その人は、夢を手で書き実現する。「てがきびと」

第3号「コミュニケーションを図解する人」多部田憲彦

図を描く。しかも限りなくシンプルに。そしてコミュニケーションはより速く、より深くなっていく。

そうか、ひとくちに手書きと言っても文字だけとは限らない。図だって、そうだよなあ。というわけで今回のゲストは、図解改善士・多部田憲彦さん。

── ん? 図解改善士ってなんですか?

図解で物事や考えは整理出来る、課題は解決しやすくなる。そのためにより良い図解の仕方を考えましょう、と僕は提案してるんです。

── なるほど、図解という手法を改善して世に広めようというわけですね。

コミュニケーションのツールとして始めたんですよ、最初は。言葉だけより図解したほうが意思が伝わりやすいことに、タイで気付いたのがきっかけで。

── つまり、言葉の壁を乗り越えると。

ええ。前の会社に入社して2年目の6月に、いきなり「君は課長だ」なんて言われてタイの工場に赴任しまして。

── すごい! 大抜擢じゃないですか。

生産管理・購買・輸出入業務のカイゼンが任務だったんですが、10人の部下は全員タイ人なんです。僕のところへは毎日、日本からメールや電話がバンバン来る。でもそれを部下に伝える術がないんですよ。

── タイの言葉を勉強するヒマも無かったんだろうなあ、いきなりの赴任だし。

そうなんです。一応『地球の歩き方』って本は持ってたんですけど、巻末にあるタイ語の会話集って観光用のものでしかない。

── コップクンカー(ありがとう)とか。

そうそう、サワディカップ(こんにちは)とか(笑)。これじゃどうしようもないんです。もう3ヶ月めで視界が白くなって眼が見えなくなっちゃいました、ストレスのせいで。

── うわ、そりゃ大変だ!

そのとき、日本の工場でカイゼンを進めて来た、叩き上げの先輩の言葉を思い出したんです。「図にすりゃいいんだよ」って。

── あ、師匠がいらっしゃったんだ。

その先輩は手書きでさらさらっと図解して、問題点を実に分かりやすく説明するんです。それを真似てみようと。何しろ電卓も使えない相手ですから、どうやってコスト計算ってものを理解してもらおうかと考えて、そうだ、彼らの好きなもので図解すれば良いんだと思い付いたんです。で、ケーキで図解しました。

── ケーキ、ですか。

卵とバターと小麦粉がそれぞれ幾らで、だから出来上がったケーキの原価はその合計額だよ、という図を描いたんですね。そしたら、ひとめで理解してくれたんです。

── なるほど、そりゃ確かに分かりやすい。

結局3ヶ月でカイゼンが成功して、僕は6ヶ月間の滞在を終えて帰国しました。今ではタイ人スタッフ自らが図解を使ってるようですよ。

── その後、多部田さんは日産自動車へ転職されるわけですね。

ええ、ルノー日産共同購買本部で原材料調達のマネージャーを務めています。今度は、アメリカ、メキシコ、ヨーロッパに南アフリカと、世界11カ国が相手なんですよ。でも図解すれば全員と一遍にコミュニケーションが取れる。よりシンプルに、より注意を惹くことが出来るんですね。

── そうか、グローバルな現場で役に立ってますねえ。そのときも手書きで?

もちろん、大事なプレゼンなどはPCでパワーポイントを使って仕上げますけど、まずは手書きです。日産のマネージャークラスの方々は、元々手書き派が多くて、その意味では仕事のしやすい環境ですね。

── 多部田さんの手書き図解って、とても読みやすいですもんね。

いやあ、でも「こんな下手な図でいいなら自分にも出来そうです」って良く言われます(笑)。

  • 詳しくは、この著書をご覧あれ。『誰でもデキる人に見える 図解de仕事術』明日香出版社

  • ホワイトボードにマーカーで、手早く図解しちゃうわけです、多部田さんは

  • ご自分のポジションを図解すると、こうなるそうです

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図解とは、すなわち、問題点の「見える化」である

── 図解を勧める本って色々出てますけど、多部田さんが手書き図解にこだわる理由ってなんでしょう?

PCを使ってきれいに美しく描こうとすると、図解することそのものが目的になってしまいがちです。そうではなくて図解はあくまでもツールですから。それに手書きだと指差しやすいし、その図解に相手がさらに書き込んだりして共同作業になりやすいんですよ。いつでもどこでも、ささっと描くことが出来ますしね。

── じゃあ、紙と筆記具は常に持ち歩いてらっしゃる?

はい、今日ですとこういうノートにペン、それに百均で買ったホワイトボードにマーカーとか。仕事の後の飲み会でも、急にアイデアが浮かんで、その場で描いて検討し合ったりしてます。飲み屋さんの箸袋を広げて、割り箸と醤油で図解したこともありますよ。

── わ、さすが図解改善士!

でもね、僕、仕事以外でも図解が有効だと思ったことがあるんです。大学の先輩から飲み屋さんで相談を受けたときに。

── どんな相談だったんです?

