生物多様性の保全

森林の適切な管理

人工林の生物多様性を自然のバランスに近づけ、よい状態を保つためには、適切な手入れを継続的に行う必要があります。

その大切な仕事のひとつが間伐です。

間伐とは、競合する木を選別して伐採し、木々の間に適度な広さを確保する仕事のことです。
適正に間伐された森は、樹間から光が差し込み、背の低い広葉樹や草、コケなどを育みます。
さらに虫や鳥、獣などの生き物がそこに来ることで、森は健やかさを保つのです。
そしてそれは同時に、やがて収穫する木材の品質向上にもつながります。

コクヨは、事業の成長を支える森を守り育てるための活動として、間伐をはじめとする活動をつづけています。

間伐の効果

間伐がされていない森では、太陽の光が入らず、下草が育ちません。雨が降った時にクッションの役割をする下草が無いと、雨が直接地面に当たるので地面は固くなり、雨水が地表を簡単に流れて、土砂が川に流れ込んでしまいます。このような森は保水力に欠けているので、雨がしばらく降らない時は川の水が不足し、また雨が降った時は急激に川の水が増えてしまいます。

一方、手入れが行き届いた日当たりの良い森は、下草が繁殖し、木の根がしっかりと地面に張り、腐葉土が堆積する豊かな生態系を形成します。
土壌は雨水を貯留して時間をかけて川に流出させるので、川の流量が安定し、洪水・渇水や土砂崩れなど災害の防止にも寄与します。

Topic日本で進む森林荒廃
現在、森の守り手である山村は衰退しつつあり、そのために放置され荒廃していく森も少なくありません。
山村が衰退する一番の原因は、国内林業の現状にあります。大量に輸入される外国産の木材に圧され、国産の木材の価格が大幅に下落している状況です。今まさに荒廃しつつある森林を適正に管理し、また山村の基幹産業である林業を活性化できなければ、大切な森林は失われていくばかりなのです。

間伐材の利用

間伐により得られた木材を使うことは、経済的に間伐を支援することにつながり、森の保全に寄与します。
しかし、多くの森では木を運ぶ路網が整備されていないために、
間伐で得られた木材はその場に捨てられてしまっており、資源として活用されていません。

「結の森」のパートナーである四万十町森林組合は、以前から間伐材製品を製造・販売することについて
前向きな活動をされてきました。コクヨはこうした森林組合とともに、
より高い付加価値をもった製品づくりを進め、
「環境と経済の好循環」を実現していきたいと考えています。

集成材とは

間伐された木は、質の良いものは無垢材になり、そうでないものは厳しい品質管理のもとで加工され、集成材になります。集成材とは断裁した板材を縦横に接合して再構成した木材のこと。手間がかかりますが、その分、大きな節や質の悪い部分を排除できます。また小片の状態で品質を揃えていくため、安定した品質が得られます。集成材は湿度変化による割れ、変形、反りなどが現れにくいことも特長。
手間がかかる分、高品質でムラが少なく、無垢材に劣らない、利用価値の高い木材になります。

  • 24時間体制で1週間、じっと見守り強度を高めていきます。

    木材として利用する時にもっとも重要なのは、長く使い続けても安定した強度を持続できるかということ。トラブルの多くは、木の含水率に起因します。含水率が高いと、やがて乾燥して割れやヒビが生じてしまう場合があります。結の森で伐採した間伐材は、加工時にゆっくり時間をかけて乾燥させることで強度をコントロールしていきます。
    四万十町森林組合では24時間体制で1週間、じっくり時間をかけて強度を高めています。こうした作業が可能な森林組合は、まだ全国でもそう多くはありません。

  • 製品として厳しい審査をクリア。
    コクヨもバックアップしています。

    日本農林規格(JAS規格)では、集成材そのものに厳しい基準があります。
    試験方法や接着に使う素材なども規定され、さまざまな審査をクリアしなければなりません。 さらに商品化にあたっては、コクヨの品質管理があります。製品企画・設計の各段階から、綿密な打合せが重ねられ、コクヨ独自の基準によって試作段階から何項目にもわたる品質チェックが行われます。
    新たな価値をもつ「間伐材製品」だからこそ、より高い品質を求めなければならない。それは、コクヨ自身の挑戦でもあるのです。

