商品化された作品

白と黒で書くノート

〈2018 優秀賞〉

灰色の紙に黒と白の文字を書く、ノートとその書き方の提案です。
紙の色に対して暗い色の文字と明るい色の文字は同時に読みにくいという
視覚が持つ性質を利用することで、大切な部分を際立たせる、
周辺情報を十分に記せる、光と影を描けるなど、ノートの新しい使い心地が生まれます。

  • 白と黒で書くノート
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作品紹介ムービー:
https://youtu.be/pSuv18vGdPc(YouTube)
デザインコンペ時の作品と実際の商品とは仕様が異なるため、作品紹介の中で表現されている作品の特徴等は商品の効果・効能を示すものではありません。
特に実際の商品は色覚異常の方への視覚的効果を目的とするものではありませんのでご注意ください。

東京・原宿の「THINK OF THINGS」およびコクヨ公式オンラインショップ「コクヨショーケース」にて販売中。

作品から商品へ

「BEYOND BOUNDARIES」をテーマに開催したコクヨデザインアワード2018。優秀賞を受賞した「白と黒で書くノート」は、視覚の“境界”をテーマとした作品で、明度のコントラストを利用したノートの新しい使い方を提案します。

商品化を担当したコクヨの吉田慎平は、日頃からノートの開発やデザインを担当しており、「白と黒で書くノート」に幅広い可能性を感じたと言います。「コンセプトが明快な商品だったので、具体的にどのような使い方があり得るのか、まずはサンプリングによって使用例を集めることで、商品の立ち位置を見定めていきました」。
使用例が集まるにつれて、単に白と黒を使い分けてまとめるだけでなく、マインドマップのような図解や、イラストを伴う使い方が多いことが見えてきました。ノートの平面を自由にとらえながら、白と黒のペンを使ってアイデアを発散したりまとめていく使用シーンが浮かび上がってきました。

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サンプリングでの使用例では、実に多様な使い方が見えてきた。

光と影が表現できるような楽しさも。

商品化には作者の中田邦彦さんにも参加していただき、コクヨのリサーチや試作を共有しながら、作品のコンセプトと具体的な商品仕様を紐づけていきました。
「事前に集めていただいたたくさんの使用例や、さまざまなサイズや仕様による試作に驚きました。例えば試作の中にあったリングノートのタイプは、ノートの中央が分断されているので、思考を広げていくような使い方には合わないかもしれないというお話を聞いて、それならとじ具を使わない製本方法が良い、なるべくフラットに開ける方が使いやすい、など納得感を持って仕様を決めていけました」(中田さん)。

中田邦彦さん

中田邦彦さん

ノートのサイズは、定形でない少々特殊なサイズを採用しています。最近は、仕事用のノートとして大きすぎないA5サイズの需要が増えています。今回はA5サイズをベースとしながらも、コクヨにとって初めてのサイズに挑戦しました。ノートを開いたときに、パソコンのディスプレイでも採用されるアスペクト比16:10のサイズになるように設定されています。
「パソコンで検討した内容をノートに持ってきたり、パソコンの手前にノートを置きながら作業するなど、パソコンとノートを行き来する使い方にとても便利なサイズです」(中田さん)。

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このように、パソコンとの併用にちょうど良いサイズ感。
フラットに開く製本技術により、見開きで活用しやすい。

グレーの紙色や、罫線の印刷も細かい検証を重ねた。
白と黒のインクが同等に映えることを第一に考えられている。

「アワードでは、作品としてのわかりやすさを意識していました。表紙を白と黒の筆記具が描かれたデザインにしたり、ノートのサイズも一般的なB5サイズにしたり、写真一枚でコンセプトが伝わることを心がけていました」。
一方で、商品化のプロセスを振り返り、作品づくりとは少し異なるアプローチだったと中田さんは話します。
「コクヨさんのノートとして日用使いすることに徹底的にこだわる姿勢がとても新鮮でした。普段仕事で家電のデザインに関わっていますが、それらと比べても、手の中におさまる文房具のデザインは、より人の身体に近い視点が求められるように思います。このノートも製本方法、サイズ、紙の種類、表紙のデザインまで、日用品としての使い勝手がよく考えられています。自分自身としても長く使っていきたいと思える商品に仕上がりました」。

コクヨ開発担当 吉田慎平

コクヨ開発担当 吉田慎平

開発を担当したコクヨの吉田は、今後のユーザーの使い方の広がりに期待しています。
「白と黒で書くという設定はありながらも、その分色々な使い方が考えられて、ユーザーに委ねる部分が多いノートです。また、白と黒で書く使い方、グレーのノート、16:10のサイズなど、これだけノートをたくさん開発してきたコクヨにとっても初めての挑戦が多いノートです。ぜひ実際のユーザーの皆さんの使い方も教えていただきながら、次の展開が考えていけたら面白いですね」。