その人は、夢を手で書き実現する。「てがきびと」

第15号 「溢れる好奇心を緻密に書く人」山本健太郎

興味のあることをとことん探求し、表現する。そこには、どこまでも広がっていく知の世界があった。


第15号 「溢れる好奇心を緻密に書く人」山本健太郎

久しぶりの雨となった土曜日の午後、川崎市の住宅街にあるお宅を訪ねると、2階の彼の部屋に通された。子供らしく様々なキャラクターグッズがところ狭しと並べられている。ベッドの上には今日のために用意してくれた作品の数々。
テレビにも出演したことがあるから顔を知ってる方もいらっしゃるだろう、そこには小学生にしては大柄な(この春からは中学生だけど)、でも顔にはあどけなさの残る山本健太郎くんが待っていてくれた。どうか、よろしくね、と名刺を差し出したら……

文房具はちっちゃいのに、いろんな工夫が詰まってるんです

あ、よろしくお願いします。

じゃじゃ~ん、出来たばかりの健太郎くん名刺をゲット!

じゃじゃ~ん、出来たばかりの健太郎くん名刺をゲット!

── ん? 名刺持ってるの?

うん、どうぞ。

ときには辛辣なレビューも入るけれどね、これも文房具を愛するがゆえです

ときには辛辣なレビューも入るけれどね、これも文房具を愛するがゆえです

── うわ、全部、手書きだ! お、裏にも手書きで「おせわになります~」だって。それにしても小学生と名刺交換したのは初めての経験だな。

今日、出来上がったばかりなんです。

── そりゃ嬉しいなあ。ありがとうね。ふ~ん、名前は鉛筆の手描きイラストの中に書いてあるし、その上には文房具のイラストも描かれてる。さすが、『文房具図鑑』の作者だけあるな。ねえ、早速だけど例の『文房具図鑑』見せてもらっていいかな?

これが噂の『文房具図鑑』オリジナル!世界に1冊しかありません

これが噂の『文房具図鑑』オリジナル!世界に1冊しかありません

はい、どうぞ。これがそうです。

── ほう、噂通りの力作だねえ。どのページにも文房具の詳細なイラストとコメントがいっぱいだ。いや、詳細、なんてもんじゃないね。もう微に入り細に入り語りつくしてるって出来栄え。これ、夏休みの宿題として作ったんだっけ?

最初はそんなつもりじゃなくて。ただ、好きだから書き始めたって感じ。

── もともと文房具が好きだったってこと? でも普通、小学生ってさ、キャラクター付きのとか、可愛い文房具が好きなんじゃない?

ああ、僕も2年生くらいまでは可愛いのが好きだったんですけど。

── でも何かのきっかけで、こんなにマニアックに変わっちゃったと。

学校で消しゴムを弾いてぶつけあって、机から落ちたら負け、って遊びが流行ってて。消しピンっていうんですけど。

── ふむふむ。

で、じゃあ一番大きい消しゴムでやってやろうと思って。そこから調べ始めたら、消しゴムや文房具って、いろいろと細かい工夫が詰まってることに気がついたんです。

── なるほど、研究者・山本健太郎の誕生だな。だけど良く夏休みだけで仕上げられたね。

いや、5年生のころから書き始めてたんです。別に宿題にしようとかじゃなくて、ただ面白いから。最初は自分でも、そのうち飽きるだろうなあと思ってたんだけど。

見よ、この緻密さと完璧なるコメント。イラストも原寸大です

見よ、この緻密さと完璧なるコメント。イラストも原寸大です

── 飽きることなく、1年近くかけて完成しちゃったわけだ、全部で100ページの大作が。

『文房具図鑑』以前に作った歴史書(?)博物学者にも向いてると思うんだけどなあ

『文房具図鑑』以前に作った歴史書(?)博物学者にも向いてると思うんだけどなあ

ホントは1ページ失敗して破っちゃったから、実は100ページにちょっと足りない(笑)

将来の夢はギャグ漫画家になること

── コクヨの文房具もたくさん登場してるね。うわあ、絵もそっくりに描いてある! ええと、これが……

『ミリケシ』、自分でも使ってます。

── なになに、「1mm以下のカドから6mmまでの5つの機能(消しはば)をもつおもしろい消しゴム。ふつうの消しゴムはノートの1行だけ消そうとすると下のだん、上のだんもきえてしまうがコレさえあれば安心」なるほどなあ。このイラストに付いてるキャプションみたいなのは?

6とか5とかカドに書いてある数字は、使って消しゴムが減ってきてもずっと消えないんです。

使った消しゴムのカスを丸めてみるとこうなるんですって。マニアックでしょ

使った消しゴムのカスを丸めてみるとこうなるんですって。マニアックでしょ

健太郎くんお気に入りの『ネオクリッツ』です

健太郎くんお気に入りの『ネオクリッツ』です

── へえ。お、こっちはそこの机の上に置いてあるやつだね、『ネオクリッツ』

はい。これも、ずっと使ってるんです。

── ええと、「もう筆箱に使っている人も多いだろう。底に固い物が入っているので、ちゃんと自立し、ペンケースからペン立てになるべんりな筆箱」要所要所に赤でアンダーラインまで付けてるんだ。おや? オマケ情報なんてのも書いてある。

へへ。

── 「このネオクリッツ、筆入れ以外にも、けしょう道具入れなどにも使える」 う~ん、なんだか公式ホームページより楽しめる作りだねえ。それにしてもイラストが上手だね。絵を描くの、好きなの?

