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商品化された作品



色に対する固定概念をなくし、
自由な発想でおえかきを楽しめる
絵の具です。

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「なまえのないえのぐ」商品化レポート

「いま、もてき」
(左)今井祐介さん  (中)茂木彩海さん
(コクヨデザインアワード2012グランプリ受賞
 作品名:なまえのないえのぐ)

(右)高橋則明(コクヨ)

——  絵の具か、教育ツールか

「水色」という色がある。でも蛇口から出てくる水は、そんな色じゃない。
作者「いま、もてき」の今井祐介さん、茂木彩海さんが幼少時に感じた疑問から「なまえのないえのぐ」は発想されました。色に名前をつけず、シアン・マゼンタ・イエローの3原色の組み合わせによって、さまざまな色が作れることを示唆する絵の具は、子どもの学びや創造力を大きく広げる作品として、コクヨデザインアワード2012のグランプリを受賞しました。

この当時のテーマは「Campus『ノートを超えろ!』」。ノートを中心としたCampusブランドを、学びのブランドまで可能性を広げたいという思いで設定されたものです。コクヨにとって、過去絵の具を取り扱った経験はなく、この商品化は大きなチャレンジとなりました。


受賞時のプレゼンテーションシート

商品化を進めるにあたり、最初に取り掛かったのは、色のラインナップの選定でした。
受賞作品の色数は、色の3原色であるシアン・マゼンタ・イエローと白・黒の5色、そしてその組み合わせで構成された計25色でしたが、そのまま再現すると非常に高価な商品となってしまうため、10色のラインナップに絞り込みました。そこで問題となったのが、色の取捨選択です。
黒は3原色を混ぜることで作れるので外すことになりましたが、白を入れるかどうかは議論になりました。

「コクヨ社内では、白は薄い色合いを表現するのに必要、というのが当たり前の感覚でした」。(コクヨ柳井雅子/企画担当)


異を唱えたのは、作者の二人でした。「限られた本数の中で、ただ色を薄める機能として、白を残すことには反対でした。薄くするだけなら、水で薄めることができます。この絵の具のコンセプトは、付けられた名前を鵜呑みにするのではなく、3色を混ぜ合わせることで、無限に色がつくれる、自分だけの色がつくれる、というものです。10色のラインナップの中でさまざまな色の展開を考えた場合、3原色のみで構成した方が、コンセプトが明確になると思いました」。(今井さん)


茂木さんもこの商品の独自性について、次のように話します。
「子どもの頃、人の顔を描くとき、何の疑問もなく『肌色』を使っていました。今から考えれば少し異常なことのように思います。もし小さい頃、この絵の具に出会っていたら、大げさに言えば未来が変わったかもしれない。日常使いしてもらうというよりは、人生の中で一度はこの絵の具を通ってほしい、そんな思いでいます」。(茂木さん)


コクヨと作者の議論は、この商品は絵の具なのか、教育ツールなのかという話題にまで及びました。

「絵の具として考えると、やはり白があった方が使いやすい。一方で、この商品は普通の絵の具ではありません。最終的には、子どもたちが自分で考え、発見していくことを促すツールと捉え、白をなくし、作品のコンセプトを明快に伝えることを優先させました。実際に、子どもたちにこの絵の具を使ってもらって反応を見てみたのですが、紙の白を使ったり、水で薄めて淡い色を表現したり、自分たちで考えて表現を楽しんでいました」。(柳井)


こうして、白を入れずに3原色とその組み合わせのみで構成された10色が決まっていきました。

決まった10色の発色も、なかなか想定通りにはいかなかった。 例えばマゼンタとシアンの比率が1:1と1:2の配合では、事前の想定ほど色の違いが出ない。細かく配合比率を変えて検証し、最終的に1:2の比率を1:4に変更した。

——  コンセプトを視覚化する

絵の具のチューブやパッケージのデザインにも、商品のコンセプトを落とし込んでいきました。
視覚的にコンセプトを伝えるため、チューブには「○+○」という表記で配合を表現しています。またパッケージには、開封前からチューブのデザインが見える透明のスリーブケースを採用しています。
「ケースを透明にしたことで、持ち歩いて上下左右に揺れても絵の具の配置が崩れないよう、固定させる仕掛けが必要でした。一般的な絵の具の収納ケースには不透明の紙箱が使用されますが、ケースの中でバラバラになっても見えません。今回は、取り出しやすさを損ねることなく、絵の具を固定させる形状を検証し、ケース内部に装備しています」。(コクヨ高橋則明/開発担当)


また、パッケージに記された「なまえのないえのぐ」のロゴや、コンセプトメッセージは、「いま、もてき」さんの紹介で、文字デザイナーの渡辺美里さんに「手描き」でデザインしていただいています。 「コンセプチュアルな商品なので、なるべく柔らかく伝えたかったんです。教科書のテキストも描かれている渡辺さんの字は、先生が黒板に書くような美しく芯がありながら、優しさがこもった字です。この商品を買ってくださる大人にも、使ってくれる子どもにも、両方に伝わることを考えたときに、先生が書くような字で表現されていると、すっと伝わっていくかなと思いました」。(茂木さん)


パッケージ表面と裏面

コンセプトにこだわりながら、ものづくりの細部を詰めていくプロセスは、コクヨ、作者両者に刺激があったようです。

「本業はアート・ディレクションで、どちらかと言えばグラフィックの仕事が多いのですが、プロダクトの世界の“価値は細部に宿る”という感覚を改めて実感しました。絵の具が落ちないように、また取り出しやすいように考えられたケースの繊細な工夫、安全上子どもが誤飲しても空気の通りが確保される凹凸のキャップ形状。見た目の美しさとは別に“人が触れる物として正しい形”を知りました」。(今井さん)


「コンセプトを重視する人、ユーザーの使い勝手を気にする人、品質にこだわる人、さまざまな立場の人間が意見をぶつけ合い“妥協”ではなく“練り上げ”ていきました。筋の通った商品になったと思います」。(高橋)



今までになかった、全く新しい考え方の絵の具「なまえのないえのぐ」。
ぜひ皆さんも手に取って、自分の色を見つける旅に出ませんか?