SUTENAI CIRCLE

つなげるーぱ!

子どもたちが大人になる上で必要な、社会を変える力を養うために。ノートのリサイクルに自主的に関わる体験を

取材日 2023.09.12

青山小学校の理科室に集まった子供たち。環境問題について真剣に学ぶ様子

今回、伺った学校はこちら

今回、伺った学校はこちら

港区立青山小学校

設立: 1875年11月5日
生徒数:207名
都道府県:東京都港区
特徴:創立147年。都会の中心部にありながら自然豊かな校内で、「やさしい心をもち、仲良くする子」「よく考え、すすんで学ぶ子」「健康で、たくましい子」という目標を掲げた教育を行っている

青山小学校の芝生のグラウンドから校舎を見上げた様子

今回の記事のポイント

  • 全国の小学生が年間約4,360万冊使用するノート(コクヨ調べ)。使い捨てにしてしまう事で地球への負荷をかけ続けないために、コクヨと子供達が協働してリサイクルする取り組み「つなげるーぱ!」をスタート
  • 「地球環境の問題やノートの循環の意義について学んだうえで」、子どもたちが校内や地域を巻き込み、「どのようにノートを回収するか」を話し合い、資源の循環に主体的に参加
  • 青山小学校で、3年前より取り組まれているSDGs教育と「つなげるーぱ!」の取組みが重なり、子供達に実践するきっかけを提供。

活動紹介

東京・外苑前駅から歩いてすぐの場所にある、青山小学校。学校の周辺は都内でも緑の多い地域であり、校内のビオトープや植物、木々の変化からも四季が楽しめ、自然を感じやすい環境にあります。この日は、小学3年生が理科室に集まり、地球環境とリサイクルについて学び、実践するために「つなげるーぱ!」の特別授業を青山小学校とコクヨ株式会社が協働し行いました。

ノートをまた、次のノートの一部に生まれ変わらせる選択肢を

現在、全国の小学生約622万人が1人年間7冊ずつノートを使用するといわれています。それらを合計すると、小学生のノートの年間消費量は約4,360万冊。なんとその4割が使用後に燃えるゴミになってしまっています(コクヨ調べ)。コクヨから授業の中でその実態を伝えると、参加している子どもたちからは「ゴミになって、地球を汚しちゃうからリサイクルが必要だと思う」という声も。

日本で最も多くノートを生産しているコクヨは、使い終わったノートを捨てるのではなく地球のためにリサイクルをする取り組みである「つなげるーぱ!」を実施し、ノートをまた次のノートの一部に生まれ変わらせるという選択肢を提示することで、未来をつくる子どもたちと一緒に「捨てない」社会をつくる事ができるのではないかと考えました。

まず課題を知り、目指したい未来について知ることから

今回の特別授業では、まず資源を循環させることがなぜ必要なのか、地球温暖化や海洋プラスチックの問題などの環境課題の全体像を知り、リサイクルの重要性とその意義について改めて学ぶ機会を作りました。その後、「今使っているノートは何からできているのか」という問いをすると、子どもたちは一斉に「木からできてる!」という答え。木からできていると聞くと、一見エコな印象を受けるかもしれません。しかし実は、木を植えて、育て、切り、生成する必要のあるノートは、Co2排出量や必要な水が多いという事実も伝えます。

青山小学校の理科室で、コクヨの2人があふれる笑顔で「つなげるーぱ!」を紹介をしている様子

コクヨ株式会社の横手と長尾が「つなげるーぱ!」について紹介をする

ノートが出来るまでのプロセスと、その際に発生する環境負荷について理解してもらうことで、子どもたちにはノートを燃えるゴミにせず、ノートを集めてリサイクルするという選択肢を知ってもらう機会が作れたらと考えていました。

こうした子供達にとって身近なプロダクトでも、リサイクルすることで地球環境への影響を軽減でき、地球から資源を取りすぎることがなくなっていく。今回コクヨと子供達が一緒に取り組む「つなげるーぱ!」は、何度も何度もノートからノートへ繋いでいくことを目指す取り組みですが、その先にある意味や意義、目指したい未来についてもわかってもらえていたらと思います。

まわりを巻き込み、みんなで解決するための計画を立てよう
2人の黒い服を着た男の子が、手元のホワイトボードにペンでアイデアを書いている様子

その後、みんなで「ノートを集めるための計画を立てよう!」をお題に、たくさんのノートを集めるにはどこで回収を呼びかければいいかグループごとに話し合いをしました。ノート回収ボックスの設置場所について具体的な場所を提案する子もいれば、人が多そうなところ・ノートが集まりそうなところといった条件を提案する子も。そして最後にはその場所にどうやって協力をお願いをするのかも話し合いを行いました。

「つなげるーぱ!」は、コクヨだけでは実現ができないものです。資源の使用を制限したり我慢する未来ではなく、誰もが手に取ったものを安心して手放せるように、みんなで「資源循環の輪をつなぐ」第一歩となりました。

小学校の黒板に「どこに回収ボックスをおくか」の候補がチョークで書かれている様子

「どこに回収ボックスをおくか」の候補が書かれている

インタビュー

答えてくれた人
答えてくれた人

可児 亜希子 先生(かに あきこ)

青山小学校長

青山小学校長可児 亜希子先生が話されている様子
どうして「SDGs教育」をはじめたのですか?

