トップコミットメント

ヒューマン&カルチャー本部長メッセージ

越川康成

コクヨの新たなステップの
原動力である社員のクリエイティビティを解放する。

執行役員 ヒューマン&カルチャー本部長
Well-being部会長越川 康成

「共感力」と「人間性溢れるクリエイティビティ」

当社は創業時からこれまで、文房具からオフィス家具、空間構築へと事業領域を拡げながら常にお客様の生活に寄り添い、お困りごとを解決し「学ぶ」「働く」等の生活シーンをより良いものに変えてきました。そうした伝統の中でコクヨの社員は「共感力」と「人間性溢れるクリエイティビティ」を独自の強みとして磨き上げてきました。当社はお客様に喜んでいただけるものを作りたいという思いがなによりの原動力になる人材の集まりであるからこそ、彼らが生み出す模倣しがたい発想はビジネスにおける差別化要因になっています。このような創業から続く企業文化とコクヨならではの価値創造のアプローチは、これからも磨き抜くべきコアコンピタンスだと考えています。

そのような共感力と創造性に富んだ集団であるにもかかわらず、2022年に私が入社した当初は、社員一人ひとり、そして組織全体が「見えない籠」に囚われているように感じました。長い歴史を持つ企業が陥りやすい状態の一つでもありますが、現状のビジネスモデルが強固過ぎるあまり、各自が属する事業ドメインに自身の可能性を閉じ込めてしまっていたのです。もちろん、新しい価値を提供していこうという努力は、絶えずそれぞれの事業で行われています。コクヨは直近の約20年間を連結売上高3,000億円規模で推移していますが、コクヨ人材の強みを持ってすれば、新しい事業領域や海外でも成長するポテンシャルは十分にあると考えています。私は社員一人ひとりのポテンシャルを解き放つための仕組みを整えて強化していくことが自身に課せられた使命だと捉えています。それらを実行するには、これまでのコクヨにはなかった新しい知見を経営に注ぎ込んでいく必要があります。私は、これまで成長企業に身を置くなかで蓄積してきた知見を自身のキャリアの集大成として当社の経営に注ぎ込みながら、一人ひとりの能力を開放し、当社の力強い成長に繋げていく考えです。

「第4次中期経営計画Unite for Growth 2027(以下、第4次中計)」では、「森林経営モデル」をアップデートし、「体験価値」を国内外で拡張していくことを基本方針としていますが、従来の枠組みに囚われた方法では未知の領域に向かうチャレンジは生まれません。そこで人材戦略においては、「コクヨらしいクリエイティビティを最大化させる」ことを根底思想として各種施策を推し進めています。

一人ひとりに光をあて、創造性を解放する

人材戦略においては、当社の価値創造の源泉であるクリエイティビティと、それをさらに高めるためのリーダーシップの強化を意識しています。

私たちは自律協働社会の実現をビジョンとして掲げています。誰もが自律し、他者と関わり合いながら暮らせる社会を目指す私たちがまずそれを体現すべく、一人ひとりに光をあて、個々人の潜在的な可能性を共に見つめなおすことで挑戦意欲を引き出す取り組みを多面的に進めています。社員一人ひとりの可能性について複眼で議論する人材育成会議はもちろんのこと、部下のヨコクとキャリアの実現に向けて上司と部下で対話する1on1など、会社の成長と個人の成長を連携させる施策を増やしてきました。

当社では従業員エンゲージメントサーベイ「wevox」を月次で展開し、変化をモニタリングしています。

これまで実施してきた人材戦略の取り組みによって、エンゲージメントスコアはこの2年間で3ポイント向上し、大変大きな成果を得ることができたと自己評価しています。これに伴い、組織風土も未来志向へ徐々に変化してきています。「森林経営モデル」のアップデートによって、管理職層をはじめとする社員のビジネスに対する視点が「今・これまで」から「これから」へ角度を移しています。この変化に合わせ、中長期的な視点での企業価値の向上を社員も意識してもらう目的で、まずは一部の幹部社員から業績連動型の株式報酬制度を導入しました。第4次中計でEBITDAを軸に据えた意図と同じく、中長期の成長に期待感を抱いてもらうためにも、報酬の一部を中長期の企業価値に連動させていきます。

また、社員一人ひとりのクリエイティビティの種を芽吹かせて大きな木に育てていくためには、それを後押しするリーダーシップが必要だということも、「森林経営モデル」のアップデートによって社員のなかで現実味を帯びてきているように感じます。これからグローバルに事業を拡大していくうえで求められるリーダーシップとは、不確実な未来を恐れずチャレンジすること、重要な局面で物事の判断を行うこと、または全く異なる文化を背景に持つ人々とチームを組むといった、体験価値拡張戦略を推進するうえで欠かせないスキルであるということの認識がリーダー層を中心に深まりつつあります。

さらなる組織風土の変革に向けて

光をあてた一人ひとりのクリエイティビティをビジネスに繋げていく必要がありますが、その手段のひとつである「意図ある異動」の推進は、今年最も注力すべき課題のひとつです。昨年から一人ひとりの可能性を解放するための異動を行ってきましたが、これまで組織としてスキル向上を目的とした異動に馴染みがなかったことから、今年はさらにフレキシブルに推進し、実績としての異動件数を積み重ねていきます。「意図ある異動」は、「森林経営モデル」に組み込まれるナレッジ共有の実践においても有効だと考えています。事業の垣根を越えて、特にリーダークラスが異動することで事業内に留まっている良い慣習を知る機会になります。また、異動を通して今までと違う道に足を踏み出し、その経験のなかで成功体験を得た人材を増やすことで、異動やチャレンジに対する興味を社内から広く引き出すことが今後のさらなる組織風土改革にとって重要だと認識しています。

世界から愛される企業に

コクヨが自律協働社会の実現を目指すために整えてきた仕組みの成果が徐々に見え始めています。今後、自分の可能性を見出してチャレンジに踏み出す社員がさらに増えていったときには、ビジネスにおいてより明確な成果が出ることでしょう。私はコクヨの人間らしさ溢れるクリエイティビティが生み出す無限の可能性を信じ、期待しています。一人ひとりに光を当てた人材戦略を通して、コクヨを将来、グローバルに愛される企業にするために、引き続き、責務を果たしていきたいと考えています。