コクヨのサステナビリティ CSOメッセージ
CSO Message成長性のある事業テーマへの
ダイナミックな投資を実行して
いきます。
取締役 執行役 CSO 経営企画本部長内藤 俊夫
Kokuyo Hong KongのM&A投資により海外展開で有利な状況へ
「長期ビジョン CCC2030(以下、CCC2030)」および「第3次中期経営計画Field Expansion 2024(以下、FE2024)」が進む中で、私からは投資を中心とした財務戦略の現状についてお伝えします。まずファニチャー事業の状況ですが、2022年度は新規の案件が少ない反面、リニューアルの案件が多かったことから、事業においてやや混乱した面があります。これに対して、組織の体制を整備するとともに、生産性の向上へと舵を切ったことから、2023年以降、成長の軌道に乗っていくものと考えています。特に日本事業については収益性の強化に注力しており、立て直しに向けた取り組みが加速しています。
一方、海外ファニチャー事業については従来、生産拠点を持たないことでの競争力不足が課題でしたが、2022年に香港のオフィス家具メーカー「HNI Hong Kong Limited (現社名 Kokuyo Hong Kong Limited)(以下、Kokuyo Hong Kong)」を買収したことで、中国および東南アジアでの事業拡大に向けた道ができました。顧客層に関して、コクヨがどちらかというと上位の市場を狙っているのに対して、Kokuyo Hong Kongは中位以下で強いことから、両者で重複していることが少ない上、今後はコクヨとKokuyo Hong Kongのそれぞれが調達する商品のクロスセルといったことも可能になります。このように海外展開における基盤整備ができたという点は大きな成果と捉えています。
コクヨでは、これまでも代理店の改革などを通じて海外戦略に注力してきたものの、販売の機能だけでは競争力を発揮できない点が悩みどころでした。これに対して、Kokuyo Hong Kongをグループ傘下においたことで商品の幅が一気に増えるとともに、商品の調達コストを大幅に下げることが可能になりました。それとともに、コクヨブラントを活かした販売を通じて、Kokuyo Hong Kongの商品の販売価格を上げることができ、収益性の向上が見込めるという点も大きな利点です。現状、M&A投資の効果が期待できるものとなっています。まずは中国市場での展開で成果を出していきますが、今後、シンガポールやマレーシア、インドネシアなどの市場を開拓できるものと考えます。
事業領域の拡大を見すえた取り組みが加速
ステーショナリー事業については、日本事業における筋肉質化がかなり進みました。加えて、海外市場では中国の事業がゼロコロナ政策でダメージを受けたものの、2022年下期から市場が回復傾向にあります。それと大きく変わった点で言えば、日本の戦力を中国での成長に振り向ける日中連携による商品開発が始まったことです。そして、2023年からは組織をグローバルステーショナリー事業本部としたことで、事業拡大の基盤が整いました。
それと通販/カウネットについては、既存のお客様の評価が高いものの、新規のお客様をいかに獲得するかが課題でした。従来、デジタルマーケティングが弱く、競合と比べて露出が少ないことが問題点として挙げられます。これについても、外部から専門家を招聘して取り組みを強化していることから、挽回に向けた動きが加速していきます。
以上の通り、いずれの事業についても、新たな成長に向けた準備が整ったといってもよいでしょう。これまでのコクヨにおいては、既存事業における売上拡大が戦略の主眼であり、事業の領域を広げていくということができませんでした。これに対して、事業の捉え方を大きく変えたことで、従業員の意識も変わり、実際のところ、事業領域の拡張を見すえた事業のネタが出てきています。
「実験カルチャー」の仕組み化に基づく新規事業
コクヨに息づく「実験カルチャー」の仕組み化に基づく取り組みも始まっています。例を挙げますと、一つは「THE CAMPUS FLATS Togoshi」という新たな集合住宅の提案です。これは、「働く・暮らす」の実験場である「THE CAMPUS」の新展開となるもので、住みながら、いつかやってみたかったことを試せる集合住宅をめざして企画されました。まずは1棟目を2023年8月、東京都品川区・戸越にオープンし、収益化が見込めると判断したら、「THE CAMPUS FLATS」として2棟目、3棟目と展開していく考えです。
もう一つ、コンテンツビジネスの事例を紹介しますと、親子のコミュニケーションを促進する、新ブランド「Hello! Family.」シリーズを2023年3月に立ち上げました。これは、多様化するワークスタイルやライフスタイルに合わせた、次世代の家族コミュニケーションをサポートするものです。家族の行動を見守る掲示板アプリ「ハロファミアプリ」をはじめ、GPS機能のついたIoTデバイス「はろここ」、こどもの忘れ物の有無を見守るタグ「はろたぐ」、スマホとメッセージ交換できるモニター「はろもに」などで構成されています。今後、利用者を獲得していくことで、コクヨにおけるコンテンツビジネスの拡大を目指していきます。加えて、FE2024における成長投資枠を活用しながら、新規事業の創出を継続して行っていくことで、事業領域の拡大を着実に進めていきます。
成長投資枠を有効に活用し、成長モデルを実現
コクヨにおける財務戦略については、投資家・株主の皆様に対して配当性向40%の安定した配当を継続していく一方、成長戦略への投資を強化していきます。2023年から成長戦略会議を立ち上げています。ここでの議論を通じて成長投資枠300億円の使途を明らかにしていきます。すでにKokuyo Hong Kongや国内家具の製造・販売を行う家具メーカー、オリジンの買収で約100億円を使いましたので、残りの200億円については、ASEANやオーストラリアなど事業エリアを拡大するためのパートナーを獲得する費用にあてたいと考えています。
また、グローバルステーショナリーの成長に関しても、適切なパートナーを見つけることが重要です。いずれにしても、海外展開におけるM&Aが投資の優先度として高いです。なお、成長投資枠の300億円のほかに、設備などの更新や情報システムへの投資に対して定常投資枠として200億円を設定しています。
今度の投資に基づき何を強化していくかという点ですが、日本については市場の拡大が見込めない中、生産能力の増強ではなく、付加価値の高い商品の生産へのシフトが重要と考えます。コクヨでは、おおよそ30%が自社工場で生産し、70%を協力工場で作っています。そのため、品質とリードタイムに対応できる調達先のネットワークを有しており、ここをうまく活用していくことが今後の成長に欠かせません。開発や設計は自社に残しつつ、生産は最適なところに委託するという流れが進むものと考えます。
それと、事業領域の拡大に向けて人材基盤の強化も不可欠です。現状で人材の絶対数が足りない上、従業員の構成も50歳以上の割合が多いので、主に新入社員の採用を通じて、次の時代の成長戦略を担う人材を育てていくことに注力していきます。