青山小学校では、令和3年度から校内研究として「SDGs教育」に取り組んでいます。校内研究とは、児童に深い学びを提供できるように教員が切磋琢磨し、よりよい授業について研修・研究する機会のことです。本校では、国語・算数・理科・社会等の教科をSDGsの視点から研究し、活動の内容やESD※カレンダーを一年単位でまとめ、研究冊子にもしています。

※ESDとは、持続可能な社会を実現していくことを目指して行う学習や教育活動のこと。

青山小学校がつくるSDGs教育についての報告書を持つ様子

青山小学校のSDGs教育についてまとめられた報告書

「つなげるーぱ」に参加を決めた理由は?

まずは、本取組がSDGsの内容につながると思ったからです。青山小学校のSDGsの取組は私が着任する以前から行われていました。そこに新たに「つなげるーぱ!」を授業に取り入れていくことは、私が教員という立場でこれまで指導にあたってきた環境学習や人権教育が背景にあり、大きく影響しているといえます。4月から本校に勤務しまだ半年ほどですが、学校の経営方針とコクヨの行われていること、そして私自身が大切にしている理念とがかけ合わさり「つなげるーぱ!」が本校の教育に深くつながるものだと確信しました。

教育と子どもたちの学びとのつながり、地域の人や企業と学校のつながりが、SDGs教育の学びの中ではとても重要だと思っています。港区は様々な企業の本社が多い場所です。企業によっては、SDGsを部署単位で行っていることもあります。近隣の地域や学校と何か取り組めないかと考えていることもあると聞いています。だからこそ、互いをつないでいくことも大切なのではないか、学校がそのための拠点の一つになれるのではないかと思いました。

子供たちが普段使っているCampusノートを高く掲げている様子

私たち教員は、学校の時間の中で様々な子どもたちに向けて、幅広く教えていかなければなりません。一方企業は、専門性が追及されています。その専門性を教員は学び、教員が学んだからこそ、子どもたちに教えることができる。この良い循環と協働こそ、パートナーシップをもってSDGsの目標を達成していくために、重要だと考えています。

子どもたちにどんな影響があることを期待していますか?

まだ子どもたちは、長期的に先を見据えて学び、実践しているわけではないことが多いです。そのため、今指導していることが直ぐに影響するものでもないかもしれません。「学び」とは、彼らがこれまで学んだことをもとに、ある時点で振り返ったときに気付くことが多いものです。だからこそ、今学んだことを大人になって活用できるようにしていく。そして、全員でなくとも一部の学生たちが行動にうつせるようになっていく。そのような、人生の糧となる学びを繋げていくことが学校の役割だと思います。

この時代の社会的な背景もあるかと思いますが、これまでのように与えられたものを確実にこなすスキルだけでなく、彼らが大人になったときには「自分で考えていく」力が必要です。そのため、ただ学ぶだけでなく彼ら自身が自分で考えることをトレーニングしていかないといけない。もはや、教師が教えることが全てではなく、子どもが考えることが重要なのだと思います。

インタビューに答えながら微笑む校長先生

子どもたち一人一人が考えることやできることは、そこまで大きくないかもしれません。しかし、何人かと知恵を寄せ合って、変えていくことならできる。そして、次の波をつくっていく。それが大切です。今は自分を中心において、友達・クラス・学年・学校という彼らにとっての「社会」を広げていき、その広がりごとに仲間をつくり、何かを変えていく。その「自分たちで考えて、変えていく」という経験をしていってほしいです。私たち大人や教員は、子どもたちと一緒に考えていくということが大切なのだと思います。

可児先生がどこか微笑みながら優しく俯いている様子

今日授業を受けた子どもたちは、来年は小学4年生になります。今日はリサイクルについて学びましたが、4年生になると「ごみ」について学びます。このままだとごみの量が増え続け、彼らが大人になる時には埋め立て処分場の許容範囲を超えてしまうことが想定されています。地球温暖化をはじめ、森林伐採やごみによる影響も増えていく。そのような社会で生きるかもしれない彼らは、考えているだけではいけないかもしれない。行動せずにはいられない状況になっているかもしれません。
私たち教員は、彼らの人生においてある一定期間かかわる大人の一人であり、一生一緒にはいられない存在です。ですので、この期間にできることを真摯に捉えて受け渡し、全員とは言わずとも一部であっても、ともに考え、ともに学んだことに芽が出てくれればうれしいです。そう信じて取り組みを続けると決めています。

執筆:田中 美咲
編集:中西 須瑞化
撮影:丸山 晴生

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