結の森座談会
第四回 親から受け継ぎ、子へ受け渡す山仕事
銘木・幡多ヒノキを産む林家さんに聞く
「結の森プロジェクト」では、山から里へ、里から街へという木材と製品の流れの姿を見直し、そこに関わる人々のつながりを可視化しつつ、新たに構築していきたいと考えています。第4回は四万十町(旧大正町)で代々林業を営んでいる林家の方に、山の森作りや、木を育てる想いについて語っていただきました。

土肥 明さん
1943年、四万十川中流域の旧大正町に生まれる。代々受け継いでいた幡多ヒノキの用材林を育てて出荷する山仕事を続けて40年。現在も年間を通じて木材を町内の木材集積所に出荷し、個人林業主としては大正地区で最大量の木材を生産している林家さん。
林業は一代ではなりたたない仕事
いま、全国的に多くの山主が山を放置するか、管理を森林組合に任せている状態ですが、土肥さんは一年中、ご自身が所有される山の森に入って山仕事をされていますね。他の山主とはどういった点で条件が違うのでしょうか。
植林後の初期の手入れ不足でシイ・カシの雑木林に飲み込まれたヒノキ植林地。雑木との付き合い方も、林業の大切な技術のひとつなのだ。
「うちは代々、造林業を営んでいましたからね。経営とか技術の引継ぎがないと、山の仕事は難しいです。山のサイクルは最低でも10年単位ですから、自分の代だけではなりたたない仕事なんですよ。植林に補助金が出て、みんなが一斉にヒノキを植えて山の様子が変わってしまいましたけれどね。」
四万十川流域の森の大半を占めているスギ・ヒノキ林の大半は昭和40年代の植林政策で植えられたもので、多くは小規模の山主がそれまでの雑木林(多くは燃料の薪炭用のシイ・カシ林)から樹種を転換したものですからね。
「うちの持ち山は、その8割を占めるスギ・ヒノキの用材林で約70haありますが、手入れが行き届いてないところも多いです。でも、雑木が繁茂してヒノキを囲んでいるようなところは、むしろ雑木を残しながら育てていきたいですね。」
雑木を残すと、どういった点が優れた森になるのですか?
「木材の生産面では、とくに秋に葉を落とす落葉樹の木の中で育てると、良い材質の木になります。地面に落ちた葉が腐葉土を形成して養分を供給してくれますからね。
雑木も放っておくと、照葉樹(常緑樹)のシイやカシに覆われてしまい、落葉樹や、いろいろな花や実をつける木は負けてしまうんです。
西日本の暖かい気候ではね。だから、ヒノキやスギばかりでなく、シイやカシも適度に切って手を入れていかないと真っ暗な森になってしまいます。自然の植生の森は切るなという人もいますが。」
昔は燃料用にシイやカシが切り出されていましたが、今はまったく放置されていますからね。人が関わることで森に光が入り、様々な植物をはじめとする生物の多様性が育まれてきたことを、もっと多くの人に知ってもらう必要がありますね。
健全な森の土壌は養分に富んだ黒土が堆積するけれど(上の半分の土壌)、荒廃した森は赤土(下の半分の土壌)がむき出しになり、草木も育ちにくくなってしまう。
「遅まきながらですが、私もヒノキ林の中に(落葉樹の)クヌギを植えているんです。将来は用材用の植林時にもクヌギを1割植えて、ヒノキは徐々に間伐しながらいろんな雑木が育つようにしていくのが理想的になるのではないかと思っているんですよ。」
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