ヘタするとカタログや公式ページより役に立ちそう

ヘタするとカタログや公式ページより役に立ちそう

幼稚園のときから4コマ漫画描いてて。将来はギャグ漫画家になるのが夢なんです。そこにあるのが、これまでに描いてきた漫画なんですけど。

── ホントだ、何冊もある。「お父さん」シリーズなんてのもあるね。

それは小学校に入ってから描いたものですね。

幼稚園から描きためた4コマ漫画もたくさんあります

幼稚園から描きためた4コマ漫画もたくさんあります

── ほほう、健太郎くんは博物学者に向いてると思ったんだけど、漫画家もいいかもね。

うん、漫画家になるために、今はGペンやさじペンの練習中です。

── む、すでに本格的。漫画といえばさ、この『文房具図鑑』、途中で漫画っぽいページや、いきなりクイズなんてページも出て来るよね?

自分が面白いと思うものから書き始めていったんですけど、だんだんネタ切れして途中で疲れてきて……あ、ピンチ!って思って作っちゃった(笑)。

── それが構成として生きてるんだよなあ。雑誌でもそうだけどね、ずっと図鑑的なページだけじゃ読むほうも疲れちゃう。ところどころに、こういう息抜きが入ってると楽しめるんだよ。まるで台割があったかのような作りだな。

授業で使うノートまでサービス精神いっぱい

授業で使うノートまでサービス精神いっぱい

ところどころに息抜きページが入る、この構成がにくいんだなあ

ところどころに息抜きページが入る、この構成がにくいんだなあ

う~ん、なんか、細かいこと、いろいろ書くのが好きなんですよね。

── もしかしたら健太郎くん、編集者にも向いてるかも。例えば、この学校で使ってるキャンパスノートの表紙にも、書き込みがあるよね?

あ、これですか?

── うん、「算数じゃない、社会だ!!  かと思ったらやっぱり算数でした」って。これなんて、読むひとを楽しませたいというサービス精神の現われだもの。

あはは。これはホントに算数のノートがなくなっちゃったって思って、あせって探してたら実は算数のだったんです(笑)。

うん、確かに文房具も文房具図鑑も健太郎くんも、最高だぜ!

うん、確かに文房具も文房具図鑑も健太郎くんも、最高だぜ!

僕、メモ魔なんです

── ところでさ、てがきびととしての質問なんだけど、こうやっていろんな作品見てると、健太郎くんは細字のペンや硬めの鉛筆なんて好きじゃないでしょ?

うん。昔は鉛筆ってHBが多かったらしいんですけど、最近の子供は筆圧が弱いから2Bとかが多いんですって。

── こりゃまた専門的なご意見。で健太郎くんは?

僕は筆圧強いんですけど、逆に3Bとか4Bとか使うのが好きなんです。ペンでも細字だと紙に引っかかる気がするし。ガッガッって書きたいの。

これだけの力作ですからね、ウラ表紙に書かれた定価は3兆円(税抜き)ですわ

これだけの力作ですからね、ウラ表紙に書かれた定価は3兆円(税抜き)ですわ

── 分かるな、それがキミの手書きの味になってるもの。でもパソコンやスマホにはまったく興味がないの?

そんなことないです。文房具のこと調べるのにネット使ったりもするし。

── だけど、てがきびと。

僕ね、メモ魔なんです。いつでもほら、こんなメモ帳持ち歩いてて、すぐにメモするんです。メモ帳がないときは腕に書いたりして。そんなとき、手書きのほうが早いもの。

── う~ん、メモ魔であり、研究者であり、編集者でもある健太郎くんの手書きの力作、『文房具図鑑』をもっと多くの人に見てもらいたいなあ。と思ったら、もうすぐ本として出版されるんだって?

はい、そうなんです。

── ほぼ、この形のまま、出るのかしら?

2016年3月25日発売「文房具図鑑」1500円(税抜)いろは出版

2016年3月25日発売
「文房具図鑑」1500円(税抜)
いろは出版

そう。ただ、新商品になってデザインが少し変わってたり、値段が変わっちゃったものは新しく書き直してます。今、出版社とそのやりとりをしてるところです。

── 手書きの作品が、そのまま本になる! いいなあ、楽しみだなあ! あ、そういえばさ、夏休みの宿題としての学校での評価はどうだったの? 大賞なんてもらってたりして。

う~ん、それがですねえ……

── え? もらえなかったの? こんな力作なのに?

これって「社会」って宿題の範囲には入らないんですって……

あらま。意外なオチがついちゃったけど、果たして将来はどんな人生を歩むのか、とっても楽しみな健太郎くんである。そのまま、好きな道を歩んでいくんだよ、ね?

2016年3月16日

山本健太郎くんの「文房具図鑑」も販売予定!
コクヨの博覧会「コクヨハク」、今年も東京で開催。

KITTE地下1階東京シティアイにてコクヨの博覧会「コクヨハク」を開催します。
最新の文具、話題の文具、オリジナルの文具をぜひ体験してみてください。
山本健太郎くんの「文房具図鑑」も販売予定です。
日時:4月1日(金)・2日(土)・3日(日) 午前10時~午後8時 ※最終日は午後6時まで
場所:JPタワー・KITTE 地下1階 東京シティアイ 東京都千代田区丸の内2-7-2

山本健太郎

平成15年5月6日生まれ。1年近くかけて手書きでつくった「文房具図鑑」がニフティの「デイリーポータルZ」で取り上げられて話題に。その後、テレビやラジオに出演するなど注目を集めている。
<出演した主なWEBサイト・番組>
ニフティ「デイリーポータルZ」、TBS「白熱ライブビビッド」、日本テレビ「スッキリ!!」「ズームイン!!サンデー」「所さんの目がテン!」、ニッポン放送「戸田恵子オトナクオリティ」

第2号「勝利への道を書く人」 田中雅美 は掲載を終了いたしました。