その先輩、合コンが大好きで(笑)。年間100回は合コンしてるんですけど、「好きな人が出来ない」って言うんです。いや、好きな人は出来るんだけど、結婚まで辿り着けない。で話を聞きながら、紙ナプキンに十字線の図解を描きました。要するに先輩、外国の人にばっかり惚れるから、日本人と合コンしていても好きな人はみつかりません。そうしたら本人も納得して「なるほど~」と(笑)。

── プライベートな問題でも役に立つんですねぇ。

僕は普段仕事で使ってるから、皆さん、図解は出来るんだと思ってました。あれ? って感じましたね、そのとき。こういう身近な話題も、図解すれば問題点がはっきり見えるようになる。誰でも簡単に出来る図解という方法で、問題点が「見える化」するんです。ああ、そのことをもっと世の中に広めたい、1対多で伝えたい。そう思って2010年に勉強会を始めたんです。

── 図解は問題点の見える化、かあ。良い言葉だな。その勉強会が今も続いてるわけですね。

そうです。図の描き方を学ぶのが目的じゃなくて、図解を使えるようになる、図解を習慣化して悩みや課題の解決を目指す会なんですね。キャッチフレーズは「一日一図解」。

── どれぐらいの頻度で開かれるんですか?

僕も普段の仕事がありますから、月に一度、会場を借りて20名ほどの方に参加していただいてます。

注・公式Facebookページ “図解で改善”クラブ (図解勉強会) または公式メールマガジン で図解勉強会のご案内をしている。興味のある方は、ぜひどうぞ。

  • こちら、図解改善士としての生き様を図解

  • 先輩、だからダメなんですよ、の図解なり

  • 図解セミナーのワンシーン。実に和気あいあいと進行するのでありました

  • なるほど、むやみに図解すればいいってもんじゃないんだな、という図解です

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人生に悩んだ時も、図解は有効なのであった!

── 今日の勉強会も参加者の方々、とても熱心でした。

ありがたいことです。初めての方が半分、リピーターの方も半分ほどいらっしゃいました。

── 皆さん、その場で手書きで図解されてましたね。多部田さんが提唱されてるように、4種類のパターンをうまく使い分けてたなあ。

ええ、僕がお勧めしてるのは○、△、+、→の4種類だけです。それぞれの使う場面が決まってるので、慣れて来ると簡単に手早く図解することが出来るんですよ。

── でも、僕みたいに絵や図を描くのが下手だと、どうも気後れして…。

いえいえ、最初に申し上げたように下手で良いんです。それにまずメモを取って、それを整理しておくことです。そのメモを図解することで、相手に伝わりやすくなったり、自分の考えも整理されるんですから。

── まずメモという情報整理が必要なんですね。やっぱり普段から手書き用具は欠かせないわけだ。

そうですね、僕の場合はノートやポストイットを利用してます。

── でもメモが溜まりすぎると、これをデジタル化して保存出来たらなあと思ってしまいません?

そういうときはCamiApp(キャミアップ)というノートとスマホ用のアプリを使ってます。これはですね、この専用ノートに書いた手書きメモや図解をスマホで撮影すると、ほら、斜め撮りしても補正してきちんと読みやすくデジタル保存してくれるんですよ。

注・詳しくはこちらをご覧あれ。CamiApp(キャミアップ)

── あら、便利! うまく手書きとデジタルと使い分けてらっしゃいますねぇ。なんだか、自分にも出来そうな気がしてきました。

そうそう、最近は「人生の方向性を明確にしたい」という、人生相談的なものも増えて来たんですよ。図解がうまく出来るようになると、問題点がはっきりするから悩みも解決しやすくなるんですね。

── う~ん、方向性が未だにつかめない自分としては、やってみなくちゃです…。

ぜひぜひ(笑)。

── 多部田さんは、これからも本業と両立して図解改善士をやって行かれるわけですね?

はい! 自分の持ってる図解というスキルを、勉強会というアウトプットで活かして、ひいてはニッポンを元気にしたい、というのが僕の最終的な志なんです。そのためには、もっともっとカイゼンし続けて行くつもりです!

2013年9月26日

  • これぞ、デジタル保存可能なCamiApp対応ノートなり!

  • ノートに書いた手書きメモや図解をスマホで撮って、簡単にデジタル保存できます

  • CamiAppオフィシャルアンバサダーでもあらせられるぞ

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多部田憲彦

日産自動車(株)ルノー日産共同購買本部
リージョナル・サプライヤー・パフォーマンス・マネージャー

1979年千葉県銚子市生まれ
小学3年生で、吃音(どもり)症となって以来、
人との会話が苦痛になり、孤独な学生生活を送る。
2002年光ファイバー製造メーカーに入社。
2003年入社2年目で同社タイ工場のカイゼンを任され、
言葉が通じないタイ人相手に、図解で意思疎通し、
6ヶ月でカイゼン業務を完了し帰国。
2007年日産自動車(株)に転職。
世界11ヶ国から、年間1000億円以上の原材料を調達。
2011年課題達成優秀賞を受賞。ゴーンCEOから賞状を頂く。

週末は、育児の合間に、2010年から図解勉強会を開催。
これまで、800名以上の受講生に、
図解を使った問題解決方法(=図解改善術)を伝えている。
口コミが広まり、NHKやアントレなど、メディアからの取材も多い。

以下の掲載は終了いたしました。
 第2号「勝利への道を書く人」 田中雅美
 第10号「アイデアの源泉を書き出す人」 荻上直子