ReEDEN
琵琶湖のヨシ原を知る ~ ReEDENプロジェクト ~
琵琶湖の水環境、生態系、そして二酸化炭素の回収に重要な役目を果たしているヨシ(葦)原。「ヨシ葺き屋根」「すだれ」等の伝統産業の衰退により、手入れが行き届かなくなったことで、かつて260haあったヨシ原は半減してしまいました。滋賀県では、1992年にヨシ群落保全条例を定め、「守る」 「育てる」 「活用する」 の3本柱で保全に努めています。これらの条例を実践することで豊かな琵琶湖環境を守り、気候変動の軽減にも貢献できると考えたコクヨ工業滋賀は2007年、ヨシを通した「活動」と「活用」の両輪で、琵琶湖環境の保全・維持に貢献する事業をスタートさせました。
琵琶湖のヨシ原を守る ~ ヨシでびわ湖を守るネットワーク ~
ヨシを育てるには、冬の刈り取り作業が最も重要です。2009年、ボランティア活動組織「ヨシでびわ湖を守るネットワーク」を設立するにあたり、単なる一企業の活動に留まらない組織を作るため、県内事業所を歩き、琵琶湖をキーに「地域共通の環境課題に一緒に関わっていく」ことを訴え、多様な主体がつながる共同体を目指しました。当初、数社の賛同を得てスタートしたこの組織は、徐々に賛同の輪が広がり始め、現在132社が参加する規模となり、産学官民が協働するヨシ刈り活動(年3回/12月~3月実施)を、これまで10年以上に渡り実施しています。近年では、多数の事業体とその家族に加え、地元住民、行政、県立博物館、学校も参加する規模となり、約300名が参加する県内最大級のヨシ刈り活動に成長しました。しかし、昨年よりコロナ感染症の影響を受け、ネットワークでの開催を自粛し、規模を縮小した当社単独での保全活動を継続させています。
ヨシ原保全を通した低炭素社会づくりへの挑戦 ~ 保全活動の成果を見える化する ~
これまで保全による成果は、県が唯一公表する面積でしか評価されておらず、他の科学的評価が期待されていました。一方、間伐等の森林保全は、炭素吸収・固定量を指標として全国的に推進されています。私達は、ヨシ材においても炭素を植物内に回収する効果があり、森林と同様に炭素回収量として評価できると考え、2017年より研究者と共に冬のヨシ原のバイオマス調査に取り組み、ヨシの「高さ」 「密度」 「重さ」 「太さ」 「炭素量」を3年間に渡り測定し、蓄積したデータからヨシの炭素回収量を数値で示す手法を構築しました。
これにより保全面積でしか評価できなかったヨシ刈り活動の効果が、全く新しい角度から数値評価が可能となったのです。この取り組みは、学識者で構成する滋賀県ヨシ群落保全審議会で高い評価をいただき、2019年末には、産学官で「刈り取り面積」×「ヨシ高さによる換算値」でCO2回収量を算出するツールを開発し、「ヨシ刈り活動によるCO2回収量の算定ツール」として、滋賀県ホームページで公開されています。これにより活動の低炭素社会づくりへの貢献が可視化され、琵琶湖の水の浄化や生物多様性の効果に加え、CO2を回収する気候変動の軽減と緩和にも貢献していることを証明することができるようになり、活動のモチベーションアップと広がりにつながる大きなプラス要因となりました。
今後、このツールを広めることで地域全体の活性化を図り、すでに全国で行われている森林カーボン回収制度に続き、他に類のない水辺バージョンのカーボン回収量認定制度の構築を目指しています。
昨年の「気候変動アクション環境大臣表彰」に続き2021年12月には、“第9回グッドライフアワード 実行委員会特別賞「ひとづくり賞」”を環境省から2年連続で受賞しました。
これまで、「水質浄化」 「生物多様性」 「青少年の育成」、そして「気候変動の緩和」と評価を受けたこの活動は、今回 “ 環境と社会に良い暮らし ”の実現に優れた活動として表彰を受けることができました。
持続可能な社会づくりに貢献する一地域の小さな活動ですが、これからも地道に継続することを大切にしていきます。