トップコミットメント
CSV本部長メッセージ
社会価値と経済価値の両立を目指す
コクヨは創業時からこれまで長い歴史の中で事業を通じて社会のニーズや課題に応える、という姿勢を貫いてきました。現在のコクヨは創業時と異なり、ステーショナリーやファニチャー、ビジネスサプライ流通、インテリアリテールと事業が多岐にわたり、企業としての規模も拡大しています。一見すると事業間の関連性が見えづらい部分もあるかもしれませんが、共通しているのは社会のニーズの変化に対応し常にお客様や社会の課題解決に注力してきたことであり、その結果が現在の事業ポートフォリオを形作ってきました。私が日々の仕事で社員と接する時も、事業を通じて社会課題の解決に貢献する精神が、コクヨの文化として脈々と受け継がれていることをひしひしと感じています。
現在のコクヨは「ニーズや課題に向き合い製品やサービスを開発・提供する」という姿勢を崩すことなく、より長期視点での未来を見据え、そこからバックキャストして現在成すべきことは何か、という視点で経営を行っています。具体的には、コクヨが実現したい社会像を定義した未来シナリオ「自律協働社会」をもとに、中期的に取り組むべき経営課題をマテリアリティとして特定しています。現在のマテリアリティとしてはパーパスと未来シナリオをもとに、社会性・経済性の2軸から、コクヨの創出すべき社会価値・経済価値の最大化に向け取り組むべき課題を洗い出しています。
コクヨのマテリアリティはコクヨ自身の持続的な成長、すなわち経済価値の視点を取り入れていることで、より本質的なマテリアリティとして運用しています。特に、「森林経営モデルの実現による事業領域拡大」は、「自律協働社会」の実現に向けた体験価値拡張という社会価値の創出と、それを通じたコクヨ自身の収益基盤拡大という経済価値の創出の両立に向けたテーマであり、コクヨの中長期的な企業価値向上の中核的な課題です。
しかし、現在の事業活動がどれほど社会価値と経済価値の両方に結びついているのか、まだ明確な形で示せていないことが課題と捉えています。例えば、「社会価値創出に向けたマネジメントシステム変革」の2030年目標である「社会価値と経済価値を両立している売上高100%」はコクヨの「自律協働社会」に向けた想いを強く表しているものですが、経済価値創出に向けた明確なロジックを未だ、十分示すことはできていないと感じています。目標に合致する事例が複数創出され始めていますが、マテリアリティの納得性はさらに高める必要があります。
インパクトの可視化に挑み、ロジックを定める
そうした課題を踏まえ、「第4次中期経営計画 Unite for Growth 2027(以下、第4次中計)」期間中は、未来シナリオやマテリアリティの社内外への浸透を優先課題として取り組みます。具体的には、コクヨの事業やサステナビリティ、人材戦略といったそれぞれの施策と社会価値のつながりを可視化し、今回策定したロジックモデルの精緻化を進める方針です。
コクヨの事業の根幹はお客様への「共感共創」と「実験カルチャー」により、新たな製品の体験価値をデザインすることにあり、それを生み出す原動力は「クリエイティビティ」という抽象的なコアコンピタンスです。事業活動と抽象性が高い社会価値、強みと経済価値との連関を社内外に十分説明できれば、株主投資家の皆様はもとより幅広いステークホルダーの戦略に対する納得度も高まり、社員の社会への貢献意識、モチベーションの向上にもつながります。
そうした考えのもと、「長期ビジョンCCC2030」に向け、コクヨがどのような社会価値・経済価値を生み出そうとしているかの可視化を進めています。具体的には、①自分を高め続ける人が増える、②多様な人との交流が増える、③社会課題を創造的に解決するチームが増える、の3要素を最終的に創出したいインパクト「自律協働社会の実現により、社会課題が解決され続ける」に向けた重要なアウトカムとして定めています。その上で、コクヨの製品や事業がどのようにインパクトを創出しているか、それがどのような経済価値を生み出すのか、をロジックモデルに落とし込む試みを進めています。現在は策定したロジックモデルの精緻化を進めているフェーズですが、今後は事業ごとに創出する社会価値・経済価値をモニタリングし、事業戦略に反映するサイクルを確立していきたいと考えています。
「ダイナミックマテリアリティ」として、常に有効性を検証し続ける
「自律協働社会」の実現に向けたマテリアリティの取り組みが本当にステークホルダーから支持されるものなのか、それは今後コクヨが持続的に成長し続けることによってはじめて証明されるはずです。いくらコクヨが社会価値の創出を主張し続けても、真に社会から必要とされない企業は経済価値を創出することはできません。持続的な成長に結びつけるためにも、マテリアリティの定期的な見直しや実効性のあるKPI設定が不可欠です。コクヨは「ダイナミックマテリアリティ」の考え方を取り入れ、外部環境や事業戦略の変化に合わせてマテリアリティの定期的な見直しを行っています。
マテリアリティの特定やインパクトの可視化は、情報開示や外部評価向上のためだけに行うものでは決してありません。コクヨの価値観を社内外に発信し続け、事業活動と結びつける。さらには事業や社員一人一人の行動に浸透させていく取り組みを継続していきます。
価値観の発信やマテリアリティの浸透に貢献
コクヨの取り組みに対し、社内外からご支持をいただくためには、コクヨが重視する価値観を共有し続け、それにそぐわない行動は常に変えていくことが欠かせません。コクヨが目指す「自律協働社会」と、その実現に向けた取り組み方針と指標であるマテリアリティが私たちの軸です。CSV本部長として、マテリアリティやインパクトという価値観の、事業や社員一人一人への浸透に向け、様々な取り組みを進めていきます。