SUTENAI CIRCLE

Vol.01 INTERVIEW

あり方を問い、対話を重ねて見つけたスタイル。コクヨがHOWS DESIGNに込めた想い。

掲載日 2023.12.07

画像:あり方を問い、対話を重ねて見つけたスタイル。コクヨがHOWS DESIGNに込めた想い。

Interviewee

  • 井田 幸男

    コクヨ株式会社
    CSV本部サスティナビリティ推進室理事

コクヨとしてインクルーシブなデザインアプローチHOWS DESIGNの取り組みを始めたきっかけについて、あらためて聞かせてください。

井田:直接的なきっかけとしては、やはり企業全体の長期ビジョンとして自律協働社会を目指していくという方針が発表されたことが大きいです。実はコクヨでは2011年に、多様な人が気遣いなく利用できるユニバーサルデザインのロビーチェア「Madre(マドレ)」を発売していたのですが、開発に携わったメンバーが感じた可能性とは別に、当時はコクヨがユニバーサルデザインをやる意義を打ち出すことが難しく、それ以上拡大することができずにいました。

そこから10年程が経ち、社会の変化も相まって2021年に打ちだされた自律協働社会の実現へ向けた長期ビジョン、企業理念として掲げる「be Unipue」も踏まえて考えた時に、「自分たちはユニークで多様な状態、インクルーシブな状態になれているだろうか?」という問いが生まれました。たとえば障がいのある方の法定雇用率を守れていたとしても、数字上の話だけではインクルージョンができているとはいえないかもしれません。コクヨでは昔から特例子会社のコクヨKハートとともに事業推進もしていたものの、セパレートされた子会社という状態になってしまっているのは否めませんでした。そうしたことも含め、まずは自分達が変わっていく必要があるという考えのもと、HOWS DESIGNのプロジェクトはスタートしています。

企業が新たな取り組みを始める場合にはいろいろな難しさもあると思いますが、いかがでしたか?

井田:KPI(※)をどう定めるかという部分は悩みました。未知の領域であることもあり、フォアキャストではなかなか決められない部分があるなかで何をどう定めればいいのかがわからなかったんです。当時、外部アドバイザーの方に「できるのか・できないのかではなく、目指すのか・目指さないのかで決めた方がいい」とアドバイスをいただき、なるほどと納得することができました。自分達が何を目指すのか・目指さないのかを定めることで、それをもとにどんどん具体的な目標やアクションに置き換わっていき、現場でも意思決定が生まれていったように思います。

※2030年までの目標として、コクヨでは「インクルーシブデザインを経た新シリーズ上市率50%以上」を設定しています。

苦労を乗り越えて生まれたHOWS DESIGNの特徴をあらためて教えてください。

井田:特徴としては、「向き合い方のスタイル」も含めてインクルーシブデザインを捉えたところだと思います。プロダクトデザイン手法を定義づけるのではなく、あくまでも「どういう形で向きあうのか?」ということを定めた言葉が「HOWS DESIGN」です。

実は、プロジェクトの一環として設計したダイバーシティオフィス・HOWS PARKの名前が先に決まっていたのですが、コンセプトにある「たくさんの“HOW?”を重ねていく」という姿勢が、これから先の商品開発やプロジェクトにも共通していく大切な核であると全員が感じていたところからHOWS DESIGNという名前は決まっていきました。私たちは、「How are you?」「How do you do?」「How about this?」などの声を互いに掛けあい、一人ひとりの個人との対話や関係性を育む先に、結果としてのプロダクトが生まれていくのだと考えています。コクヨはワークプレイスをつくっているのではなくワークスタイルをつくる会社であり、文具や日用品をつくっているのではなくライフスタイルをつくる会社であるという自覚をもち、社会システムとしての変化を起こしていきたいという想いや目標をもって、「HOWS DESIGN」を定めました。

行動を変容させ、ときに規定していく力ももつ「場」のあり方を考えていった先に、スタイルとしても共通するコンセプトが生まれたという部分も、コクヨらしさが詰まっている特徴だと感じます。インクルーシブデザインは過程が重要であり、さらにはぐるぐると行き来しながら進んでいくものだと思いますが、まさにこの「HOWS DESIGN」の誕生も、そうした流れを汲んでいたといえるかもしれません。

HOWS DESIGNが生まれる過程で、ご自身にも気づきや変化はありましたか?

井田:ある方に「井田さん、視力はいくつですか?」と聞かれて、「裸眼だと0.1くらいなので何も見えないんですよ」と答えたことがありました。ただの世間話の感覚で答えたのですが、その方に「眼鏡がなかったら井田さんは仕事ができないということですよね。でも、井田さんは障がい者じゃない。そういうことなんですよ」と言われたんです。眼鏡というツールが開発されて、それが一般的に普及して当たり前に手に取れる環境だから、私は障がい者ではない状態でいられている。納得すると同時に、障がいというものへの捉え方や見え方も変わる大きな気づきになりました。他にも、自分が持っている無意識のバイアスに気づかされる場面は多かったです。

チームとしてはどのような変化が起こっていると感じられるでしょうか。

井田:HOWS DESIGNの共創を通じて、Kハートのみなさんがどんどん積極的に、ポジティブに関わってくれるようになっているという実感があります。コクヨとKハートは役割が違うだけで、関係性としては対等であるということを体感を通じて理解してもらえているのだとすれば、とても嬉しい変化です。また、事業部間での意思をもった連携が活発になったというのも大きな変化だと思います。自主的に他事業部を巻きこんで開発を進めたり、当たり前のように連携をとったりという動きが明らかに増えました。インクルーシブデザインを進めるうえで、それぞれの事業部でやっていることは違っても「共通の目標に進んでいる」という前提が生まれ、お互いに遠慮せず話ができるようになったという声も聞いています。

今後の展望について教えてください。

井田:HOWS DESIGNの商品がお客様に届き、世の中のみなさんから価値を認めていただいて、社会価値と経済価値の両方をバランス良く担っていくことが必要だと考えています。それを実現するためにも、「本当に必要とされるものをつくる」ことにこだわっていきたいです。

また、本当に必要としてくださる方へ届けていくためには「伝える」という部分が重要になるので、これまでとは違うチャネルなど、多様なアプローチを前提にした行動規範のようなものもあるといいのかもしれません。プロダクトだけではなかなか伝わりづらい部分もあると思うので、現在も少しずつ取り組んでいるセミナーやイベント開催なども含め、社内外問わず共感者や理解者を増やす活動も進められればと思っています。各事業部が少しずつ新しい挑戦を始めているので、それぞれの知見を重ねながら、これまでにない形での発信にも挑戦し、社会にもしっかりと価値を伝えていきたいです。

取材日:2023.10.11
執筆・撮影:中西須瑞化
編集:田中美咲、HOWS DESIGNチーム

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