森と自然環境の状態を把握するモニタリング調査

  • 「結の森」では高知県立四万十高校の皆さんと協力して、森と周辺地域の生態系の状態を把握するための定期的なモニタリング調査を行っています。 モニタリング調査には毎年、コクヨ社員も参加します。環境の変化を実際に目にすることで、間伐をはじめとする保全活動の効果を検証し、生物多様性に関する理解を深めます。

    これらの調査はFSC®認証を継続する上で毎年実施することが義務付けられており、年次監査の際には調査結果が報告されます。 ( FSC® C004748 )(FSC C007763)

FSC®認証とは
国際機関である「 FSC(Forest Stewardship Council®森林管理協議会) 」が、適正に管理された森林であることを認証する制度です。認証された森林の産物から生まれた商品には、 FSC®マークを表示することができます。コクヨグループでも、結の森ブランドをはじめ、多くのFSC®認証製品を取り扱っています。

植生調査

自然共生社会の実現のため、年に一度、植生調査を実施しています。
調査では、森林の状態を判断するとともに、間伐後、森に光が差し込むことによって、どの程度森林再生が進んでいるかなど、間伐による森林の変化をみています。また、生えている植物の種類や密度、分布状況なども計測します。

  • 調査の目的は次の2つです。

    (1)森林の状態を判断すること
    (2)間伐による森林の変化を見ること
    調査は、手入れの頻度など条件が異なる4つの地点で「風当たり」「日当たり」「土の湿り具合」「高木層・低木層・草本層」について行います。それぞれの地点を9区画に分け、ひと区画ごとに検分します。

  • 階層ごとの高さと植被率と出現種数

    ■ 高さ・・・各階層ごとに、一番背の高い植物の高さを測定します。
    ■ 植被率・・・枝や葉が地表を覆っている割合を、各階層ごとに測定します。
    ■ 出現種数・・・各階層ごとにみられる植物の種類を記録します。

清流基準調査

四万十川清流基準調査方法

四万十川清流基準調査は、環境基本法に定められた清流基準をもとにして、中高生をはじめとする流域住民が参加して行っています。
四万十川本流に4箇所、支流に8箇所、合わせて12箇所の調査地点があり、1年に4回この調査を実施しています。
12箇所の調査地点のうち、四万十高校は、四万十川の支流である梼原川が四万十川に流れ込む手前にある「多野々」という地点と、その梼原川が四万十川に流れ込んだ直後にある「吾川」という地点の2地点で調査を担当しています。

  • 清流度(透視度)とは

    清流度とは、水平方向の透明性を現すものです。これは簡単に言うと、水中を覗いてどれぐらい遠くの魚を視認する事が出来るかというものです。
    濁りのわずかな変化によって透視度は大きく変わります。清流度調査は、専用の器具でつや消し黒で塗装された円盤を覗いて、どれぐらい遠くまで視認する事が出来るか、という方法で調査しています。

  • 水生生物について(水質階級判定基準)

    水生生物調査は、川虫などの水生生物を捕獲し、それぞれに設定されたスコア値の平均や取れた種類などから、その川の水質を測るというものです。
    水生生物は、短期間での環境変化に影響される事がありません。そのため、長期間での環境変化を測り取る事ができるといわれています

  • 例えば、サワガニやカワゲラなどでは9、ヒゲナガカワトビケラやカワニナなどでは8、ヒラタドロムシやプラナリアなどでは6、など、それぞれの生物にスコア値が設定されていて、この値が高ければ高いほどその生物が棲む川はキレイであるとされています。

    また、例えば、採れた種類が6種、平均スコア値が7.2だった場合、平均スコア値だけを見れば水質階級は2級と見る事も出来ますが、6種しか採取出来ていないので、低い方の値を取って水質階級は4級になります。

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