の表彰を行うことを目的に1982年より実施されている制度です。
三重工場の取り組みと主な評価ポイント
- 工場敷地面積の32%が緑地であり、操業開始時から緑地の面積率が9%増加
- 樹種の選定や配置が配慮され、緑地の良好な状態を維持管理
- 積極的な地域社会との交流
- 社会貢献活動への注力